第4章:人の温かさ
第4章
しかし、ウルフはルナの前で手を止めた。
ルナは殺されても良いと言う表情をしていたからだ。
ランドは狼化を解いた。そして、ベッドに横たわる。
ルナは聞いて来た。
「私を殺さなくて良いの?今がチャンスなんじゃ無いの?」と聞く。
ランドは答えた。
「今は、俺が怪我をしていて力が出ない。
今、攻撃をしてもお前を殺す事は出来ない。だから、この怪我が治るまで…お前の命、預かっといてやる…」
ランドは寝ようとしたが、空腹なのかお腹がぐぅ〜と鳴るのを聞いて、上半身だけ起こした。
「腹が減った…。飯を寄越せ!」とルナに言った。
ルナは、少し考えると部屋から出ていった。
しばらくして、ルナが戻ってきた。
皿の上に、ネズミの死体を乗っけて…
ランドはそれを奪い取ると、頭からムシャムシャと食べ始めた。
ルナが食べているランドに話しかける。
「ねぇランド…。人間を滅ぼした後、貴方はどうするの?」と聞いた。
ランドは口の中の物を飲み込むと話した。
「母さん達の所へ行く」とただ一言。
ルナは続けた。
「それで、お母さんは満足するの?」
「母さんは、俺に人間を滅ぼす力をくれた。だから、人間を殺す事は俺の使命!」
「ううん…違う!私は母親だから分かるもん!お母さんはその為に、貴方に力を与えたんじゃないっ!貴方に生きて欲しいから…だから貴方に力を与えたのよ!」
ランドは、残ったネズミの尻尾を一口で食べ飲み込んだ。
「違くなんか無い!母さんは、俺に人間を滅ぼす力をくれた!だから、その力を使って人間を殺し続ける!」
「そんな事は無い!お母さんが息子にそんな事をさせるハズが無い!母親は子供を愛してる!だから、そんな事に使ったらお母さんを不幸にしてるだけっ!」と叫ぶ。
母さんを不幸にしている?人間を殺す度に、母さんは悲しんでる?そんな訳は無い…。母さんは…母さんは…。
「分からない…分からない…そんな事…分からない!母さんは人間を恨んでいたんだ!」
「じゃあ!何で貴方のお母さんは、森を出て町を襲わなかったの?その力があれば…人間を滅ぼせたのでしょ?それは何故?それは…人間を恨んではいなかった。人間を愛していたんじゃ無いの?」
ふと、ランドはさっきの老人の話を思い出した。
『クルシスは人々に対して慈愛の心を持っていた。家族のように…』
"家族"…。
母さんは、人間を家族と思っていた。
あの不思議な力で、人間を助けて居た。
人間を恨んでいたなら、助ける必要は無い。
母さんは人間を愛していたんだ…。
「ねぇ…ランド。大丈夫?」
と何かを考えているランドにルナは聞いてきた。
ランドはルナに顔を向ける。
「今はまだ、人間を信じる事は出来ない…だけど、人間を信じてみようって努力はしてみる。お前ら人間と生活をしてみて、もし信じられなかった場合はお前達人間を殺す!」
そう言うと、奪い取った皿をルナに渡して一言言った。
「ごちそうさま」




