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16、頭文字T

 生徒会室を後にして、教室に向かっていると、


「あら、友木さん」


 偶然、一人で廊下を歩く竜宮に出くわした。


「おう」


 俺は一言告げる。

池のことを報告しようかとも思ったが、こいつのぶっ飛んだ言動を見た後では、彼の話を立ち話で済ませる勇気はなく、かといって生徒会室も竹取先輩がいる今は、どこにも手頃な場所はない。

そんなことを考え、俺は彼女に報告をするのはまた今度にしようと思い、それから隣を通りすが……、


「お待ちください、友木さん」


 ろうとして、竜宮にがしっと腕を掴まれた。

 俺は振り返る。


「……池のことか?」


「ええ、もちろんです。それ以外に、私がこの場で友木さんを引き留める理由があると思いですか?」


「残念ながら、ないな」


「そういうことです。それで、……その。お願いしていた件は、どうなったでしょうか?」


 恥じらうように瞼を伏せ、悩まし気に口元に指をあてるその様を見て、見てくれは確かに美少女なのだと俺は再認識する。

 これで性格がぶっ壊れてさえいなければ、もっと素直に応援できるんだが、と俺は残念な気持ちになりつつ、答える。


「ああ、一応聞いてきた」


「でしたら、今すぐに教えてください!」


「立ち話でか? お前のあの醜態が見ず知らずの生徒に目撃される覚悟があるのなら、別に良いんだが……いや、待て。やっぱりあの醜態をさらす竜宮の仲間だと思われたくはないから、どっちにしろ無理だ」


「……しゅ、醜態とまで言わなくとも」


 俺は無表情を浮かべつつ、無言のまま彼女を見る。

 すると、コホンと一つ咳払いをしてから、


「それでは、生徒会室に向かいましょう。私はこれから向かうつもりだったので、丁度良いです」


 と、竜宮は言う。

 俺はやはりそう来たかと思い、返答する。


「あー、さっき生徒会室を覗いたんだが。竹取先輩が昼飯を食ってたから、あそこで話をするのはやめた方が良いと思うんだが」


 俺がそう言うと、竜宮のこめかみがピクリと動いた。

 それから、彼女は笑顔を浮かべたまま、言う。


「竹取先輩がですか? 普段私たちが活動に参加してと言っても聞く耳を持たない竹取先輩が、不当に生徒会室にいるのですか?」


「……いや、まぁ生徒会活動に参加していないことについては知らないが、不当とまでは言えなくないか?」


「そうかもしれませんね。ですが、いずれにせよ竹取先輩が生徒会室にいても問題はありません。追い出せば良いだけですから」


 追い出せばいいて……竹取先輩、後輩から全然慕われてないんだな。

と、俺は悲しくなりそうだったが、すぐに自業自得だなと思い至った。


 しかし、そういうことなら遠慮は無用だな。


「分かった。そしたら生徒会室にまた向かうか」


「ええ。……会長のお話、今から楽しみです」





 それから生徒会室に、俺たちは移動した。

 竜宮が扉を開こうとしたが、動くことはなかった。


「あら、鍵がかかっていますね。……竹取先輩、部屋の中で何をしているんでしょうか?」


 と竜宮は言ったが、部屋の中の気配が感じ取れない。


「もう出て行ったんじゃないか?」


 スカートのポケットから、生徒会室の鍵を取り出して、無事に扉を開いた竜宮に俺は言った。


 竜宮と一緒に生徒会室に入ると、そこに竹取先輩はいなかった。


「そのようですね。追い出す手間が省けたので、助かりました」


 にこりと笑顔を浮かべて彼女は言う。

 どこまでも邪険に扱われる竹取先輩だった。


「さて、友木さん。早速ですが、会長の好きな女性について、教えていただけますでしょうか?」


 ソワソワした様子で、竜宮が俺に尋ねる。

 俺は、「池の好きな女子を聞くことは出来なかった」と前置きをしてから、


「池には好きな人がいるらしい。その女子のイニシャルは『T』だってよ」


 俺が竜宮に向かって言うと、彼女は「『T』……」と小さな声で繰り返してから、


「え……? 『T』って? ……それって」


 深刻そうな表情をしてから、竜宮は呟いた。

 それから、彼女の動きが不自然に静止した。


 どうしたのだろうか? そう思って様子を見守っていると……。
















「わ、わた、わたわたわたたたたたたたたたたたたたたたたっ!?」













 竜宮が壊れた。


 こいついっつも壊れてんな……。

 俺が呆れている最中も、彼女は混乱した様子でわたわた言い続けていた。

 流石にちょっと怖いと思い始める俺。


「……どうした、竜宮?」


 俺がそう問いかけると、こちらを見ながら「わた……わ、わた。わ……私?」と正気に戻ったように見える竜宮。

 でもこいつ、池関連については正気というよりも狂気しか感じられないから、油断はできない。


 気を引き締めている俺に向かって、


「つまり、会長の好きな人は、私!? この、私……! 会長ったら、なんてお可愛いのでしょう? 友木さんに告げることで、こうして間接的な告白をしようとするなんて……ふふ、本当は直接愛の言葉を囁いてほしかったのですが、仕方のない人ですね」


 うっとりとした表情で言ってから、「うふふ♡」と邪悪な笑みを浮かべる竜宮。



 こいつはホント幸せな奴だな……。

 俺は竜宮の醜態を見ながら、引き気味でそう思うのだった。



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