02.逃亡のワケ(2008.05.05作)
まともにライトを見てしまったせいで目はチカチカ、オマケになんだか頭がクラクラする。シュウはそれを見て取ったのか、一時の休息を許してくれた。
「あからさまなのはダミーだ。だが、その近くに必ずヤツは潜んでやがるから注意しろ!」
「え? ……あ、うん」
――ヤツって、誰?
つい口にしそうになった疑問を飲み込む。僕が何か聞く度に怒鳴りつけるんだから、質問するだけ時間の無駄だ。気にはなるが、たぶん警備員のことだろうと自己完結させた。
さて、そろそろ僕の目も、また暗がりになれてきた。始終周囲に注意を払っていたシュウにその旨を伝える。
「それじゃあ、行くぞ?」
ひとつ静かに頷いてみせた後、僕は合図通りに物陰を出た。ところがその瞬間、そこかしこが赤に染まり警報音が響き渡る。
「な――ッ!? お前、立ったら見つかるって分かんねえのかよっ!」
人の気配が無いから立ち上がっただけの僕としては、何が何だか判らない。とりあえず確かなのは、シュウだって今は立っているということだった。
――それにしても。
「監視カメラの話なら、ちゃんとそう言ってくれよ……」
「バカ! そんくらい察しとけ、バカ!」
何も、二度もバカ呼ばわりしなくても……。
ジリリ、ウーウーという騒々しさに混じって四方から足音が近付いてくる。そして次々に現れるのは、スーツやタキシード姿の男達と、同じくスーツやワンピースにフリル付きのエプロンをした女達。各々、〝物騒な武器〟だの〝微笑ましくも冷や汗ものな道具〟だのを持っていた。
「えー、お嬢様方は完全に包囲されておりますぞ!」
旧式の拡声器でも使っているらしく、その声には時折ノイズが混じっていた。僕とシュウは顔を見合わせる。
『おじじね……』
『うん、じいやさんだ』
「大人しく降参してお戻りくだ……!」
あ、むせてる。年甲斐もなくそんなことするからだよ。
僕は別に降参してもいいけれど、シュウ――彼女はすごい勢いで顔を横に振っていた。お嬢様になるってのも、大変なんだろうなぁ。
「ずぅえっっったいに、イ・ヤ! あんなにっがいだけの薬、そう何度も飲んでられるか!」
前言撤回。立場がお嬢様になっただけで、中身はシュウのまんまだ。
思わず漏れ出たため息を吐ききってから、僕は彼女の腕を掴んでじいやさんの所に連行することにした。
(2008.05.05作)
■作品メモ
お題「監視カメラ」で書いたもの。500字にまとめきれなくて出来はかなり微妙。多少の修正と追記をしたものの、それでも微妙という……ううっ。