1/36
01.私とコドモ(2008.04.25作)
いつのことか、それまで毎日のように来ていた〝あのヒト〟が来なくなった。
その次の日も。そのまた次の日も。ここにあのヒトは来ない。
季節が幾度か巡った頃、今度は小さなヒトが私の下へ来るようになった。この小さなヒトは、コドモと言うものらしい。
コドモは、あのヒトと同じように私に話しかけてくる。何度も出てくるのは、〝キレイ〟という言葉だ。
「あなたはキレイね」
「きょうもキレイだよ」
繰り返されるその言葉がなんとも私には不思議で。だからなのか、その日、今度は私からも話しかけてみようと思った。
『そんなに私はキレイ?』
直前までずっと私に話しかけていたコドモが、急に黙りこむ。ほんの少し経ってから、コドモは答えてくれた。
「うんっ、キレイ!」
私にもココロが有るかは判らない。でも、確かに私は、感触が無いのにやわらかくて、温かいものを感じていた。
(2008.04.25作)
■作品メモ
いつだったか書いたものをふと思い出して、うろ覚えのままに書いてみたもの……らしい。後作『ボクとキミ』と同じ世界観で、「私=桜の木」「ヒト=木の見守り人」だったりする。