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古い掌編集  作者: あずま八重
▼テーマ系:ホラー風味
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20.死者の街(2009.01.28作)

 ――夜が呼ぶ。だから、僕は夜の街をさまよっていた。


 昼間の喧騒が幻だったとでも言うように静まり返るこの街には、〝死者の〟という形容がよく似合っていた。なにしろ、ヒトの息遣いすら感じられないのだから。

 赤みを帯びた満月が、酷く不気味な光を街に浴びせる。けれど、そんなものは至極どうでもよくて、僕はただただ、この静かな街を眺めていた。


「――素敵な街でしょう?」


 ふいに聞こえたその問いかけを、僕は呆けた頭のまま無視をする。声の主は視界に居ないが、後ろの、さほど遠くない位置にいるようだ。

 無反応の僕がおかしかったのか、男とも女ともつかない若い声は含み笑いをこぼして続けた。


「ボクが作ったんですよ」


 その言葉の真意は分からない。だが、背筋が薄ら寒くなる響きが混じっていたのは確かだった。

 僕は半ば衝動的に後ろを振り返る。すると――


「やぁ、〝ボク〟だった人。……いや、もうヒトですらないのか」


 そう言って、目の前の〝僕に成り代わった悪魔〟がせせら笑った。


 ――死者が呼ぶ。だから今もまだ、僕は死者の街をさまよっている。


(2009.01.28作)

■作品メモ

 「500文字小説大会」という企画の第一弾用に書いたもの。描きたいテーマが曖昧で、書いた本人としてはビリビリ破りたい部類の出来。投票結果によれば、2票いただいて6位だとか……なぜ2票も。

 ちなみに、同企画に出したもう一作『親友とも』は、ちゃっかり1位をゲット。

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