28.unHAPPY?(2011.01.30 作)
「タケ、喜べ! 今年は月曜だぞ!」
「誰が喜ぶか、このど阿呆ッ!」
1月も後半に入って増え始めた例の特設コーナーを前にして、いきなり色めき立ったマツを怒鳴りつけた。
別に怒っちゃいない。まだ早いとか苦い思い出があるとかそういうこと以前に、このイベントが大嫌いってだけだ。
呆れ加減に「なぁ」と呼びかけられて、倦怠感あらわに「あん?」と応えてやる。
「おまえさぁ。体質とはいえ、人生の半分は無駄にしてるよな」
「……よけーなお世話だ」
ここ3年のバレンタインは休日。そのおかげで多少なりと学生ライフを平穏無事に過ごせていたわけだが、皮肉にも高校最後の今年は平日。――嫌な予感がしてならない。
「ふけるかな。あの濃厚で殺人的なニオイから非難ってことで」
ため息混じりに出したその言葉に、マツが困ったような顔をする。理由を聞けばなんとも歯切れの悪い、およそ返答ともつかない言葉が並んだ。
「ああー、ったく! 言っとくがお前にゃやらんぞ!」
ニヤリと笑うマツは気色悪いが、この甘党は私宛てのチョコを喜んで回収してくれる。それが〝私からの〟でなくても。
――だから、なおさら嫌いなんだよ。
(2011.01.30作)
■作品メモ
「第二回500文字小説大会」の参加一作目。お題が「バレンタイン」ってことで、ちょこっとだけラブコメ風に……なってないな。
姐御肌で同性に人気の主人公・タケコと、その腐れ縁で家もお隣の幼馴染み・マツオ。そして、作中未登場のウメコ達の織りなすラブ……うん、やっぱりギャグ街道まっしぐらだな。