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11.恋はイチゴ(2008.08.02作)
初恋は実らない。――いつだったか誰かが誰かにそう言っていたのを覚えてる。
それは、どうして? モモやクリ、しいてはカキのように、実るまでに時間が必要とでも言うつもり?
私はイチゴ。甘酸っぱくて、大きなイチゴなの。だから恋だって……それがたとえ初恋だって、一年待たずに必ず実る。絶対。絶対に!
――そう私は信じてた。
だけどその誰かの言葉は正しくて、私の初恋は実を結ばずに散ってしまった。
せめて、あの子だけでもイチゴであってほしいと願う。こんな私にさえ優しくしてくれた、あの子の恋だけは……。
「甘酸っぱいのも美味しいけど、私はモモみたいに甘くて柔らかくて可愛いのを実らせたいかな」
腕を組んで首を傾げ、一つ唸ってみせてから彼女はそう笑ったのだけれど。
(2008.08.02作)
■作品メモ
7月のお題「初恋」で書いた……んだけれど、書ききったのは8月にはいってから。当初のタイトルは『恋は苺』。
彼女たちの名前も、きっとあんな感じかな。山野一子とか、三枝百恵とか。