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17、作戦会議?


 正気を失った狂気の竜宮に、俺は無言のまま視線を向ける。

 しばらく、彼女は邪悪な笑みを浮かべたままだったが、ややあってから俺の視線に気が付いたようで、彼女は少しだけ恥じらいを浮かべ、一つ咳払いをしてから口を開いた。


「と、いうわけで、会長が私に好意を持っていることは確定したので、次はどうしたら彼が告白を踏み切るシチュエーションになるか、ですね」


「どういうわけだよ」


 俺が間髪入れずにそう言うと、目が点になる竜宮。

『何を言っているんだろうこの人は?』とでも言いたげなその様子に、俺は呆れて溜め息を吐いてから、言う。


「なぁ、『竜宮』はあくまでも池の好きな女子候補の一人にしか過ぎないと思うんだが。……池の周囲に『T』なんて腐るほどいるんじゃないか?」


「候補者が腐るほどいたとして。……彼の隣に立つ資格がある人が、どれほどいるというんでしょうね?」


 俺の言葉に、今度は竜宮が間髪入れずに答えた。

 その言葉にどういった意味が含まれているのか分からなかった俺は、再度彼女に問いかける。


「誰かの隣に立つことに、資格なんてもんは必要ないだろ」


 俺の言葉に、竜宮は驚いたような表情を浮かべた。

 それから、どこか悪戯っぽい笑みを口元に湛えてから、


「つまり友木さんは、恋をするのに資格はいらないと、そう仰るのですね?」


 と、尋ねてきた。

 その聞き方が意味深ではあったが、俺は頷いてから答える。


「え、まあ。……そういうことだ」


 俺の答えに、可愛らしくクスクスと笑ってから、竜宮は、


「意外とロマンチックなのですね? お可愛いこと……」


 と、憐れみの視線を浮かべてそう言った。


 ……まさか竜宮がライトノベルだけでなく、ラブコメ漫画まで嗜んでいるとは……。

 驚きを浮かべる俺に、竜宮はすました顔で告げる。


「友木さんがどう思われているかは存じませんが、私は会長が他の女性を好きになる心配をしていない、ということです」


 自信満々の竜宮を見て、「それならさっさと告白すれば良いんじゃないか?」と思いつつ、呆れて溜め息を吐いてから答える。


「……そうか。それならそういうことで良いんじゃないか?」


「聞き分けが良くて、助かります」


 と微笑みを浮かべてから、


「さて、それでは話を戻しましょう。どうすれば、会長に告白をさせられるか、ということですが……」


 指先を口元にあて、考える仕草をして、


「今回は……体育祭を利用しましょう」


 と、提案した。


「体育祭を利用する? ……体育祭でMVPになった人は、好きな人に告白されるジンクスでもあるのか?」


「……何を仰っているんですか? そんなジンクスはないですし、そもそもMVPなんて選ばれませんよ」


 冷静な表情を浮かべてから、冷たく言い切った竜宮。


「じゃあ、体育祭を利用って、どういうことなんだ?」


 俺の言葉に、竜宮は得意げな笑みを浮かべてから言う。


「ご存知の通り、この学校の体育祭は、A~C組とD〜F組で紅白に分かれて、得点を競い合います」


「ああ、そうだったな」


 去年の体育祭は半ばサボっていたようなものだが、それでもそのくらいは知っていた。


「そこで、A組の会長は紅組に、D組の私は白組に。つまり別々の組になります。……それが、会長を打倒する機会なのです!」


「……は? いや、すまん竜宮。今、どうしたら池から告白をされるかという話になっていたよな?」


「ええ、そうですが」


 当然のように頷いた竜宮に、俺は尋ねる。


「それがどうして、池を打倒する機会の話になってしまったんだ?」


 俺の言葉に、竜宮はわかりやすくため息を吐いた。

「会長の全力を超えて、私を認めてもらわなければ、告白なんてしてもらえるとは思えません」


 さっき言っていた、隣に立つ資格がどうこうというのも、今のセリフに関係があるのかもしれない。が、


「……だとしても、体育祭で、例えば竜宮の白組が勝利したとして、それが=で竜宮の池に対する勝利につながるわけではないだろ?」


「ええ、そうですね。ですが、直接対決の機会は、ちゃんとありますよ」


 うふふ、と楽しそうに笑みを浮かべる竜宮。

 彼女はきっと、脳内で池を倒し、そして告白をされていることだろう。……幸せな奴だ。

 

「……竜宮が池に勝ちたいって強く思っているのは、話を聞いて分かったよ」


「会長だけでなく、私は友木さん。あなたにも勝ちたい、と強く願っているんですよ?」


 俺の言葉に、間髪入れずに竜宮が答える。

 一体どういうことか、俺はそう思い、彼女を見る。


「負けっぱなしは、性に合いませんので」


 挑戦的な視線を向けてくる竜宮。

 そういえば、俺はここ二回の学力テストで彼女に勝っているわけだが、それを言っているのだろう。

 しかし……。


「あいにく、俺に体育祭やらの学校行事で出番があるとは思えない。全員強制参加の種目を適当にやり過ごしたら、後は去年と同じように、ぶらっと誰の邪魔にもならないところで時間を潰しておくつもりだしな」


 それから、一拍置いて俺は言う。


「だから。そもそも勝負にならないだろ」


 俺の言葉を聞いて、竜宮は――どこか、楽し気に笑った。

 それは、先ほどまでの笑みとは違い、どこか優し気な笑みだった。



「……さて、それはどうなんでしょうね?」


それから、竜宮は意味深な言葉を呟き、


「それでは、そろそろ教室に戻りましょうか」


 それからけろっとした様子で、竜宮は言った。

 俺は先ほどの言葉がどういう意味だったか問いかけようとしたが、


「ああ、そういえばまだ友木さんに言わないといけないことがありました」


 と彼女の言葉に、俺の言葉は遮られる。


「……まだ何かあるのか?」


 うんざりしつつ俺が言うと、


「会長の好きな方の名前を教えてくださり、ありがとうございました」


 竜宮は笑顔を浮かべてから、一つ丁寧に頭を下げた。

 

 屈託なく笑い、告げられた彼女の感謝の言葉を聞いて、竜宮の暴走に付き合う気力が、少しだけ湧き上がってくる俺は、きっとチョロいんだろうなと思うのだった。


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