設定解説 貴族制度の仕組み
この物語の舞台となっているガルデン王国では、独特の貴族制度が取られています。
特殊すぎるため、解説を置くことにしました。
書いた早々ですが、領地貴族かつ官僚貴族というパターンについて漏れていたので追記しました。
ガルデン王国の貴族には、大きく分けて領地貴族、官僚貴族の2種類があり、どちらも公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵という序列になっています。
また、官僚貴族には、更にその下に騎士爵があり、これは一代限りで名実共に世襲できません。
なお、公爵家は、王家の分家の側面があり、領地の有無にかかわらず領地貴族と同じ相続制度になります。
領地貴族は領地を持っている貴族、官僚貴族は領地を持たず王城で役人をしている貴族です。
領地貴族は、一般的な貴族の認識と近いもので、領地を持ち、そこからの税収が入り、その一部を王城に納めます。
嫡男(長男)相続制で、基本的に嫡男しか継げません。
例外として、嫡男が病弱だった場合や娘しかいない場合などに、あらかじめ次男や婿養子に相続させる旨の王の許可を取ることで、爵位を継がせることができます。
領地を治めるという前提があるので、許可については、後で説明する官僚貴族の場合よりかなりルーズです。
次に、官僚貴族です。
この作品独自の貴族制度で、言ってみれば高級官僚に与えられる名誉としての称号です。
役人には、中級・下級役人である官吏と、高級職である官僚があり、官吏が出世して官僚になるのが基本です。
ガルデン王国は王親政の国ですが、百年ほど昔、当時の王が腐敗した王城の改革として、城内から貴族を追い出し、登用試験を通った優秀な人材のみで国政を運営するというシステムに改めました。
こういった経緯から、王城で働く官吏・官僚の中でも特に優秀な者には、貴族としての爵位を与えることにしました。
そのため、官吏・官僚の俸禄(給料)は、役職に基づくものと爵位に基づくものの合計となります。
つまり、爵位を持っていた方が同程度の役職なら高給取りになります。
爵位は、優秀であれば、男爵→子爵→伯爵→侯爵と昇っていくことができますが、それぞれの爵位には規定数があり、誰かが辞めて空位ができないと昇格できません。
その代わり、代々官僚貴族をやっている家系では、何代もかけて昇格できるので、爵位が上になる傾向があります。
官吏になるには、大きく2つの方法があり、1つが王立学院を卒業する際に登用試験を受け、合格することです。
これが正規のルートになります。
元々王立学院は、優秀な官吏・官僚を育てるために前述の王が設立したもので、平民でも入学試験で一定の点数を取れた優秀な者は入学できます。
点数なので、人数に制限はありません。
また、貴族については、官僚貴族・領地貴族を問わず無条件で入学できます。
これは、貴族間での人脈作りなどを見越したもので、貴族に対する配慮の一環です。
作中で、ネイクは「貴族は誰でも合格できる」と言っていますが、必ずしもそうではありません。
ネイクは、アインの説明からそう解釈しましたが、実際には、貴族の娘には、結婚相手を探す目的で学院に通う者も多く、彼女らは勉強ができない人も多いです。
それでも、大抵は入学できる程度には優秀です。
もう1つは、王城側から、成績優秀者に誘いを掛ける場合です。
領地貴族の嫡男は、成績優秀でも、登用試験を受けませんが、王城側で、その才能を惜しんで声を掛けてくる場合があります。
こうなると、領地貴族でありながら官僚貴族でもあるという特殊なパターンになります。
このパターンだと、爵位が昇格する場合があり、なおかつ相続は領地貴族のルールによります。
つまり、嫡男は官吏にならなくても、親が昇格した爵位を継げます。
また、飛び級すると王城の方から声が掛かるというのもこのパターンで、その才能を確保したいという王城側からのアクションです。
このパターンでは、官吏を通り越していきなり官僚からスタートする場合があります。
なにしろ、才能を認められた状態から始まりますから。
官僚貴族の相続ルールです。
嫡男が官吏になり、当主(親)が退官することで、嫡男が爵位を継ぎます。
つまり、当主が王城に勤めている間は、嫡男は官吏になっても爵位を継げません。
嫡男が官吏になった直後に親(侯爵)が退官した場合、嫡男は新人でありながら侯爵ということになります。
そんなわけで、役職と爵位は一致しません。
極例外的に、嫡男がものすごくデキが良くて親の爵位以上の爵位をいきなり与えられることになった場合、例えば男爵家嫡男が子爵位を与えられ、親が男爵、嫡男が子爵という状況はあり得ます。
この場合は、親が退官する時、男爵位を返上します。
また、騎士爵は一代限りなので、親が騎士爵、子も騎士爵ということがごく普通にあります。
爵位の返上によって空位が出た場合、官吏・官僚の中から、優秀な者に爵位が与えられます。
例えば子爵位が空いた場合、王城内の男爵の誰かを子爵に上げ、空いた男爵位を別の誰かに与えます。
で、ごくたまにいきなり子爵になるのが、上で説明した例外です。
更に例外として、嫡男が大病を患ったりした場合の特別措置があります。
次男がいれば、嫡男を廃嫡して次男を跡継ぎにできます。もちろん、次男が官吏になれなければ爵位は返上です。
次男がいない場合に、嫡男に婚約者または妻がいれば、彼女が官吏になれた場合に嫡男が爵位を継げます。
逆に、娘しかいない場合、婚約者が官吏になれれば、婿養子として爵位を継げます。
これらはいずれも、嫡男が存命かつ次男(または婚約者)が官吏登用試験を受ける前に王の許可を取れた場合にのみ有効です。
家の存続のために官吏と結婚することはできません。あくまで官吏になる前に婚約して許可を受けておく必要があります。
王の許可を受けるには、嫡男の病気・怪我の状況を詳しく調査されるので、それなりに時間が掛かります。
許可が間に合わなければ、爵位は返上です。
これは、嫡男のデキが悪くて、嫡男を病死させたり仮病を使ったりで廃嫡させることを防ぐ目的です。
かつて、不出来な嫡男を病死したことにして次男を繰り上げる家がいくつも出たためです。
急死すると、その家はもう爵位返上決定です。
爵位が返上になった場合、当主(親)は、退職金の代わりに、給料より大分少ないですが、年金を一定期間貰えます。
これまでに作中で出てきた実例で説明します。
ここからは、前作「転生令嬢は修道院に行きたい(連載版)」を読んでいないと分かりにくいです。
前作後日談1で、リリーナの夫となったレイザー・フロスト男爵は、官僚子爵家の三男でしたが、優秀だったために男爵位を与えられ、新たにフロスト男爵家を興しました。
この時点で、フロスト子爵家とフロスト男爵家があるということになります。
前作から今作までの約30年の間に、フロスト子爵家は兄(嫡男)が継ぎ、レイザーはたまたま空位となった子爵位を賜りました。
ですから、現在、フロスト子爵家は2家あり、王城にはフロスト子爵が2人います。
前作8話で登場したディリウス・オーキッド侯爵は、20代半ばの若手ですが、官僚侯爵家の嫡男で、ちょうどこの頃、父の退官に伴い侯爵位を継ぎました。
まだ若手なので、爵位に見合う成果を求めてアライモの発表の事務に名乗りを挙げました。
そして、更なる功績と領地貴族との縁を求めて、セリィを娶ろうと考えていました。
セリィの父親は、領地貴族の伯爵でありながら、優秀だったために王城から声が掛かり、官僚になりました。
領地は、母親が治めています。
また、前作閑話「凡人の憂鬱」で、父が語った「爵位そのものを上げるからといって話を持ってくる」というのは、侯爵に昇格させるから、セリィとヴァニィの婚約を解消させて、別の相手と婚約させてほしいという話を持ってくるということです。
わかりにくいようでしたら、質問いただければ追記していきます。




