裏51-2 共同研究は順調(アーシアン視点)
すみません。短いです。
マリー嬢との共同研究は、順調に進んでいる。
正直言って、マリー嬢の突飛とも言える発想は理解するのが大変なんだけど、方向性が掴めれば意外となんとかなる。
なんというか、同じことをやれとか、同じレベルの発想をしろとか言われたら無理だけど、結果を見て狙いが何だったのかを想像することはできるようになったんだ。
これで、マリー嬢の話に相鎚も打てるし、それなりに話を合わせることもできるようになった。
この調子なら、共同研究の方でも成果を挙げられるような気がする。
実績を積んで、マリー嬢とも仲を深めて、王子として研究所長を狙えるくらいになれば。
「そういえば殿下、ミルティに赤ちゃんができたそうですわ」
へぇ、ミルティに。
ミルティがお母さんになるなんて、不思議な気がするなあ。
「それは早…くもないのかな? まあ、2年目ですからね。
すごいですよね、ミルティは。
誰もが無理だって思っていた小さい頃からの夢を叶えちゃったんですから。
虚仮の一念って言うのかな。
僕も見習わないと」
「そうですか、頑張ってください。
紅花の次も、もう考えてらっしゃるんですか?」
今のは、僕としては、君へのアピールのつもりだったんだけどなあ。
相変わらずストイックというか、朴念仁というか。
マリー嬢は、研究以外のことに興味はないのかな。
いや、ミルティやあの友人のことを好きなのはわかってるんだけどさ。
「赤ちゃんかぁ、可愛いでしょうね」
マリー嬢は、赤ちゃんが欲しいとかは思わないのかな。
「そうですね。ミルティに似ても、お兄様に似ても、可愛い子になりそうです。
長期休暇には、ネイクと2人で一度領地の方に会いに出掛けてみようかと思っています」
本当に手応えがないなあ。
「え? もう産まれたんですか?」
「いえ、産まれるのは秋の予定なのですが、その頃は私もネイクも行けそうにないので、その前に一度、と思っているのです」
どうしよう。実際に赤ん坊を見ないうちに「欲しいですか?」とか聞いたらバカみたいだもんなぁ。
「それでは、産まれた後でもう一度会いに行かなければなりませんね」
赤ん坊を見たら、結婚したくなるかもしれないしね。
「そうしたいのは山々ですが、出産予定は秋ですから、時間が取れそうにないのです。
さすがに産まれたばかりの子を連れて王都に出てくることはできませんし、養女に出た身で年明けに押しかけるわけにもいきませんから」
いつものことだけど、本当に冷静だよなぁ。
この人が取り乱すことなんてあるんだろうか。
「私が余計なことを言ったせいで脱線してしまいましたね。そろそろ研究の方に話を戻しましょうか」
どこまでも冷静なマリー嬢は、さっきまでの会話なんかなかったかのように、いつもどおりに研究の話を進める。
本当に理知的な人だ。
ミルティは、昔、この人が泣いてるのを見たって言ってたけど、赤ん坊の頃の話じゃないのか?
ああ、いや、ミルティの方が年下なんだから、そんなわけないのはわかってるけど。
ミルティが怪我しそうになった時、だったっけ?
それだけミルティが大事ってことなんだろうなぁ。
僕が大怪我でもしたら、泣いてくれるかなぁ。試す気にはなれないけど。
とりあえず、研究だけはなんとか取り繕えるようになったアーシアンですが、前途は多難です。
次回は、リクエストのありましたクロード視点になります。