表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
古い掌編集  作者: あずま八重
▼恋詰め
18/36

29.loving U(2011.02.06作)

 すごく。ピタリとくる表現が見当たらないくらい、すごく――横断歩道を渡ってこちら側に来た彼女は、驚いた顔をしていた。


「ただいま、美弥」


 行く手を遮られたこと。急に声をかけられたこと。そして、俯かせていた顔を上げて見た人物。そのどれもに対して驚いたのかもしれないが、その要因の三割くらいは〝僕〟であればと小さく願う。


「ごめんな、誕生日に間に合わなくて」


 小さく横に振れ始める顔と、今にも泣き出しそうに変わっていく表情にそう声をかけて、あと一歩の距離を縮めて抱き寄せた。


「れ、連絡してよ……なんにも、用意してな……っ!」


 僕の腕の中で泣きだした彼女は、か細く文句を言った。

 そんな美弥が愛おしくて、抱きしめる腕に少しだけ力をこめ、頭をポン、ポンと叩いてなだめる。いつか、子どもをあやす時もこんな穏やかな気持ちなんだろうなと、想いを馳せながら。


 幾分か落ち着いた美弥を解放して、涙を拭っている手をつかむ。キョトンとする彼女をよそに、そっと引き寄せた左手の薬指に――


『どうか、1日でも長く、共に居られますように』


 バレンタインの当日。そう願いを込めて、長い、長い、キスをした。


(2011.02.06作)

■作品メモ

 これも「第二回500文字小説大会」の参加作。お題がバレンタインだからって、チョコだらけじゃ面白くないよなーと思って捻ったらしい。読み返せば読み返すほど駄作度が上がるような……浮かんだ光景だけを頼りに物語に仕上げるのは、やっぱり難しい。

 チョコレートを食べれない子にとってのこの時期は、毎年、息苦しい季節の1ページになってるそうな。ちなみに私は、あげずに食べる派。形だけ旦那にあげて、結局は自分が食べちゃう悪食っぷり。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ