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奇蹟の少女と運命の相手  作者: 鷹羽飛鳥
王立研究所
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42 アイーダが変です

 このところ、アイーダの様子が変です。

 いつもなら最小限にしか外出しないのに、やたらと出歩くようになりました。

 用もなく、というわけではありませんが、さりとて必要な用事というわけでもありません。

 まるで…そう、口実を作って出歩いている感じです。

 かといって、誰かに買収されて機密を持ち出しているというわけでもないようです。

 仕事自体はきっちりやっていますし、空いた時間に自分の用事を詰め込んでいるみたい。

 悪いことをしているわけでもありませんから、問い質すというのも変ですし。


 お仕事としての付き合いしかありませんから、あまり詮索してはいけませんね。

 少なくとも、仕事に支障のあるようなことはしていないのですから。

 そんなわけで、このところ、どこか挙動不審なアイーダを眺めています。




 相変わらず、織機の方も改良を続けていますが、1箇所直すと新しい問題が見付かるので、遅々として進みません。

 原因の1つとして、私と制作班との意思疎通がうまくいっていないということが挙げられます。

 私が人にものを伝えるのがうまくないのが原因ということです。

 ネイクのような飲み込みのいい人はなかなかいませんから、それは仕方ないのですが。

 逆に、私がネイクのように、相手に合わせて教え方を変えられるくらい器用ならよかったのでしょうか。

 そのせいで、オーリは毎日のように使い勝手の変わる織機と格闘しています。




 そして、そんなある日、お義父様に呼び出されました。


 「マリー、最近周囲に何か変わったことはないか」


 何もありません、と言おうとして、ふと言葉に詰まりました。

 アイーダのことは、“変わったこと”と言ってもいいのでしょうか。


 「お義父様、そのように仰るということは、何かあったのですよね?」


 聞いてみると、お義父様は頷きました。


 「先日、お前の秘書のアイーダ・ヒールズが襲われた。王城内部でだ」


 襲われた!?

 5年前の事件が頭をよぎります。

 でも、アイーダにそんな素振りはありませんでしたよね。多少挙動不審ではありますが、襲われてショックを受けたとかいう感じではありません。


 「アイーダを襲ったというのは、何者ですか?」


 「今調べさせているところだが、まだわからない。

  ああ、正確に言えば、襲われたと言うより狙われたと言うべきだな。

  彼女が持っていた資料を強奪しようとしたフシがある」


 「フシがある?」


 強奪されていないということでしょうか。


 「たまたま通りがかった騎士がいたために、事なきを得た。

  もっとも、手口が巧妙だったから、彼女自身は狙われたという自覚はないだろう」


  巧妙…ですか? すり取られるとかでしょうか。


 「暴力的な手段ではなかったということですか」


 「廊下でぶつかり、転んだヒールズを助け起こすふりをして、落とした資料を持ち去ろうとしたようだ。

  近付く前に、駆け付けた騎士が誰何したため、資料に近付くことなく逃げ去った。

  その騎士から聴取したところ、偶然通りがかったらおかしな動きをしている男がいたので注意して見ていたそうだ。

  わざとぶつかったように見えたとのことだった」


 「アイーダには護衛は付いていないのですか?」


 「ヒールズにも当然影が付いている。

  が、単に廊下でぶつかったものと思い気にしていなかった。

  念のために件の騎士を呼び出したから、ぶつかる前の行動が怪しかったことが判明したわけだ。

  残念ながら、騎士も影も、怪しい男に見覚えはないとのことで、まだ見付け出せていない。

  正体を掴むには、まだ掛かりそうだな。

  またテザルトの手の者か、それとも新型織機を狙う王国内の貴族か」


 「しばらくアイーダには重要な資料は持たせない方がよろしいでしょうか」


 「いや、持たせて構わない。影には、今後は積極的に介入するよう命じてある」




 お義父様の元を辞して屋敷に戻り、考えてみました。

 アイーダの挙動不審の原因は、もしかしてその騎士の関係なのではないでしょうか。

 名乗らなかったそうですから、その騎士を捜している、とか?

 新たな敵の暗躍です。

 そして、アイーダの挙動不審の原因は?(笑)

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] >名乗らなかったそうですから、その騎士を捜している、とか? えーーー!! アイーダ、遅咲きの恋!? マリー、自分のことにはトンと疎いのに、なんでそっち方向に考え及ぶのだろうか。不思議。…
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