06.私のカケラ(2008.05.27 / ファンタジー)
――ほんの一瞬。その僅かな時間にも、自分が自分でなくなっていく。
それはまるで、〝私〟を形作っていた何かが、知らずぽろぽろと剥がれ落ちていくようで少女は嫌だった。
「何か……何かが足りない気がするの」
今日は何を失くしたんだろう? 彼女の胸には空虚さだけが満ちる。
――身の内から消えていくのは思い出。記憶という名のカケラ達。
今、失ったのは何ですか? でも、それが〝在った〟ということさえ、もう覚えてなんかいないだろうね。
「ごめん……これが、決まりなんだ」
謝ってはみても、少年のその胸から罪悪感が消えることはない。
〝忘れたくない〟少女と、〝記憶を消したくない〟少年。この二人の心が救われることは、決して無いのだろうか?
――それは記憶を巡る、悲しくも優しい物語。
(2008.05.27)
* * *
● 人 物 設 定
【少女】
長く記憶を保てない、元〝病み人〟の女性。来月、23の誕生日を迎える。(少女じゃないとか言わない)
4年前の治癒処置の際、記憶が部分的に欠けていく後遺症が残る。そのせいか、忘れてしまうことが嫌で嫌でたまらない。
【少年】
〝癒やし人〟として働く青年。先月、19になったばかり。
当人以外にとって不都合な記憶をも消すことに、疑問を持っている。
【細身の男】
機関に属しているのに、相手が癒やし人というだけで嫌悪すら越えて憎悪する。
毎度、少年に喰って掛かることと何か関係が……?
● 背 景 設 定
【病み人】
ある記憶を持っていることで病んでいく者の事。医学では、一時的に持ち直す程度の治療しかできない。
【癒やし人】
記憶を消す能力を持つ者の事。病み人を苦しめている記憶を消し去るため、能力者達は〝癒やし人〟と呼ばれている。
【機関】
国が癒やし人を取りまとめている組織。癒やし人の派遣や、その能力についての研究をしている。
● 考 え た 事
細身の男は少女の義兄で、義妹に後遺症が残った原因が〝無理に記憶を消されたから〟だと知っている。ちなみに、癒やし人に少女の治癒を依頼したのはこの男。
少年の癒やし人歴は7年、と長め。後遺症が残った少女のことは、当時、噂で聞いていた。
機関の研究には暗部が多々あり、囚人を使っての人体実験も陰で囁かれているが、確たる証拠はまだ見つかっていない。細身の男が属しているのは、その暗部を探るため。
■作者めも
「里見しば」さん作のゲーム『TRUEREMEMBARANCE』(3DS版も出てます)や、「かずはじめ」氏の『MIND ASSASSIN』が好きだから、多少なりとそれぞれをモチーフに描いている部分はあると思う。
(2015年2月)




