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奇蹟の少女と運命の相手  作者: 鷹羽飛鳥
学院2年目
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裏24 苦渋の囮作戦(クロード視点)

 予想している方もおられたでしょうが、クロード視点です。

 もちろん、ちゃんと裏で動いています。

 「そういうわけで、明日、誘いを掛ける。状況からすればすぐにも食い付いてくるはずだから、皆心して当たるように。

  いいな、最優先すべきはジェラード侯爵令嬢の安全、次に黒幕の追跡だ。忘れるな」


 久しぶりに養成学校に呼び出されたと思ったら、結構大がかりな話になってやがる。

 ヒートルース子爵家嫡男、いや、()嫡男だな。

 廃嫡されたニコル・ヒートルースが何者かと接触し、行方を眩ませた。

 裏にいるのが何者かはまだわかってないらしいが、ニコルが武器やら薬やらを入手してから消えたってことで、現在学院では警備が強化されている。

 ニコルを利用するってことは、学院内でネイクミット・ティーバを襲う態を装ってお嬢様を狙っている可能性が高いからだ。

 俺は本来、ゼフィラス公爵家に雇われている立場なんだが、今回の作戦は、陛下の肝煎りらしく王城主導で、普段は俺と関わってない連中も大分駆り出されてるらしい。




 ここ数日、夕方頃にニコルの姿が学院内で確認されてる。

 まだ襲ってこないのは、多分ルージュが一緒にいるからだ。

 だったらルージュがいない隙を見せれば、きっと食い付いてくる。

 つまり今回の作戦は、お嬢様を囮に使っての博打ってわけだ。

 ひどい話だとは思うが、いつ襲ってくるかわからないものを延々待って疲弊するくらいなら、こちらに有利な状況を設定した方が安全なのも事実だ。

 その方が安全だからこそ囮にするんだ、絶対に無傷で終わらせなきゃな。




 翌日、夕方に公爵令嬢がお嬢様達から離れる。

 ニコルと、敵方(どっか)の影らしき奴らが5人、近くで様子を窺っているのは把握済みだ。

 今ルージュが外れれば、確実に襲ってくる。

 正直、ルージュ1人で支えられる人数じゃないが、俺らみたいなのが隠れてることも予想した上で、矢面に立つニコルが転けないように念を入れてるんだろう。


 …動いた。

 予想どおりネイクミット・ティーバを人質に、お嬢様を攫うつもりか。

 影1人くらいなら、お嬢様は自分で対処できるから、俺は伏兵潰しだ。

 黒幕を吐いてもらわなけりゃならねえから、意識を刈り取るだけにする。殺す方がよっぽど簡単なんだが。

 背後から近付き、ぶん殴って昏倒させる。

 後は、睡眠薬を嗅がせて手足を縛れば、一応終わりだ。両手を背中に回して親指同士を針金で括ると、まず解けない。



 お嬢様の方を確認すると、背後から忍び寄った影のナイフを鞄で受け止めつつ軸足を刈って転がしていた。

 攫うつもりのくせにためらいなくナイフで突いてくるってことは、殺して死体を持ち去った態で攫おうってわけか。

 強烈な麻酔が塗られてて、少しかすらせただけで意識を刈り取れるってわけだ。

 しっかし、プロを手玉に取れるってな、相変わらずデタラメな勘の良さだな。


 よっ、と。2人目終了。

 …おいおい、お嬢様、何やってんだ! 王子守って転んでちゃダメだろ。体幹ぶれないのがあんたの強みなんだからよ。

 しょうがねえ、援護だ。

 俺は、倒した影から奪ったナイフを、お嬢様に襲い掛かる影の顔めがけて投げた。

 麻酔付きだ、かすっただけで終わる。避けるしかねえよな。

 うまく避けたようだが、お嬢様相手にその隙は致命的だ。



 とりあえずお嬢様の方は片付いたが、今の投擲で、俺の存在が敵にバレちまった。

 あと2人、逃げられるとまずい。お嬢様の戦闘能力を見られちまったからには、逃がすわけにはいかねえ。

 ニコルのガキは、予定どおりルージュが押さえたようだし、1人は王城の奴に任せるとして、もう1人。間に合え!


 最後の1人にようやく追いついたが、自害されちまった。

 死なれちまったら、口を割らせることができない。痛い損失だ。

 とはいえ、お嬢様の安全には代えられない。

 苦渋の選択ってことで、諦めるしかない。

 さてと、とりあえずこの死体と、転がしといた2匹も回収して警備の連中に引き渡すとするか。

 尋問やら背後関係の洗い出しやらは、そっちの担当に任せときゃいい。

 できりゃあ、俺の手で黒幕ぶっ飛ばしてやりたいとこだが、そんなことしてっとお嬢様から離れることになるからな。俺はお嬢様の護衛だ。


 俺としちゃ、お嬢様が早いとこどっかで落ち着いて休んでくれると嬉しいんだが。

 ティーバは、多分麻酔嗅がされてしばらく起きねえだろうから、その意味でも落ち着けるとこに移動しろよ、ルージュ。気が利かねえな。


 それにしても、王子を助けて自分が転けたのは減点としてもだ、プロを相手に五分以上に渡り合ったのは褒めてやるよ、お嬢様。

 王子が余計なことしなけりゃ、最後の奴に自害されることもなかったんだが、あの王子がお嬢様に惚れてることを考えりゃ、体張って惚れた女を守ろうとしたって言えなくもないのか。

 本来なら、褒めてやるとこなんだろうな。

 

 さてと、前公爵夫人(雇い主)に言って、影やらニコルのガキの口は封じてもらわなきゃな。

 お嬢様が、鞄に刺さったナイフで相手の体を引いて懐に潜り込み、軸足を蹴飛ばして刈るなんて体術使えるのを見た奴が生き残ったらやばいからな。

 そういうわけで、ニコルの襲撃は、敢えて誘い込んで殲滅するという作戦でした。

 ミルティは、一応知らされて席を外しています。

 ルージュがいいタイミングで離れてくれないと、襲ってきてくれませんから。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >相変わらずデタラメな勘の良さ いつも無意識な動きっぽいですもんねー。勘で体が動く! たいしたものです。 [気になる点] >見た奴が生き残ったらやばいからな。 それはなぜ? 更に強い刺…
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