16.空っぽの月(2008.09.18 / 童話)
――月が《満ちる》とヒトは言う。
そんなもの、私に言わせれば長老達の戯言と同じだ。芽吹きの刻、老成の刻。実りの刻も、眠りの刻も、いつだって月は《カラッポ》なのだから。
さぁ、お前の満ち足りぬその憤りを私に注ぐがいい。全てを受け入れ、お前の代わりに晴らしてやろう。
今宵も狂気と共に――
猛々しく天へと咆哮を放ち、〝俺〟は森を駈ける。
(2008.09.18)
* * *
● 人 物 設 定
【狼男(俺)】
二十代半ばほどの歳若い男。元はただの人間。数年前の人狼討伐の際に呪いを受け、皮肉にも人狼の身となった。
【長老】
人狼達の中でも〝知恵が働き知識の深い者〟がそう呼ばれ、どの群れにも必ず3人は居る。
● 背 景 設 定
【人狼】
満月の日に人喰い衝動に駆られ、それを抑えつけるべく吼え猛り、一晩の内に3山をも越える。その間、出会ってしまった不運な人間は生きて帰れない。
【人狼になったワケ】
幼少の頃、盗賊に追われ逃げ込んだ森で人狼に救われる形となったが、盗賊たちの悲惨な末路を目撃してしまう。その後、歳若い女性に保護され彼女の子どもと数日過ごした頃、2人もまた人狼だったと知った主人公は村に帰り人狼の住処を告げ、人狼母子は人狼狩りに遭う。
それから十数年経ったある日の人狼狩りであの女性の夫と出会い、彼が死の間際に呪いを主人公にかけ人狼にした。
● 考 え た 事
人狼になった経緯は別段深く語らないが、あの女性が実は人間だったことはどこかで読み手に明かす。
主人公が女性に恋をし、一度は結ばれたものの、人間から自分を庇って彼女が死んでしまう。――物語の最後で明かすのは、主人公が本当に受けた呪いが『最愛の人を人狼の身であるが故に失うこと』。
ちなみに今回は『狼男は、月の無念を晴らすべく作られた可哀相な存在』というコンセプト(?)で。
■作者めも(1)
後になってテーブルトーク・ゲームの『汝は人狼なりや?』を知ったから、それをモチーフには考えてない。書いてみたいけどね、推理しながら楽しめる人狼小説。
(2015年2月)
■作者めも(2)
先日、〆切ギリギリで応募した『共幻文庫 短編小説コンテスト2016』の第二回(お題:復讐)の作品は、これを昇華したもの。急に思い出して書きたくなってね……。
(2016年6月4日)




