裏39-5 幼なじみと結婚(トロリー視点)
裏9話以来となる、ネイクの幼なじみトロリー・サントス視点です。
やっと書けた。
幼なじみで、僕の初恋の相手だったネイは、王立学院を卒業すると同時に、婚約者のアイン坊ちゃまと結婚してしまった。
ドリスト商会の旦那さん経由で聞いたところでは、お城で、王様から結婚を祝福されたそうだ。
しかも、その場で貴族になったって。
アイン坊ちゃまは子爵になったから、今、お城にはヒートルース子爵が2人いることになる。
僕は、小さな頃からネイが好きだった。
ネイが引っ越していった後も忘れられず、学院に入れば再会できると信じて頑張ったし、実際、学院でネイと再会できた。…けど、ネイはもうアイン坊ちゃまと婚約してた。
幼なじみとして、なんとかネイの近くにはいられたけど、それだけだ。
ネイの回りには、いつも貴族がいる。
ネイは飛び級したくらい優秀だったから、官吏を目指す貴族達が教わりに来たんだ。
貴族にものを教えるなんてことができるネイもとんでもないけど、ネイはその貴族達から「ネイクミットさん」とか「ティーバ嬢」とか、敬称を付けて呼ばれてた。
貴族に。
2年になると、ネイの傍にはいつも公爵家のお嬢様がいるようになった。
気に入られたって言ってたけど、貴族の中でも一番上の公爵家のお嬢様に気に入られるってどういうこと? 本当にお嬢様と愛称で呼び合ってるなんて…。
後でお嬢様が飛び級してたけど、それ以前から2人はよく一緒にいた。
ネイの周りでいったい何が起きてたのか、僕にはわからない。
ニコル坊ちゃまに襲われたネイは、公爵家の護衛のお陰で助かった。
アイン坊ちゃまは、結局何もできなかったのに、学院では「身体を張って婚約者を守った」ともてはやされた。何もできなかったのに。
ネイはアイン坊ちゃまに感謝していて、とてもそんなことを言える状態じゃなかったけど。また嫌われたら、今度こそ許してもらえそうにないし。
3年になると、僕はネイとほとんど会えなくなった。
僕は講義についていくのがやっとの劣等生だし、ネイは貴族に教えられるほどの優等生で、講義も別になって、話しかける口実さえなくなっていった。
最後の2年は、ほとんど口もきいていない。
僕は、もう、ネイにとって昔一緒に遊んだ幼なじみでしかないってことがよくわかった。
それでもなんとか学院を卒業できるだけの成績は取れた。
卒業して家に帰った僕は、まるで優等生だったかのような扱いを受けて居心地が悪かった。
ネイや公爵家の2人のお嬢様を見てきた僕からすれば、優等生なんてとんでもない、やっと卒業した劣等生もいいところなのに。
そして、一番驚いたのは、僕の結婚が決まっていたことだった。
相手は、バルジ商会の三女で幼なじみのスピカ。
大人しい、悪く言えば気の弱い子だった。結構泣き虫だった気もする。
バルジ商会はドリスト商会と関わりの深いところだから、多分ドリストとの縁を強めるための政略結婚だ。
結婚なんてしたくないけど、商売のためだし、それに…もう、ネイとは結婚できないし。
仕方なく、僕はスピカと結婚することにした。
結婚して、夜、スピカと2人になった時。
スピカは僕を見上げて言った。
「トロリーは、ネイが好きだったんだよね」
突然そんなことを言われて驚いている僕に、スピカは続けた。
「トロリーがネイのことばかり見てたの、知ってた。だって、あたしはトロリーのことずっと見てたから。ネイがいなくなった後、元気なかったのも。王立学院に入るために勉強頑張ってたのも。
あたしのこと好きになってくれなくてもいいから。ネイのこと忘れられなくてもいいから。あたしをトロリーの奥さんにしてください」
驚いた。僕がネイのこと好きだって知られてることも、スピカが僕を見てたことも、僕は気付いてなかった。
「スピカ…、僕は…」
「いいの。ネイの次でいいから。あたしを奥さんにして。ずっと傍にいさせて」
「スピカ…」
1年後、スピカが息子を産んだ。
正直、僕がネイのことを忘れられたかと言われると、自信がない。
でも今、僕は、僕の家族を大切にしていこうと思っている。
というわけで、実に10か月ぶりのトロリー登場です。
当時、感想への返信で「トロリーを好きだった女の子もいたんですけど、トロリーは気付いていません」と書きましたが、それがこのスピカです。
トロリーがネイクを好きなことを知りながら、それでもトロリーに嫁ぐことを夢見てきました。
幸い、家がそれなりだったので、結婚にこぎ着けました。
今回、一気に1年も進んでますが、これはトロリー限定で、次回40話は、39話のすぐ後になります。




