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奇蹟の少女と運命の相手  作者: 鷹羽飛鳥
学院3年目
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30 ローズマリー・ゼフィラス

 お祖母様の対応は、とても早いものでした。

 先日の養女の話の翌日にはルージュが私の護衛に付くようになり、3日後には学院でお兄様とミルティの婚約、そして私の公爵家入りが噂になっていました。

 また、私が養女に入るのと同時に、私は今回の基礎研究完成の功績として、研究所の在外研究員の籍を与えられました。学院時代のおばあちゃまと同じ立場です。




 これによって、大きく変わったことは、何もありません。

 ただ、周囲が私やミルティを見る目は、確実に変わりました。

 まあ、私についてはわかります。公爵家の跡取り娘になったのですから、これまで以上に擦り寄ってくる人が増えるのも仕方のないことだと思います。

 今更どうこう言うのも馬鹿らしいので、これまでどおりあしらっています。

 でも、ミルティに対する態度は…、わかっていても、やっぱり納得はできません。

 ミルティがお兄様に嫁ぐことについては、いくつかの理由が噂されています。

 曰く、周囲の者に対する態度が悪すぎて公爵家の跡継ぎに相応しくないと見なされて、嫁に出されることになった。

 曰く、ジェラード侯爵家との結びつきを更に強めるために、ローズマリー()と交換された。

 曰く、より優秀な跡継ぎを得るために邪魔になったので、放り出された。

などなど。

 中には、私との水面下での後継者争いに敗れて追放された、なんてのもありました。

 …皆さん、何を見ているのでしょう。




 ミルティは、少なくとも2科目も飛び級した優秀な院生です。

 確かに、社交嫌いで、まともに社交しているとは言えませんでしたが、そもそもがゼフィラス公爵家の跡取り娘として、周囲の方から寄ってくる立場だったのですから、人脈作りなどは不要だったのです。

 そして、今にして思えば、ミルティが社交する気がなかったのは、今のこの状況を呼び込むためでもあったのでしょう。

 公爵家を継ぎたくない。ミルティの気持ちを端的に表せば、そういうことです。継ぐ気がないから社交しない、跡継ぎは他を当たってくれ…そういう、言葉にできない反抗だったのです。

 なるほど、そう考えれば、私という対抗馬の台頭は、ミルティにとって福音以外の何者でもなかったでしょう。

 私とミルティが本当に姉妹のような関係だと知らない方から見れば、きっと表面上は仲良くしていても、裏では跡継ぎの座を争っていて、私がミルティを蹴落とした…という風に映るのでしょうね。

 ミルティの飛び級も、見る者によっては、私に対抗して、己が能力を誇示しようとしたようにも見えるでしょうから。

 2年目も頑張って2つ目の飛び級をしたけれど、二段飛び級した私には敵わなかった、そう思われているかもしれません。

 私と入れ替わるように、ジェラード侯爵家に嫁ぐことになったのが、また噂に拍車を掛けています。

 お兄様に失礼だとは思わないのでしょうか。

 これで、私がアーシアン殿下と接近しようものなら、略奪愛の完成ですね。

 公爵家を乗っ取り、婚約者を奪い…もしかして噂になってる私って、ひどい悪女なのではありませんか?



 まあ、ミルティの評判だけを考えるのなら、私が悪女に徹してもいいのでしょうけれど、それでは将来、私が研究所を運営する立場になった時に困るでしょう。

 とすると、当たり障りのない真実を語るというのが一番でしょうか。

 さすがに、聞かれもしないのに自分からあれこれ言うのははしたないですが、どうせあちらが放っておいてはくれないでしょうし。





 「ローズマリー様。ゼフィラス公爵家に入られたそうで、おめでとうございます。

  私、やはり若き名門ゼフィラス公爵家をお継ぎになられるのは、優秀で品行方正なローズマリー様が相応しいと思っておりましたの。

  第2王子殿下との婚約は、まだ公にされていらっしゃらないようですが、水面下では、もうお決まりなのでしょう?」


 社交の講義でお付き合いのあった伯爵家の令嬢が、早速やってきました。

 陰でコソコソしないだけでも十分まともだとは思いますが、彼女は、ミルティに対する嫌悪を隠そうともしません。


 「ありがとうございます。

  まあ、養女と申しましても、王立研究所の承継のためというのが主眼ですので、私自身の婚約については、まだ何も決まってはいませんの」


 「まあ、王立研究所をお継ぎになるのですか? そういえば、研究所長職はゼフィラス公爵家のためのポストでございますものね。

  ああ、そういえば、ローズマリー様は植物学を修めていらっしゃいますもの、当然ですわよね。

  第2王子殿下も植物学を修めてらっしゃいますから、手を携えて担っていかれるのですね」


 納得しているところ申し訳ありませんが、私はアーシアン殿下と手を携える予定はありません。事実上、女公爵として継ぐことになるのですから。

 もちろん、王国の法には「女公爵」などというものはありませんから、どなたかと結婚して「公爵夫人」になるわけですけれど。


 「アーシアン殿下と私では、研究の方向性が異なりますから、共同で研究というわけにもいかないのです」


 「ああ、そうでございますわね。

  一朝一夕には、なかなか参りませんものね」


 どうやら彼女は、私と殿下が結婚するものと決めてしまっているようですね。これ以上、何を言っても無駄でしょう。


 「ミルトリアは、これまでも、これからも、私の可愛い妹なんですの。

  お兄様の妻として、幸せになってほしいと願っております」


 牽制も込めた私の本音ですけれど、きっとこの方には、「(ミルトリア)は大人しくジェラード領に引っ込んでいろ」という風に聞こえているんでしょうね。

 ミルティが社交を嫌う気持ちもわかります。

 でも、研究所を継いだら、もっとドロドロした貴族の世界に踏み込むことになるのでしょうから、これくらいは笑ってかわせなければいけませんね。

 血筋、外見、能力に加えて、とうとう家柄まで最高級となったマリー。

 当然、擦り寄る貴族もこれまでの比ではありません。

 マリーは、社交もこなしますが、結構ストレスを感じるようです。

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