22.親友《とも》(2009.02.20作 / 青春)
「なぁ、聞いてくれよ」
目の前に立ち尽くす親友は、昔と変わらぬ自嘲気味の笑顔でそう切り出した。
俺は特に相づちを打つでもなく、話の続きを待つ。聞いてくれと言っておきながら、彼はため息を二度吐いた頃になって話し始めた。
「あいつがさ、最近またお前のことで泣くんだ」
「俺のこと?」
――なんで今頃。別れてからもう十年になるってのに。
彼も同じことを考えていたらしく、あれから十年も経つのになぁと寂しげに呟く。
十年と言えば結構な時間だ。現に、冴えない中坊だった彼が、スーツを着慣れた社会人になっているのだから。
「忘れられないんだろうな。……まぁ、『忘れたい』なんて俺もあいつも言わないし、思ってもいないけどよ」
初めよりも寂しさの増した笑みを浮かべた後、彼は屈んで手を合わせた。沈黙がなんだか痛くて、親友の脳天にチョップを入れてやる。当然、手応えもなくすり抜けたが、気にしない。
「じゃあ、またな」
「おう。成仏してなけりゃな」
自分が見えていない昔の親友に、聞こえない皮肉を投げた。
(2009.02.20作)
■作品メモ
「第一回500文字小説大会」に寄稿した二作目。一作目は『死者の街』。
今作のテーマを《温かな皮肉×読者騙し》にしたせいか、仕上がりがとても爽やかで気に入ってる。得票数14で1位……うむ、懐かしい栄誉じゃ。