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奇蹟の少女と運命の相手  作者: 鷹羽飛鳥
学院2年目
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裏22 空回りする恋心(アーシアン視点)

 すみません、今回短いです。

 長期休暇が終わり、またローズマリー嬢に会えるようになった。

 今度の週末は、特に楽しみだ。

 なにしろ、ミルティから耳打ちされている。

 「いい、殿下、今度の週末はお菓子を持って来ちゃ駄目よ。お姉様がうちでクッキー焼くことになってるから。

  期待していいわよ、お姉様のクッキーは料理人並なんだから」



 なんでも、ミルティが休暇中にジェラード侯爵領に遊びに行った時サンドイッチを作ったそうで、それを食べたオルガ殿が褒めていたという話から、ローズマリー嬢もクッキーを焼こうかという流れになったんだそうだ。

 大叔母上やミルティの分と一緒に、僕の分も作ってくれるらしいけど、ついででも何でも、ローズマリー嬢が焼いたクッキーを食べられるなんてラッキーだ。

 休憩時間が楽しみで落ち着かない僕に対し、ローズマリー嬢の様子はいつもと全く変わらなかった。

 わかっていることではあるけど、一方通行ぶりが切ない。




 ようやくお茶の時間になった。


 「あ~、ローズマリー嬢。すみませんが、今日は茶菓子を持ってきていないので…」


と水を向けると


 「ちょうどよかったです。

  実は、私、クッキーを焼きましたので、今日はそれでお茶にいたしましょう」


 ワゴンが運ばれてくると、クッキーの香ばしい匂いが漂う。

 丸いのだけじゃなく、花の形や星の形など、見た目も凝っている。

 ハート型がないのが、いかにもローズマリー嬢らしい。


 「お口に合うとよろしいのですが」


 「ローズマリー嬢の作ったものなら、美味しいに決まってますよ」


 お世辞ではなく、本当にそう思う。

 見た目からして、素人の、というか、貴族の令嬢が趣味で作ったものとは一線を画している。

 色といい形といい、これで美味しくないわけがない。

 オーソドックスな丸いのを一口齧って驚いた。


 「! まさかこれほどとは…。

  ローズマリー嬢は、本当になんでもできるんですね」


 本当に、うちの料理人が焼いたものと比べても遜色ない。

 この人にできないことってあるんだろうか。

 なんというか、ボリボリ食べるのが勿体ないような気がして、1つ1つを真剣に味わった。

 なんと言えばいいのか、うまい褒め言葉が思いつかないまま食べているうちに、クッキーが残り少なくなってきた。

 寮に持ち帰ってゆっくり味わいたい……そう思った僕は


 「これ、貰って返っても構いませんか?」


と尋ねてみたけれど、


 「いいえ、殿下に残り物をお持たせするわけには参りませんから」


と断られ、あろうことか残っていたクッキーは下げられてしまった。

 こんなことになるなら、さっさと全部食べてしまえばよかった。

 あれ、後で厨房に行ったら貰えるかな。

 そんなことを考えていたせいか勉強に集中できなくて、ローズマリー嬢に叱られてしまった。


 「すみません、あの、さっきのクッキーですが…」


 「殿下、気持ちを切り換えてください。

  殿下は、ここにお菓子を食べにいらしているわけではないんですよ」


 もう彼女の中では終わった話らしく、とりつく島もない。

 なんとか勉強会を終え、厨房に行ってみると、残っていたクッキーは侍女や厨房の者が食べてしまったらしい。

 ミルティのところにも運ばれているというので部屋を訪ねてみたけど、こっちも既に食べ尽くされていた。

 先程までティーバ嬢が来ていて、一緒に食べていたそうだ。 



 「ちょっと、殿下! なんで褒めないのよ!」


 ことの次第をミルティに話したら、怒られた。


 「しかも残すなんて…。美味しかったんでしょう? 下品にならない程度に夢中で食べてみせればいいのに…」


 「全部食べてしまうのが惜しくて…」


 「そんなの、全部食べた後で、美味しかったからまた作ってほしいって頼めばいいことじゃない!

  また難しい顔して食べてたんでしょう。

  それで残しちゃったんなら、お姉様、二度と作ってくれないわよ。

  お姉様、今まで、作ったものを残されたことなんてなかったんだから、よっぽど気に入らなかったんだって思ってらっしゃるわよ」


 「気に入らないなんて、そんな。むしろ、食べるのが勿体ないくらい美味しかったのに」


 「だから、それを素直に伝えればすむことでしょう。

  このままじゃ、殿下の気持ちなんか、いつまで経っても伝わらないわよ。

  ただでさえ、私の婚約者候補って思われてるのに。

  してもいない婚約なんて解消のしようもないんだから、私達の関係は当分このままなのよ?

  だからこそ、殿下がお姉様にうちで会えるよう協力してるってのに…。

  このままじゃ、お姉様が卒業するまで進展しないわよ。

  殿下が有利なのは学院にいる間だけで、研究所にはパスール様が待ち構えてるんだからね。

  あのね、殿下は不器用なんだから、洒落たことを言おうとなんかしないで、素直に好意を言葉にすればいいのよ。

  殿下の魅力(いいところ)は、その素直さなんだから。

  お姉様は完璧な淑女だけど、恋愛だけは子供並なんだから、わかりやすく素直にね」


 「…頑張る」


 今日の失点を取り戻すのは、大変そうだけどなあ…。

 マリーがポーカーフェイスが上手いせいで、お互いすれ違ってます。

 マリーは、内心わたわたしながらも、表面上はいつもどおり完璧という…。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >殿下の魅力は、その素直さ そうだったんだ! どっかで読み飛ばしてしまったのかしら笑? アーシアンの視点は可愛らしいので、ちょっとモヤモヤが晴れた気がしますねー。 なんかもう、当事者以…
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