表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/64

『七不思議』 その二

「あ、あの、私の一存でそんなに色んな鍵は、貸し出せないです」


 モニカ先生は眉を下げて困り顔で言った。この、くるくるした金髪の彼女は、我が錬金術部の顧問でもある。


「えー!! なんでー!!」

「な、なんでと言われましても、決まりですから」


 丸眼鏡の奥で自信無さげな青い瞳が、きょろきょろと何かを探すように忙しなく動いている。たぶん、他の教員に助けを求めようとしているのだろう。あいにく、第二職員室の中は閑散としていて、彼女の救援要請に気付いた人は今のところ居ない。


「モニカちゃんのケチ!!」

「け、ケチって……だって、仕方ないじゃないですか。私だって、錬金術部の活動に、協力したいです。でも、まだ二年目の下っ端には、できる事に限界があるんです」


 モニカ先生はしょぼんとしていた。気弱で優しい彼女は、生徒たちに親しまれていて、気安く『モニカちゃん』呼びしたりタメ口で喋る生徒もいる。これは親愛からくるもので、彼女がなめられている証左ではない。たぶん。


「こら、アン、先生にも事情があるのに、ケチと言ってはいけませんわよ。すみませんモニカ先生、アンがとんだご無礼を」

「い、いえ、無礼だなんて。私が役立たずなのが、いけないんです」

「役立たずなんて、とんでもないですわ。そうですわね、逆に、モニカ先生の権限で貸し出していただける鍵は、どこの鍵か、教えてくださいますか?」

「わ、私が貸し出しできるのは、社会科資料室の鍵ですね」

「社会科資料室に、七不思議なんてない!! つまり、借りても役に立たない!! はぁーあ、いきなり今日の活動が頓挫しそうだよ」

「うぅっ、す、すみません、私の力不足で……」


 モニカ先生は今にも泣きそうな顔できょろきょろしている。


「アン、あまりモニカ先生をいじめちゃダメですわよ。……けれど、体育館や音楽室に入れないとなると、七不思議の調査ができませんわね。困りましたわ」

「このあふれる調査へのやる気を、どこにぶつければいいんだー!!」

「どうした、錬金術部? 困りごとか?」


 挙動不審なモニカ先生に気づいてくれたのか、はたまたアンさんが騒ぎ散らすのを聞いていられなかったのか、男の年嵩の先生が声をかけてきた。


「体育館と音楽室、それから美術室の鍵をお借りしたいのですけれど」

「ほう、なんのために?」

「錬金術部の活動です!!」

「ふむ……よし、ここは俺が責任を負って貸し出すことにしよう」

「ほんとですか!! やったー!!」

「ただし、一つ条件がある。モニカ先生、この子たちが鍵を返却するまでの間、目を離さず監督していてください。一応、念のために」

「あ、は、はい。わかりました」

「ありがとうございますわ」

「分かっているとは思うが、備品にいたずらしたり壊したりしないようにな」

「はーい!! 先生、早く鍵、貸してください!!」

「そう焦るな。今取ってくる」


 男の先生は鍵を取りに職員室の奥へと分け入った。


「モニカちゃん、この学校の七不思議って知ってる?」

「な、七不思議なんて、知らないです。知りたくもないです。そ、そういうのは苦手なんです」


 モニカ先生はぷるぷる震えている。先生には悪いけど、その様子は怯える小型犬に見えた。


「ふーん……にししっ」


 アンさんは悪い顔をしていた。モニカ先生を標的にしているのは明白だ。人をからかうことが大好きな彼女にとって、びびりなモニカ先生は最高のカモなのだ。


「ほら、鍵だぞ」

「ありがとうございます!! よし、モニカちゃん、行くよ!!」

「えっ、ま、待って――」


 半ば鍵をひったくり、座っていたモニカ先生の手を取り強引に引きずって、アンさんは職員室から出て行ってしまった。


「アン! はぁ、もう……申し訳ありません、不躾な子で。鍵を貸していただき、ありがとうございますわ」

「ははっ、副部長も大変だな。あんまり遅くなるなよ」

「はい。重ね重ねありがとうございます。では、失礼いたします」

「失礼します」


 わたしとシャリーさんは職員室を後にした。

 職員室の入り口で待っていたメグちゃんとショコラちゃんは、困惑した顔をしていた。


「あぁ、シャリーさん。ついさっき、アン先輩がモニカ先生を引っ張って行ってしまったのですが」

「あの子は気が早くてかないませんわね。わたくしたちも追いかけましょう。さぁ、行きますわよ。七不思議の調査に出発ですわ!」

「れっつご〜、ですね〜」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ