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1、友人キャラの俺がモテるわけないだろ?

 俺のこれまでの人生は、紛れもなく最悪だった。


 ――そんな風に過去を悲観することも、最近は少なくなったと、そう思う。

 高校に入学し、この世界の主人公である池春馬と出会ってから、俺の世界は劇的に変わった。


 池との出会いから一年以上が経った今、俺ははっきりとそう思う。


「ニセモノ」の恋人である、池冬華。

 かつての親友で、俺にまっすぐに好意を伝えてくれた葉咲夏奈。

 普通の友人として、普通に接してくれる、俺にとっては本当に有難い存在である朝倉善人。

 すっかり俺を慕ってくれるようになった、可愛い後輩である甲斐烈火。


 そして、いつだって俺に救いの手を差し伸べてくれた真桐千秋先生。

 凛として美しい真桐先生が、意外とポンコツで、可愛らしい一面があったということを俺は知った。

 もしも彼女に少しでも恩返しができていたのならば――素直に嬉しく思う。


 彼ら彼女らのおかげで、俺はこれまでの人生でもっとも充実した夏休みを送ることができた。

 なんといっても、生徒会合宿、なんていう青春っぽい響きのイベントに参加することさえできたんだから。


 生徒会役員である田中先輩・鈴木とも、良好な関係が築けている。


 ――のだが。

 ことあるごとに俺に突っかかる少女が、一人。


 その少女――生徒会副会長である竜宮乙女は、きっと俺のことが嫌いなのだろう。

 何故嫌われるのか? ……残念ながら、心当たりは腐るほどある。


 一年時の素行不良を、生徒会副会長として警戒しているのかもしれない。

 学力テストで池に次ぐ学年二位を奪われたことも、関係しているのかもしれない。

 池のことが好きな彼女は、彼の隣に問題児の俺がいることが気に入らないのかもしれない。

 池の妹の冬華のことも気に入っている彼女は、俺が彼氏ニセモノだがであることも、嫌なのかもしれない。 


 ……とにかく、そんな風に嫌われまくっている俺だが、どうしても竜宮のことを嫌いにはなれなかった。

    

 かつての甲斐もそうだったが、竜宮も同じように。

 陰で俺を叩くようなことをせずに、真直ぐに敵意をぶつけてくる。

 

 どうにも俺は、そういう奴のことを好ましく思ってしまう節があるらしい。

 他人事のように、俺はそう思うのだった。





 夏休みが明けた、とある日のこと。


 思いつめた表情の竜宮が、潤んだ瞳を俺に向けながら口を開いた。


「好き……なんです」


 羞恥に頬を染め、制服のスカートの裾をギュッと小さな手で握りしめるその様子を見ると……まるで俺が彼女から、愛の告白をされているようだ。



「……知っている」



 俺は彼女の言葉に応えた。

 竜宮の頬は、羞恥から上気し、弱々しくも期待を込めた眼差しを俺に向けてきていた。

 俺は、彼女の不安そうなその表情を見て、一度大きく頷いた。


 俺の反応を見て嬉しそうに表情を綻ばせた竜宮は、とても可愛らしかった。


「……それでしたら、友木さん。私の言いたいこと、分かりますよね?」


 竜宮の言葉に、俺は大きく頷く。

 俺は、彼女の好意に気づいている。

 そして、彼女が何を求めているのかも。



「ああ、分かっている」



 ――友人キャラの俺が、モテるわけがない、と。


 俺の返事を聞いた竜宮は、喜びを胸に満面の笑みを浮かべる。

 そして、その唇を開いた。















「でしたら……私が会長とお付き合いをするお手伝いをしてくれますね!?」






















 分かりきったセリフを告げた竜宮に、俺は真顔で頷く。

 

「俺に何ができるかは分からないが、力を貸す。約束する」


 俺の言葉を聞いて、ホッとした表情を浮かべてから、竜宮は惚けた表情で続けて言う。

























「本来は、会長をメロメロにさせて、生涯の愛を誓ってもらうのは私一人の実力で、というのが王道なのですが。あなたがどうしてもというのなら、その言葉に甘えてあげるのも良いでしょう。ですが、こうなってしまえば会長が私を意外なほどたくましい腕に抱きながら、耳元で愛の言葉を囁くようになるのも、もう時間の問題というわけですか。それはなんだか、素敵なことですよね。……いえ、流石にその先までは許すつもりはありませんが……会長が本気で私を求めてきたらどうしましょう……? 高嶺の花というのは、手に入れられないからこそ強く欲したくなるもの。やはり心を鬼にして、断るべきだと思いますが……一応参考程度に、友木さんはどう思いますか?」

























 とんでもなく早口で意味不明な言葉を呟き、そしてよくわからないが俺に問いかける竜宮。

 ほとんど何を言っているかわからなかったが、


「あー……それな!」


 と、テキトーに答えつつ。

 


 うっわ、めんどくさ……。



 と、俺は内心普通に引いていた――。

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