表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
古い掌編集  作者: あずま八重
▼作者お気に入り
19/36

22.親友《とも》(2009.02.20作 / 青春)

「なぁ、聞いてくれよ」


 目の前に立ち尽くす親友は、昔と変わらぬ自嘲気味の笑顔でそう切り出した。

 俺は特に相づちを打つでもなく、話の続きを待つ。聞いてくれと言っておきながら、彼はため息を二度吐いた頃になって話し始めた。


「あいつがさ、最近またお前のことで泣くんだ」

「俺のこと?」


 ――なんで今頃。別れてからもう十年になるってのに。

 彼も同じことを考えていたらしく、あれから十年も経つのになぁと寂しげに呟く。

 十年と言えば結構な時間だ。現に、冴えない中坊だった彼が、スーツを着慣れた社会人になっているのだから。


「忘れられないんだろうな。……まぁ、『忘れたい』なんて俺もあいつも言わないし、思ってもいないけどよ」


 初めよりも寂しさの増した笑みを浮かべた後、彼は屈んで手を合わせた。沈黙がなんだか痛くて、親友の脳天にチョップを入れてやる。当然、手応えもなくすり抜けたが、気にしない。


「じゃあ、またな」

「おう。成仏してなけりゃな」


 自分が見えていない昔の親友に、聞こえない皮肉を投げた。


(2009.02.20作)

■作品メモ

 「第一回500文字小説大会」に寄稿した二作目。一作目は『死者の街』。

 今作のテーマを《温かな皮肉×読者騙し》にしたせいか、仕上がりがとても爽やかで気に入ってる。得票数14で1位……うむ、懐かしい栄誉じゃ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ