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奇蹟の少女と運命の相手  作者: 鷹羽飛鳥
学院4年目
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裏33-4 それぞれの半年(パスール視点)

 一部で人気なパスールの視点です。

 実は2年も前に学院を卒業して研究所に入っていた彼は…。

 柄にもない猛勉強の結果、無事登用試験を通り、研究所に配属されて1年半。仕事には、まだ慣れない。

 というより、俺の身分を気にする奴が多いらしく、腫れ物に触るような扱いをされている。

 これでは、仕事に慣れるどころの話じゃない。

 そりゃあ、スケルス公爵家の孫が官吏になるなんて、珍しい話だろうよ。

 なんとか合格はしたが、俺の頭のデキがいいわきゃないのは、俺が一番よく知ってる。

 けど、こうするしかないんだ。

 研究者になんざ、逆立ちしたってなれっこないんだ、ローズマリー嬢と接点を持ちつつ、彼女を少しでも支えられる立場になるには、研究所で仕事するしかない。

 今の俺では、まだローズマリー嬢を支えることはできない。

 俺が学院を卒業してからの1年で、彼女を取り巻く環境は大きく変わった。


 ゴースン伯爵家による第2王子暗殺未遂事件。

 実際はローズマリー嬢を狙ったものだったらしいが、この事件は研究所を震撼させた。

 ゴースン伯爵はこの研究所にいたわけだから、ローズマリー嬢や不世出の才媛の秘密を知っていたのだろう。

 俺の知らないうちに、俺のすぐ近くにローズマリー嬢の敵がいて、俺の知らないうちに彼女が攫われそうになり、俺の知らないうちに全てが終わっていた。

 ゼフィラス前公爵の言っていたとおり、俺は何も持たない愚か者だ。

 たとえ俺が彼女の近くにいたとしても、事前に陰謀に気付くことも、襲われた彼女を救うこともできなかっただろう。

 彼女を守ったのは、ミルトリア嬢の護衛だったって話だが、一人で守りきれるとは思えないから、きっと他にも影が張り付いてたはずだ。

 そうさせていたのは前公爵なんだろうが、そのあまりの先読みの鋭さにはぐうの音も出ない。

 ローズマリー嬢は、思ってたより遙かにとんでもない令嬢らしい。



 今、研究所では、彼女が基礎研究を完成した新しいとうもろこしの実証実験が行われている。

 彼女は、たった3年で基礎研究を終わらせてしまった。

 基礎研究なんて言うと、ごくとっかかりのように聞こえるが、その後にやる実証実験は、別の奴が同じように栽培してもちゃんとできるかどうかという試験でしかないから、実質基礎研究が終われば、ほぼ完成と言えるところまで来ているんだ。

 研究所に2桁いる研究者が、よってたかってかなりの予算と時間を掛けて一向に成果が上がっていないってのに、だ。

 2桁の研究者の中には、実証実験しかしていない奴すらいる。


 俺は、はっきり言って彼女の外見に惹かれた。

 女神と謳われたドロフィシス・ゼフィラスそっくりな外見に。

 だが、彼女の価値は、その程度じゃなかったんだ。

 彼女が俺に微笑んでくれるなら、俺はもう何もいらない。だが、彼女の傍にいるためには、俺が彼女に必要とされるくらいにならなければ駄目だ。

 今の、遠慮がちに与えられる仕事に四苦八苦してるようじゃ、何の役にも立ちゃしない。



 ローズマリー嬢は、ガーベラス・ゼフィラスの養女になり、公爵家の跡取り娘になった。

 春になれば、新作とうもろこしを生んだ次期研究所長として、鳴り物入りで研究所(ここ)に来る。

 前公爵に言われたとおり、今の俺では釣り合いが取れない。仰るとおり、俺が遙かに下だ。

 まだだ。俺はまだやれる。仕事を覚えて、彼女を支えられる男になってみせる。




 そんな決意を固めたある日、所長に呼び出された。

 また誰かが勝手に胃に穴でも開けて泣きついたか。


 「君に仕事を頼みたい。期限は最大で2年だ。国内を飛び歩いてもらうことになるだろうが、受けてくれるかな?」


 所長の言葉は、予想外というか、突拍子もなかった。

 つまりあれか? 俺を研究所から遠ざけたいと、そういうことなのか?


 「ああ、飛び歩くと言っても、もちろん王都から出て行けとかそういう話ではない。

  少し調べ物をしてもらいたいんだが、少し遠出が必要なところばかりなのでね。

  研究所から長期で離れても大丈夫な人間が君しかいないんだ。君としても、ここで腫れ物に触るような扱いをされても、あまり居心地のいいものではなかろう。ちょうどいいと思うんだが」


 つまりは、厄介払いか? 2年ってことは、ローズマリー嬢が入所する時にはいられないってことだ。


 「それは…研究所の仕事として、ということですか?」


 「もちろんだとも。研究所の所長である私が、よその仕事を持ってくるとでも思うかい? 研究所の更なる発展のための下準備だよ。

  ああ、別に、仕事が終わるまで帰ってくるなとは言わないし、時々は進捗状況の報告も聞きたいから、むしろ行きっぱなしになられては困る。

  君がマリーに接触することについても、節度を守る分には、邪魔をする気はないよ。

  それと、この仕事が上手くいけば、君には新規の部門を任せてもいいと思ってるんだ。

  そうなると、マリーと日常的に仕事で顔を合わせるくらいにはなれるはずだよ。そういう部門にするつもりだからね」


 「わかりました。それで、何を調べればいいんですか?」


 ローズマリー嬢に近づける道が開けるなら、何でもいい。

 どうせ、今のままではローズマリー嬢を支えるなんて夢のまた夢だ。

 だったら、所長の言葉に賭けてみよう。


 「いい答えだ。

  君に調べてもらうのは…」

 次回裏33-5話は、9月7日(木)午前零時に更新します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >一部で人気な はいはいはいはい! 一部です♡♡ >俺は、はっきり言って彼女の外見に惹かれた。 いいねいいね。それなら分かるのよ。 マリーの魅力は外見と頭脳だからね♡ >彼女が俺に…
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