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奇蹟の少女と運命の相手  作者: 鷹羽飛鳥
学院2年目
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26 2人それぞれの道

 ニコル・ヒートルースに襲われたネイクは、特に後遺症もなく過ごしています。

 あの事件の時、アインさんは、ルージュの到着までニコルと対峙して時間を稼ぎ、ルージュがニコルの右手のナイフを弾いた後はネイクを救い出し、意識が戻るまで傍に居続けました。

 2人の絆は、ますます深まったようです。

 それはそうですよね。

 アインさんも、ニコルを刺激しすぎず気を惹くなど、自分にできること、求められる役割をきちんと理解していて、うまくこなしていました。


 その点、殿下は、本来守られるべき立場であることを理解していただけず、徒に敵方の前に立ち塞がっていました。

 もう少しご自分の立場というものを自覚していただきたいところです。

 私を庇おうとしてくださったのは嬉しいですが、私よりもまずご自分を守ることを考えていただかなければ困ります。

 でも、殿下は、そのことを直接申し上げても

 「でも、マリー嬢が襲われてるのに、黙って見ているなんてできないよ」

と、ちっともわかってくれませんでした。

 そして、うっかり聞き流してしまいそうでしたが、「マリー嬢」とはどういうことですか!?

 私は、殿下にとって指南役でしかありません。

 愛称で呼ばれているのを誰かに聞き咎められたりでもしたら、お互い立場が悪くなることに気付いてください。

 けれど、殿下は、何度言っても「マリー嬢」呼びをやめてくれません。

 一応、公爵邸の中でしか言っていないのですが、なし崩し的に認めさせられているようで気分が悪いです。

 「マリー嬢」と呼ばれるたびに胸が鳴る自分にも嫌気が差します。

 私の恋は、もう終わったというのに…。




 そうこうするうちに年が明け、いよいよ殿下の研究テーマを決めなければいけない期限が近付いてきました。

 そして、殿下がようやく決めたテーマは…

 「染料です」

 染料? 染料というと、布などを染める、あの染料?

 植物学で研究する染料といえば

 「染料ですか? 藍などの?」


 「そうです。僕は、育てやすく発色の良い染料植物を開発してみたい。

  染料が安くなれば、色鮮やかな衣料が安価で手に入るようになります。

  それに、新しい色の染料だって作れるかもしれません。

  大叔父上の七色のバラの二番煎じじゃない、僕だけの研究テーマです」


 染料ですか。確かに食べられるものではありませんが、有意義な研究です。

 染め物を安価にという、為政者側の視点も踏まえた素晴らしいテーマです。

 きっとお祖父様も喜んでくださいますね。


 これで、私の役目は終わりました。

 ここから先は、殿下だけの研究。

 おばあちゃまがそうしたように、私も、もう殿下の研究の手助けはしない、できない。

 さようなら、殿下。これで、ようやくあなたから離れることができます。


 「素晴らしいですわ、殿下。

  手軽に染色できるようになれば、衣料の低価格化にも繋がります。

  食料品と違って、長距離輸送にも耐えられますから王国の隅々まで行き渡らせることもできますし、他国への輸出だってできるでしょう。

  王家の方らしい、素晴らしい発想だと思います」


 「マリー嬢は、このテーマがお気に召しませんか?」


 なんでしょう? 私は賞賛したつもりなのですが、伝わらなかったのでしょうか。

 「いいえ? 何も問題などありませんわ。

  とうとう殿下も独り立ちなさるのだと思うと、感無量です。

  綿花は領地の方で研究していましたが、さすがに染料系の植物は経験がございませんので、お手伝いできないのが心苦しいところです」


 「あの、マリー嬢は、綿花は研究しているんですよね? よければ、マリー嬢の開発した綿花を、僕の開発した染料で染めるというのはどうでしょう?」


 ああ…、そんな魅力的な誘いを掛けないでください。

 思わずすがってしまいそうになるじゃありませんか。

 私があなたの隣に立つ未来なんて、存在しないのです。


 「申し訳ありませんが、綿花の研究をしているのはおばあさまで、私はご存じのとおり、とうもろこしを研究しているのです。

  別に、以後の交流を断つというお話ではありません。ただ、毎週顔を合わせるほどの必要もありません。

  毎度毎度、公爵邸をお借りしているわけですし、これ以上、必要もないのに続けるのも申し訳ないですから」





 殿下は、しぶしぶながら納得してくれました。

 いつか殿下もお祖父様のように、美しい色の染料を完成させるのでしょうか。

 私と殿下の行く道は違いますが、いずれ同じ研究所に入ることにはなるのですから。

 それまで、しばしのお別れです。

 次に会う時は、殿下も一端の研究者になっているでしょう。

 私も、まずは研究者として実績を挙げなければ。

 不世出の才媛(おばあちゃま)の後継者として、私は一廉(ひとかど)の研究者になるのです。

 運命の人を探すのは、その後でいい。

 ですから、どうか殿下もお幸せに。

 マリーとアーシアンのとりあえずの決別です。

 もちろん、研究関係で話をすることくらいはあるでしょうが、これまで毎週のように会ってきた2人が、月に一度会うかどうかレベルになります。

 そして、マリーは、“食べ物以外でも人の役に立つ研究がある”ことに気付きました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >さようなら、殿下。これで、ようやくあなたから離れることができます。 この思い込みがコメディだな。マリー、困った子。ほーほっほっ! [気になる点] >不世出の才媛の後継者として、私は一…
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