表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
古い掌編集  作者: あずま八重
▼作者お気に入り
20/36

25.帰省(2009.08.11作 / 文学)

 その部屋に入ると、夏らしい香りが鼻をくすぐった。


 周りをぐるりと見回せば、足元のすぐ横に渦を描いた緑色。その一番外側の先端からは、少し濁りのある白い煙が細く細くでている。

 昔から蚊取り線香――というか、線香の匂いが私は好きだ。母は「湿っぽいから嫌い」と言って、あまりこの部屋に近付こうとはしなかったけれど。

 部屋の真ん中まで歩を進め、その場に静かにあぐらをかいた。


「ただいま」


 ろうそくを灯すでも、お線香を立てるでも、ましてやお焼香するでもなく。蚊取り線香の匂いが控え目に満ちるこの部屋で、(りん)も鳴らさず、手も合わせず。ただポツリと、帰った報告をする。母が微笑む仏壇にさして近付きもしないのは、それこそ〝湿っぽい〟と思ったからだった。


 せわしなく鳴きたてる蝉の声に混じって、どこからか夏らしい涼しげな風と音が届いた。

 ――裏庭の井戸に下ろした西瓜も、そろそろ冷えている頃だろうか?


(2009.08.11作)

■作品メモ

 少しは加筆しようかなと思うのですが、今もかなり好きな作品なのであまり変えることもなく終わります(笑)

 冬シーズン真っ只中でも、これを読むたび風鈴の音が耳の奥に聞こえて「あの夏」を感じます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ