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奇蹟の少女と運命の相手  作者: 鷹羽飛鳥
学院1年目
32/161

裏13-2 その娘を口説け(ラビリス視点)

 久しぶりのラビリス視点です。

 やっとパスールが出てきました。

 「なに、飛び級が出たのか!? 科目は何だ?」

 学院に派遣している者から、飛び級が出たという報告が入った。

 「は。女性2名で、1人は簿学、もう1人は簿学・算術・植物学です」

 なんと、2人で、しかも両方女だと?

 「待て。植物学だと? まさかジェラードの孫娘ではなかろうな」

 「仰るとおりです。もう1人の方は平民の女子で、ジェラード侯爵令嬢の友人とか」

 「わかった。その2人の動向を探れ」



 2年ぶりに飛び級が出たと思ったら、ジェラードか。

 それでなくても手を出しづらいというのに、植物学とあっては手を出すわけにはいかん。

 去年、兄上に釘を刺されているからな。

 もう1人の方も、ジェラードの息が掛かっているのでは、手を出しにくいな。

 有能な手駒を手に入れるのも難儀なものだ。


 しかし、前回の飛び級が兄の方で、今回は妹か。

 代々3科目飛び級するなど、どういう教育をしたらそんなことができるのやら。





 暫くして、更なる驚きが届けられた。

 「二段飛び級だと!? 植物学でか!」


 ジェラードの孫娘が、祖母に続いて2人目となったか。

 サイサリスの奴の孫でもあるわけだな。

 まさかあいつ、こうなることを見越して(ドロフィシス)を嫁にやったわけではあるまいな。

 おのれ、また身内から研究者を出すのか。

 外孫とはいえ、実の孫だ。

 3代目の所長に据えることもできるだろう。

 ガーベラスに息子がいないのがせめてもの救いだが、いざとなったら、ガーベラスの養女に迎える手もある。

 ゼフィラス公爵家は、安泰か。

 忌々しい。





 サイサリスへの怒りを持て余していた俺は、孫のパスールを部屋に呼び出した。


 「二段飛び級したジェラード侯爵家の娘は知っているな」


 「ジェラード? ああ、あの奇蹟の再来とかって男嫌いのことですか」


 「男嫌い?」


 「男を袖にするのが趣味なんじゃないかってくらい相手にしないもんで、そう呼ばれています。

  婚約者もいないから、あちこちの奴らが声を掛けていますが、まともに口もきいてもらえないそうで。

  この前、とうとう刃物を振り回す馬鹿まで出たって話です。

  まあ、侯爵令嬢だし、美形らしいし、飛び級するしで、気持ちはわかりますがね」


 「お前はどうだ、会ったことはあるのか」


 「そりゃあ、興味が全くないとは言いませんが、3つも下の小娘ですよ。会っても仕方ないでしょう」


 「パスール。お前、その娘を口説き落とせ。

  うまくすれば、王立研究所の所長になれる」


 「は? 所長、ですか?

  あれは、ゼフィラス公爵家の世襲でしょう」


 「その娘は、ゼフィラス公爵家の血を引いておる。

  ゆくゆくは研究所に入ることになるし、頭角を現せば、所長の座も見えてくる。

  うまくすれば、夫のお前が所長の座に着くこともできるだろう。

  そうすれば、研究所は我が家のものだ。

  あんな、王家の血のなんたるかもわからん花狂いの家に好きにさせる必要はない。

  いいか、家のため、なんとしてもその娘を手に入れろ。

  多少強引でも構わん。

  なんだったら、手をつけてもいい。

  少々外聞が悪いが、それ以上の利がある。


  ただし、力尽くは絶対に駄目だ。

  暴力に訴えれば、お前の命はない」


 「命って、そんな大げさな…」

 「大げさではない。

  今、王国にとって、研究所は最重要機関だ。

  その関係者に害をなしたと見なされれば、反逆罪が適用される。

  スケルス公爵家ごと、お前の首が飛ぶことになる。

  先日、その小娘にナイフで襲い掛かった馬鹿者がどうなったか知っておろう?」


 「病気で廃嫡になったと聞きましたが」


 「家の方は?」


 「伯爵に格下げ…え、それもですか?

  だって、まだ1回目の飛び級の後だったはず…」


 「植物学で飛び級した院生には、研究所から声が掛かる。

  つまり、飛び級の時点で、将来の所員候補ということだ。


  先の馬鹿者は、正面切って反逆罪にはせなんだようだが、実質、未来の研究所員(小娘)に危害を加えようとした罰なのは明らかだ。

  むしろ、家が取り潰しにならなかったのが幸運だったと言える。


  だが、二段飛び級した今、小娘は王国の未来を担う宝と見込まれていよう。

  次は、降格や廃嫡ではすまんぞ。


  …件の馬鹿者は、手を砕かれたそうだな。

  鞄を盾にナイフを受けるのはわかるが、どうしてそれで骨が砕ける?

  ともすると、小娘には影が付いて護衛しておるやもしれんぞ。

  であれば、力尽くで何かしようとすれば、その時点でお前の命が危ない。


  いいか、あくまで色恋で通る範囲だ。

  婚約者のいない娘に男が寄ったとて、研究所の損にはならん。

  お前は、あくまでもスケルス公爵家の嫡男として、侯爵令嬢を口説くのだ。

  いいな」


 「本当に、そこまでする価値のある娘なんですか?

  第一、たかが侯爵令嬢に護衛なんて、普通に考えればありえないでしょう」


 「ある。

  あの不世出の才媛(ジェラード)の孫にして、2人目の二段飛び級の才気。

  同じ才能を持っているはずだ。

  むしろ持っていないと思う方がどうかしておる。

  婚約者のいない今しかない。

  婚約者がついてしまえば、口説くことすら罪に問われかねん」


 「はあ。まあ、わかりました。

  やってみますよ」



 さて、どうも頼りないが、こればっかりはな。

 ようやくパスールが出てきました。

 前作での予告イベントはあと3つ。

 ちゃんと盛り上がってくれるといいんですけれど。


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― 新着の感想 ―
[良い点] マリーに興味なさそうなパスール。 今までの男らとちょっと違うぞ! じいちゃんはトホホだけど、孫がいるってことは、石女じゃなかったんだねー。良かった良かった♡ つーか、婿入って子供作れ…
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