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奇蹟の少女と運命の相手  作者: 鷹羽飛鳥
学院4年目
88/161

34 研究は終わらず、されど楽し

2020.4.26 かさしま様からいただいたマリーのイラストを挿入しました。

挿絵(By みてみん)


 秋の収穫が終わりました。

 小麦も綿花も、残念ながら形質が安定していません。

 第2世代で出てきた特性が、第3世代には引き継がれないのです。

 おばあちゃまの方でも、領地で、この点について検証中だったので、問題点の洗い出しは終わっています。

 問題になっているのは、次代に継承される形質が何を優先して決まるか、ですが、おばあちゃまでさえ、そこは完全ではないのです。

 今年は、3種類の第2世代を元に、9種の組み合わせを行ってみましたが、あまり芳しくありません。

 A-A、B-B、C-Cの同種同士の組み合わせが形質を受け継がないのは元より、A-B、A-C、B-Cといった異なる形質同士の組み合わせでも、親と全く異なる形質を持ったものが出るのです。



 これは、数種類の因子が複雑に組み合わさり、パターンがふくれあがってしまうことによります。

 親の形質が子に引き継がれる因子は、例えば葉の形、花びらの形、花の色など多岐に亘ります。

 そして、それぞれの部分ごとに、優先されやすい、つまり表に出てきやすいものと出にくいものがあります。

 この潜在的な形質が突然表れることで、うまくいったと思った第2世代の次代が安定しないのです。

 何が表に出やすいのか、出にくいのかは、数をこなして実験するしかないので、どうしても時間が掛かります。

 まあ、それが楽しいとも言えます。

 パズルというか、いくつもの実験結果から正答を導き出すという思考は、とても楽しい。

 特に、考えて考えて、正答を導き出せた時の快感は、何にも勝る充足を与えてくれます。

 そして、それが完成すれば、民のためになるのです。

 なんて素晴らしいのでしょう。

 その上、今はおばあちゃまと一緒に研究できるのですから、私は恵まれています。




 私は、恋とは無縁なのかもしれません。

 殿下のことも、すぐ醒めてしまいましたし。

 もしかしたら、いつか運命の人に巡り会えたら変わるのかもしれません。でも、会えないなら会えないでも仕方ありません。

 その時は、研究所運営のパートナーになれる方を婿に迎えることになるでしょう。

 大切なのは、研究所で民のための研究を続けられるようにすることです。

 誰かの懐を潤すためでなく、市井の人々が喜ぶものを生み出す。

 私やおばあちゃまの名誉は、民の感謝の証でなければなりません。

 そうであってこそ、私は胸を張って、不世出の才媛の弟子と名乗れるのですから。




 そして。秋も深まったある日、お義父様が侯爵邸(うち)を訪ねていらっしゃいました。

 「マリー、お前のとうもろこしの実証実験が終わった。

  喜べ、形質の安定は確認された。

  お前が研究所に入る際には、新作の完成者として迎え入れることができるぞ」


 お義父様からの嬉しい知らせを、私は残念ながら1人で聞くことになりました。

 2日ほど前から、おばあちゃまは伏せっています。

 おばあちゃまは、毎年、雪が降る前くらいになると体調を崩します。

 本来ならそれほど心配することはないのですが、今年は王都に出てきて環境が変わっているので、少し心配です。

 おじいさまがずっと寝室でついています。

 おじいさまは、毎年、おばあちゃまが寝込むと、執務の合間に様子を見に来るのですが、今年はもう執務がないので、ずっと傍にいられると喜んでいました。



 リリーナさんも心配してお見舞いに来てくださいました。

 おばあちゃまは、熱が出ると体が怠くなるため、ベッドから出るのは難しいですが、体を起こして食事やお話をするくらいなら大丈夫です。

 リリーナさんは、おばあちゃまが毎年のように寝込む話は知っていても、実際に寝込んでいるところを見るのは初めてなので、かなり心配したようです。


 「ごめんなさいねぇ、心配掛けて。

  この時期は、いつもこうなのよ」


 「思ったよりはお元気そうで安心しました。

  どこかお悪いのではないのですか?」


 「特にどこが悪いというわけではないのよ。

  寒くなり始めた頃に、体がついていけないみたいなのよねぇ」


 おばあちゃまが毎年この時期に熱を出すのは、お父様を産んだ時に体を壊したからだと聞いています。

 小柄で体力のないおばあちゃまが、難産で体に負担を掛けてしまったため、季節の変わり目になると体調を崩してしまうのだそうです。

 お父様のせいではないのですが、お父様はそのことを随分と気に病んでいます。

 私が生まれたのがそんな時期だったこともあって、お母様の体調にも神経質になったとか。

 だからお父様は、私が運命の人に拘っていた頃、敢えて婚約者をつけようとはしなかったのです。

 義務で子を産むことはない、と。


 ごめんなさい、お父様。

 私は、恋などできない娘のようです。

 現在、「それは、坂道を転がり落ちるように」を短期集中連載しています。

 ちょうど週末にそちらのクライマックスが来る関係上、「奇蹟の少女と運命の相手」の次回更新は、1回休んで9月20日(水)午前零時にします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >大切なのは、研究所で民のための研究を続けられるようにすること >私やおばあちゃまの名誉は、民の感謝の証 良いでしょう。持つものの社会的責任を理解しましたね♪ [気になる点] >お父様を…
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