表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
奇蹟の少女と運命の相手  作者: 鷹羽飛鳥
学院1年目
34/161

裏14-1 警告(パスール視点)

 なかなか評判の悪いチャラ男、パスール視点です。

 爺様に命じられて、わけもわからんまま小娘を落とすことになっちまった。

 俺にだって相手を選ぶ権利くらいはあると思うんだがな。

 3つも下の小娘じゃあ、食指も動かないだろうに。

 正直気が進まなかったが、本人を見て気が変わった。




 この娘の母のドロフィシス・ゼフィラスは、学院にいた頃は「女神」と呼ばれ、美姫として名を馳せていたらしい。

 さすがに噂でしか知らないが、新興公爵家とは言え、当初から飛ぶ鳥を落とす勢いだった王立研究所長の娘で絶世の美少女、しかも物腰も柔らかく気取らない性格と、非の打ち所のない優良物件だったとか。

 並み居る貴族家からの求婚を笑顔で躱し続けていたのが、卒業と同時にノアジール・ジェラード侯爵子息と婚約していたことが発表された。

 ジェラード侯爵子息は、確かに3科目飛び級した有望株だったが、ドロフィシスより3歳も下だった上、学院で2人が一緒にいるところを見た者もなく、誰もが首を捻ったという。


 結局、カトレア・ゼフィラス公爵夫人(当時)と、セルローズ・ジェラード侯爵夫人との関係で婚約したのだろうということで落ち着いた。

 学院時代、ゼフィラス前公爵夫人の取り巻きの中で、ジェラード侯爵夫人が一番のお気に入りだった話は有名だ。

 ドロフィシス・ゼフィラスは、ノアジールの卒業を待って結婚し、そのままジェラード侯爵領に行ってしまった。

 時折実家に顔を出してはいるようだが、公の場に姿を見せることはないらしい。

 ジェラード侯爵夫人といい、ジェラード侯爵家には、夫人を外に出さないという風習でもあるんだろうか。


 そういえば、件の小娘(ローズマリー)も、存在自体あまり知られていなかった。

 学院の入学者名簿にジェラードの名を見付けて、初めてジェラードに娘がいたことを知った者も多かったようだ。

 一応、隠されていたわけじゃなく、領地貴族の間では周知の存在で、“おいしい結婚相手”として狙われていたらしいが。

 学院創設以来2人目となる二段飛び級をした小娘、ローズマリー・ジェラードは、今や「奇蹟の再来」なんて呼ばれている。

 何が「再来」なのかと思ったら、二度と出ないと思っていた「不世出の才媛」がまた出た、ということらしい。

 「奇蹟」なんて、随分と大仰だが。




 ローズマリー・ジェラードは、学院時代のドロフィシスの絵姿にそっくりだった。

 波打つ白金の髪、涼やかに切れ上がった目元、絵姿よりは少し幼いが、もう少ししたら間違いなく女神と謳われた美少女の再来となる。

 そうか、血筋に才能、実家の勢力、そんな背景に加えて本人もこれほどの美貌を備えていたのか。

 そりゃあ、男がほっとかないだろう。


 爺様に言われた時は、あまり気乗りしなかったが、これなら話は別だ。

 初めてドロフィシスの絵姿を見た時、俺は憧れた。初恋だったかもしれない。

 絵姿が昔のもので、とっくに嫁いで子供もいることを知って、随分嘆いたもんだ。

 あの涼やかな目を潤ませて見つめられたら、さぞかしそそるだろう。

 なんとしても、俺のものにしてやる。




 …と意気込んだのはいいが、とにかくガードが固い。

 固いというより、男嫌いって噂は本当なんじゃないかと思うほど反応が素っ気ない。

 俺は公爵家の嫡男だし、見た目もそれなりにいいし、女に不自由したことはない。

 なのに、こいつは俺をそこら辺の男と同じにあしらってくる。

 なかなか思うようにいかず、イライラし始めた頃、見たことのない女が俺の目の前に現れた。

 どこかの貴族家の使用人と思われる服装で、にこにこと愛想良く笑っているくせに、目が笑っていない。

 慇懃無礼を絵に描いたようなメイドだった。

 「パスール・スケルス公爵ご子息とお見受けします。

  我が主、ゼフィラス前公爵がお呼びです。

  どうかご同行ください」


 その女は、表情を動かしもせずに、それだけ言うと、俺の返事を待つようにじっと見つめてきた。

 目を見たら、そのまま奈落に吸い込まれていくような錯覚を覚えるほどの不気味な目だった。


 「こちらの馬車にどうぞ」


 女が示したのは、高位貴族が使う馬車で、確かにゼフィラス公爵家の紋が付いている。

 どうやら、ここ最近、俺がローズマリー嬢につきまとっている件で、ゼフィラス前公爵から話があるようだ。

 気が進まなかったが、断れるものでもなく、俺は素直に馬車に乗り、ゼフィラス公爵邸へと連れて行かれ、応接室に通された。




 ソファに座って暫く待たされた後、前公爵が現れた。

 前公爵は、俺の目の前のソファにどっかと座る。

 「パスール・スケルス君だね。

  私は、サイサリス・ゼフィラス。

  ゼフィラス公爵家の当主…だった者だ。

  急に呼び立ててすまなかったね」


 全くすまないと思っていないであろう口調で、前公爵が話し始めた。

 まぁ、話の内容は想像が付く。

 ローズマリー嬢に近寄るなとか、そういう話だろう。

 …と、思ったのだが。


 「少し調べさせてもらったが、君の成績は芳しくないようだね。それでよくローズマリーに近付こうなどと考えられる。

  大した面の皮だ」


 成績? なんで成績が近付くのと関係あるんだ?

 「私の成績が、何か関係あるのでしょうか」


 「もちろん、あるとも。

  ローズマリーの夫になる人間は、この国の将来を担う前途有望な若者でなくてはならない。

  すまないが、君が前途有望とは、私には思えないのだよ」


 「侯爵家令嬢の夫に対するには、随分と高望みをなさっておいでのようですね」


 「侯爵家? 何か勘違いをしていないかね。

  ローズマリーは、前王の血を引く娘だ。

  父親には、王家の血は流れていないがね。

  血の濃さで言えば、君と同等だよ。

  君の母親にも、王家の血は一滴も流れていないからね。

  だが、薄れてしまっただけの君と違い、ローズマリーには、適度に薄めた血を王家に戻すという役目があるんだ。

  まだ内々の話だが、王太子の息子の妻にという打診も受けているんだよ。

  今の王太子には王子が2人だけ、君が娶るべき王女はいない。

  わかるかね、君とローズマリーでは、とても釣り合いが取れないんだよ。

  もちろん、君が遙かに下という意味で、だ」


 おいおい、将来の王太子妃狙いかよ。

 「侯爵令嬢が王太子妃ですか?

  あり得ないとは言いませんが、家格が少しばかり足りないのでは?」


 「私の(・・)養女にすれば足りる話だよ。

  王弟にして前研究所長である私の義娘(むすめ)、公爵家当主にして現所長であるガーベラスの義妹(いもうと)となると、家格は公爵家当主の孫でしかない君より遙かに上だな。

  そうは思わないかね、無役の公爵家嫡男殿。


  さて、君が何も持たない身の程知らずだということが理解してもらえただろうか。

  ローズマリーに声を掛けたいのなら、せめて官僚になってからにしてほしいのだがね」


 くっ…公爵家嫡男の俺が、こうも頭ごなしに無価値呼ばわりされるなんて…。

 なんだよ、爺様! あんたの弟は、王家の血のなんたるかもわかっていない花狂いじゃなかったのかよ!

 爺様よりよっぽど血筋を武器にしてるじゃないか。

 その上、役職までひけらかして。

 伊達に30年も研究所長をやってないってことか。

 どうする。王弟に面と向かって命じられたとなると、俺にできることはない。

 爺様も王弟で、王弟(前公爵)の兄ではあるけど、ゼフィラスとスケルスでは、同じ公爵家でも家の勢い(発言力)がまるで違う。

 爺様は、自由恋愛なら文句は言われないとか言ってたが、王太子妃候補だって言われた以上、俺がローズマリー嬢と恋愛できる身分かって話になっちまう。

 この分じゃ、爺様の言うとおり、ローズマリー嬢にも護衛が付いていかねないな。

 俺を呼びに来た女、ありゃ多分、影の類だろう。

 次にローズマリー嬢に近付いたら、暗殺するぞって警告か。

 まったく、手も足も出ないじゃないか。


 「わかりました。

  官僚になって出直しましょう」




 結局、俺は何も言い返せずに引き下がるしかなかった。

 だが、まだ諦めた訳じゃない。

 このまま引っ込むと思うなよ。

 王子と正式に婚約される前に、ローズマリー嬢に相応しい立場になって戻ってくるからな!

 一旦パスール退場です。

 もちろん、このままでは終わりません。

 次に登場する時、どういう風に成長しているでしょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] パスール。いい方向に成長して、官僚になることを願う! おそらく、マリーに相応しいいい男になる予感。最初から完璧じゃないのは、伸び代があってイイね♡ それにしても王太子妃候補!ガッツリ政略…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ