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奇蹟の少女と運命の相手  作者: 鷹羽飛鳥
学院1年目
38/161

16 帰郷

 ようやく長期休暇になり、私はお兄様と一緒に帰郷しました。

 温室の方は、うまく調整したので、長期休暇が終わって戻る頃に花が咲く予定です。

 おばあちゃまに、初めての研究のことやネイクのことをお話しするのが楽しみです。




 「お父様、お母様、ただいま戻りました」


 お父様達に帰郷の挨拶をして、飛び級の報告をします。

 ついでなので、パスール様が言っていた、私が若い頃のお母様にそっくりだという話も聞いてみました。


 「そうだね。マリーはドロシーの院生時代にそっくりだよ。

  違うのは、目の色くらいかな。目の色は、私に似たようだね」


 お父様が仰るには、私の方がお母様より目の青が濃くて、少しキツい印象を与えやすいそうです。


 「でも、好きなことをしている時のマリーは、随分と無邪気な印象に変わるけどね」





 お父様達へのご挨拶の後は、楽しみにしていたおばあちゃまとの再会です。


 「おばあちゃま! 会いたかった!

  お約束どおり、植物学以外は二段飛び級しませんでした」


 「ありがとう、マリー。

  オルガとは、変わりない?」


 「はい。あ、どちらかというと、昔みたいに優しくなりました。

  フォスターのご子息に襲われたことで、心配を掛けちゃったみたいです」


 「話を聞いた時は驚いたわ。

  でも、無事でよかった」


 「ありがとう、おばあちゃま。

  聞いてください、仲のいい友達ができました。

  ネイクミットっていう、平民なんだけど、私のことをきちんと見てくれる、とっても気持ちのいい子なの。

  官僚貴族のご子息と、子供の頃から婚約してたんですって。

  2人で官吏になるって言って、学院での再会を約束してたんです。

  それで、再会してすぐ、改めてプロポーズされて。

  運命の人って、ああいうものなんだなって、見ていて羨ましいです。


  おばあちゃまのお友達にも、平民だった方がいらしたのよね?」


 「そうね。

  リリー…リリーナは、今は子爵夫人ね。

  たしか、下のお子さんが、学院で教師をやってるはずよ。経営学だったかしら」


 おばあちゃまのお友達のお子さんが、学院に?

 あ、でも、経営学じゃ会えないかもしれませんね。


 「リリーは、おうちが商家で、卒業したらどこか商売相手のところに嫁がされることになっていたのよ。

  でも、彼女はそれが嫌だった。

  だから、協力してあげたの。ほんの少しだけ。

  今の彼女があるのは、彼女自身が頑張った成果よ」


 「貴族になったんでしょう?」


 「ええ。彼女が研究所に入った後のことだから、私はあまり詳しくは知らないけれど。

  カトレア様の方がよくご存じよ。

  たしか、お相手は同僚の方だったんじゃなかったかしら」


 「研究所にお勤めだったんですか。

  そこで出会ったんですね。素敵です」


 「マリーのお友達は、どんな方なの?」


 「私は、ネイクって呼んでます。

  やっぱり商家の子なんですけど、7歳まではお父様が王都の商会で修行していて、そこの関係の子供同士で遊んでいる時に、アインさんが混じって遊ぶようになったんですって。

  アインさんは、官僚子爵家の次男なの。

  ネイクが7歳の時、お父様がよその町で独立してお店を出すことになって王都を離れたんだけど、その時アインさんから、一緒に官吏になって結婚しようって言われたんですって。

  それでネイクは、学院で再会するのを目標にずっと頑張ってきたの。

  入学してすぐ、アインさんはネイクを探して、家紋入りのハンカチを渡してプロポーズしたの。

  『共に生涯を生きてほしい』って言ったんですって。

  運命の人って、ああいう風に出会うんだって感激しました」


 「そう。いいお友達ができたわね。

  大切になさい。

  きっと、その子との出会いが、あなたの世界を広げてくれるわ。

  あなたの話を聞いているだけで、どんなにあなたがその子を大切に想っているか伝わってくるもの。

  そこで感じたもの全てが、あなたの人生を彩ってくれるから。

  あなたの人生は、あなただけのもの。でも、それを彩るのは、あなたが出逢ってきた人達との思い出や、その時々のあなたの想いよ」


 やっぱりおばあちゃまは、ネイクとアインさんのことをわかってくれました。

 ネイクと会えたことは、本当に幸運だったんですね。

 ああ、そういえば。


 「おばあちゃま、最近はお祖父様がよく研究室に遊びにいらっしゃるんですよ。

  私の研究の計画とかを聞きたがって、お話しすると喜んで。

  私が使っている研究室は、おばあちゃまとお祖父様が使ってたところなんだそうで、懐かしいみたい」


 「そう。きっとね、マリーが研究の算段を付けているのを見ていて楽しいのよ。

  あの方は、研究が全てみたいな方だから。

  私は、卒業してからずっと離れているし、マリーの研究の理論を聞きたいのね。

  せっかく王都にいるんだから、沢山お話するといいわ」


 「はい、そうします」


 お祖父様、私とお話しするとおばあちゃまとお話ししてた頃を思い出すのかな。

 それなら、いっぱいお話しよう。




 私は、休暇の間中、おばあちゃまのお手伝いをしました。

 小麦が、私のいない間に大分安定してきていて、少し寂しかったのは内緒です。

 「家に帰る=おばあちゃまに会える」という図式ができているのがマリークオリティ。

 でも、ちゃんとサイサリスのことも考えられるようになったところが、少し成長したところです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 幼い!! マリー、頭がいいのに、この幼さはどーしたものか…。 誰かが守ってやらなきゃ、簡単に世間の汚さに傷つけられるね。 植物だけじゃなくて、自身も純粋培養温室育ち。良い交配を選ばんと!…
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