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奇蹟の少女と運命の相手  作者: 鷹羽飛鳥
学院1年目
36/161

15 研究室とお祖父様

 前話ラストのサイサリスの夢の実現です。

 研究科に入った私には、研究室が与えられました。

 多分偶然でしょうけれど、おばあちゃまが昔使っていた研究室です。

 と言っても、おばあちゃまが使っていたのは30年以上前ですから、その後何度も改装されているそうですが。

 おばあちゃまの時とは違って、私は1人でここを使えるそうです。

 私は、これから、ここの温室で、とうもろこしの改良をする予定です。

 おばあちゃまから離れての初めての研究に、私は、人間の食料にも家畜の餌にもできるとうもろこしを選びました。

 これから3年の間に、どこまで形にできるか、挑戦です。


 おばあちゃまと一緒にやっていた研究については、おばあちゃまが決めた方針でやっていましたから、私が一から決めて研究するのは、これが初めてです。

 なんだか、すごく新鮮な気持ち。

 以前からおばあちゃまには、マリー()マリー()なりの方針で研究してごらんと言われていたので、これでようやく一人前への第一歩です。

 ジェラード侯爵領(うち)の温室ほど広いわけではありませんが、うちみたいに4つの品種改良を同時進行しようと思わなければ、それなりの植え付け面積は確保できるでしょう。

 まだ研究科に来てからそんなに時間が経っているわけではないので、掛け合わせの基となる4品種の選定と取り寄せの段階です。

 もう6月に入っているので、できれば早く栽培を始めた方がいいのですが、再来月には長期休暇で帰郷することになるので、その間に花が咲いてしまわないよう、種蒔きの時期を調整しなければなりません。

 パスール様につきまとわれたりしていて結構時間を無駄にしてしまっていたのが勿体なかったと思ってもいいですよね。

 種の選定が終わったら、取り寄せの間に温室内の区画整理もやってしまいましょう。

 それで種が届いたら、ようやく本番です。





 そんなある日、お祖父様が研究室にやってきました。

 私の研究を見学に来たそうです。

 すごく驚いたことに、護衛としてルージュを連れてきました。

 お祖父様はともかく、白衣を着たルージュは、なんだか場違いな感じがします。

 「久しぶりね、ルージュ」


 「お久しぶりです、お嬢様」


 「お祖父様の護衛は、いつから?」


 「今日からです。

  実は、来年、ミルトリアお嬢様が学院に入学するに当たって護衛することになっているので、公爵家に出入りさせていただいて、お嬢様に顔繋ぎしているのです」


 「ルージュが護衛に付くの。さすがは公爵家の跡取り娘ね。

  クロードは、お元気?」


 「さあ…? 私がクロードに最後に会ったのは、ジェラード侯爵領でのことですので。

  今、どこで何の仕事をしているかは、私も聞かされておりません。そういう仕事ですから」


 「そうね、ごめんなさい。懐かしかったから、つい。

  まだ、たったの2か月なのにね」


 「いえ、私どもなどに気を遣っていただいてありがとうございます。

  研究のお邪魔にならないよう、こちらに控えておりますので、何かあればお呼びください」


 ルージュは、研究室の中には入らないで、ドアの外で警戒しているつもりのようです。

 お祖父様はというと、

 「懐かしいな。

  すっかり内装が変わってしまっているが、昔、ここで夫人と共に研究をしていたんだ。

  アライモは、ここの温室で生まれたんだよ」


 アライモ…おばあちゃまが最初に作った新種作物。

 そうか、ここで作られたのよね。

 誰も考えもつかなかった方法で、おばあちゃまが作った新種の作物達、その第一歩が。

 私が新しい作物を作るのも、この温室から。

 そう思うと、心が浮き立ってくるのを感じます。



 私は、お祖父様に、とうもろこしの品種改良をすること、その基となる品種の選定中であることなどを説明しました。

 お祖父様は、楽しそうに私の話を聞いて、帰って行きました。


 その後、種蒔きの段階でまたやってきたお祖父様は、区画ごとに種を蒔く作業を手伝ってくれました。

 仮にも前公爵のお祖父様にこんな作業を手伝わせていいのかしらとも思ったのですが、なぜかお祖父様はとても嬉しそうな顔で手伝ってくれるので、止めるに止められなかったのです。



 結局、長期休暇までの2か月弱の間に、お祖父様は5回も研究室を訪ねてきて、そのたびに嬉しそうな顔で作業を眺めていました。

 一度、ゼフィラス公爵邸に行った時に、お祖母様にそのことを話したら、お祖父様は私と研究の話をするのが夢だったのだと言われました。

 お祖父様は、本当はずっとおばあちゃまと一緒に研究していたかったけれど、おばあちゃまがジェラード侯爵領を出たがらないから、叶わなかったのだと。

 それで、ようやく私が王都に来たので、せめて私とは一緒に研究していたかったのだそうです。

 そういえば、去年、お祖父様がジェラード侯爵領を訪ねてきた時、王都の研究室に入らないかと誘われたことがありましたね。

 お祖父様は研究が大好きだから、おばあちゃまと研究するのが楽しいのですね。

 私にも、一緒に研究したいって人が現れることもあるんでしょうか。

 よくわかりません。

 やっぱり私は、おばあちゃまと一緒に研究しているのが一番楽しいと思います。


 でも、お祖父様と研究のお話をするのも、少し楽しいです。

 2人の初めての共同作業です(笑)


 マリーと一緒に研究室にいるサイサリスは、「このおっさん、何がそんなに嬉しいの?」ってくらいニッコニコです。

 ドロシーやガーベラス、ミルティにも見せたことない笑顔です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] これで元気ならなあ。 サイサリス様の笑顔が、なんだか辛く悲しい。 もっと長生きして欲しかった。。。
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