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古い掌編集  作者: あずま八重
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30.not for you(2011.02.14作 / SF)

 丁寧な包装を、不器用なりに慎重に解き始めて三十分は経とうかという時分。やっとお目見えした最深部をしげしげ、まじまじと食い入るように見つめる。――そんな眼力にさらさなくとも、実際それは食べられるものなのだが。

 感慨深さに震えの止まらない手と身体が妙に煩わしくて、ふいに叫びたい衝動に駆られた。ところが、時間と場所を考えれば得策とは言えず、しかも何と叫んでいいか、どう叫べばいいかが分からない。

 言葉が浮かばないのも、ひどく煩わしいものなのだな。と、独り苦笑する。

 どれだけ今日というこの日を夢みたことか。夢に見すぎたせいなのか、困ったことにどうにも食べる気が湧かないほどだ。

 夢の中の彼女はいつも泣いていた。ほろほろと表情無く泣きながら、ただ「ごめんなさい、ごめんなさい」と誰かに謝り続ける。

 ――やめた。自分の夢なんて、どうせ詰まらないちっぽけな欲望だ。


『解凍せずにお召し上がりください』


 そう冷たく言い放つ傍らの紙を手に取り、破り捨てる。目覚めた彼女は僕を見て何と言うだろう?

 湧いた興味のままに、冷凍保存されていた〝生きた〟チョコを解凍した。


(2011.02.14作)

■作品メモ

 これも「第二回500文字小説大会」参加作。とてもお題が『バレンタイン』とは思えない。舞台は絶滅の危機に瀕したニンゲンを食料とする未来で、語り手の彼は〝人外〟だから、ファンタジーというかSFというか……一応SFってことにしとこう。

 人型で人喰いといえばワーウルフ(人狼)くらいしか浮かばないけど、話をふくらませるなら吸血鬼もいいなと思う。ほら、血を飲むだけじゃなくて心臓も食べるって聞いた覚えもあるし。

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