04話 式典式と仲間紹介
『さま……かみ…さま』
なんだ?何処からか声が聞こえる。無機質な声だが、何故か感情があるような……。
『起きてください!!上条様!!』
「いっ! てぇ!!」
目がさめると、ボロボロに錆びた剣が、淡い青色の光を放出しやがら宙に浮かんできた。
そしてこの痛みっ!! 恐らく持ち手の部分で俺の腹部を強打したのだろぅ……!
「おい、フラエン! もっとマシな起こし方は無かったのか!!」
『何度も何度も呼びかけて起こそうとしましたよ!! それでも起きない上条様が悪いんじゃないですかっ!! てか、フラエンってなんですか!【フラグ・エンペラー】の略ですか!?安直過ぎます!』
ぐぬぬ、悔しいがフラエンの言う事に対して反論出来ない!俺は昔から、一度寝てしまったら中々起きない体質持ちだ。
「はぁ〜、わかったわかった。俺が悪かったよ。それで?何でこんな朝早くから起こしたんだ?」
宿に設置されてる木製の時計を見ると、現在午前9:40分
この世界では、時間の概念は俺が元居た世界と同じらしい。ゆえに時計もあるからこの世界に適応するのも時間の問題だろう。
それにしても、寝ても良い時間のはずだ。はわぁ〜眠い。完徹2日の昼間ぐらい眠い……。
『まさかとは思われますが、上条様?今日が何の日かお忘れではありませんよねぇ?』
「あぁ、思う存分に寝まくる日だ!!」
『ちーがーいーまーすーっ!! 今日は勇者様方の式典式! 今日の午前10:00時からです!ここまで言われないと思い出せないんですか!?』
……式典式?
「あぁぁぁあ!!! 忘れてたー!クソ!ここから地図に記された場所までどのぐらいかかる!?」
俺は木製の机に置いていた地図を乱暴に拾い上げ、形相な表情を浮かべながら地図を確認する!
「この宿から徒歩10分か……!急がないとヤバそうだな。
てか、この異世界に来てから歩いてばっかだな、おい! 異世界なんだから魔法の力でどうにかしてくれよ!ワープとかさぁ!!」
などの愚痴を垂れ流しながら急いで宿を出る準備を始める。
学校のある日はいつも、学校に間に合うギリギリの時間まで寝ていたおかげで、歯磨き、洗顔、食事などを人並みはずれた速度で済ませる事が可能だ!
朝に行う工程の全てを5分で済ませ、机に置かれた500マネーと地図をポッケに乱暴に押し入れ、フラエンを鞘に収めた。
『はぁ〜、転ばない様、注意してくださいね?』
ーーファーフェル国王城(南城)ーー
現在の時刻は午前9:55分。遅過ぎず、早過ぎず丁度良い時間帯だ。
この城はファーフェルという名の国王が保有する城らしい。
地図をよく見てみると、わかったことがある! 昨日俺がいた国王の間という場所は、東西南北に保有しているファーフェル国王城の北城にあたるらしい。
人類が危機に晒せているー!皆切羽詰まっているー!と、国王の間で会った漆黒の騎士は言っていたが、この南城は随分と金や銀などの鉱石を贅沢に利用しているように見える。
こんなのに金使うぐらいなら、もっと良い装備や大金渡せよって思いますね。
それに、南城前には沢山の人だかりが出来ている。流石は勇者の表彰式と言った所か。皆笑顔に包まれているように受け取れる。本当に人類は危機に陥っているのか疑いたくなる程にな。
「あ〜えっと、お前勇者だよな?」
背後から傭兵と思われしき人が、俺の肩を掴んで来た。
……てか、なんだコイツ。勇者様に向かって失礼な態度を取る野郎だ。
まぁ、俺も出来た人間だ。少しぐらいの無礼は許そうではないか!
「あぁ?そうだけど、何か様か?」
「もうすぐ式典式が始まる。色々と準備しないと行けないから付いて来い」
そう言い放ち、ズカズカと南城の裏口まで歩き出した。
いや、少しぐらいの無礼は許そうと思っていたが、罪人みたいな扱いしやがって……。
『上条様って、勇者なんですよね?なんだか随分と雑な扱いされていませんか?』
「あぁ、俺も丁度そう思っていた所だ。まぁあの傭兵はマトモな環境で育たなかったんだろ。一々取っ掛かるのも面倒だし、大人しくアイツについて行くか」
裏口に入ると、数人入ると予想される大きめのカプセルだけがある空間だった。
「このカプセルの中に入り、この城の最上層階に向かう。そこに城の前に集まってる一般大衆でもよく見えるように建造された、国王の宣言式などに使われる場所で、お前と勇者様の式典式を行う事になっている。いいな?」
「はいはい、さっさと行こうぜ」
俺の事を邪険に扱うこの傭兵とできるだけ話したくない為、そそくさとカプセルの中に入った。てか、俺も勇者なんですけども。いや、一般傭兵並みのステータスだけどさ。
それにしても、やはり異世界だな! ワープ魔法を施されているカプセルに乗れるなんて! ワープ魔法があるなら、1時間もかかる道筋を歩かせるなとは思うけど、まぁ終わった事をグチっても仕方がない。
やはり魔法ってのは! こういうのが……ってあれ?もう着いた?
チンッという軽快な音を出しながら、カプセルの扉は開いた。目に広がったのは床や壁がコンクリートで出来た一本筋の廊下であった。
そこには俺の事を邪険にする傭兵と同じ格好をした人が4人と、黒ローブがコチラを見ながら立っていた。
「待っていたわ、上条さん。式典式の流れについて簡単に説明するから聞きなさい」
「えーと、黒ローブ、じゃなく! 黒死蝶さん?アンタ敬語じゃなかったっけ?」
「……そこから説明する必要がありそうね」
黒ローブから話を聞いた限り、こういう事らしい。
俺と同じ魔方陣で召喚された、もう一人の勇者。如月聖人が世間では真の勇者となっているらしい。
何故二人も召喚されたかどうかは、未だに原因が不明らしいが、聖人が真の勇者になった今、俺はサブ勇者という職業になっている。
サブ勇者は、世界中にごまんといる冒険者と同じ地位で、尊敬もされなければ、見下される事もない。中途半端過ぎる職業だ。だから先程の傭兵や黒ローブたんもタメ口で俺に話しかけているって訳だ。
だが一応勇者という扱いを受け、これから式典式及び、これから共に旅をする仲間を授かるらしいっす。女だけのパーティーを作りたい。某ドラゴンのクエストゲームでも、女だけのパーティーを作って世界を救う冒険に出たものだ。
「如月様は、世界お救いになる力を宿しておられます。これで世界は平和になるでしょう」
「チッ、そうかよ」
やはり不服だった。確かに俺のステータスは一般傭兵並みだし、特殊スキルも変わっているけど、心のどこがで悲しい気持ちが渦巻いている。
チンっ!
カプセルの軽快な音が聞こえた。音の聞こえた方を見てみると、俺が乗ってきたのと同じカプセルが目の前で停止している。
白い蒸気を放出しながら、扉が横スライドに開いた。そこには……。
「やぁ!待たせてしまって申し訳ないね!1分遅れだ!」
純金で出来た鎧を、全身に纏った聖人が姿を現した。
多種多様な装飾品を施している大剣を背中に装備しており、いつも通りのウザやかスマイルを浮かべていた。なんだ、その笑顔は。
この子はヘイト対象にでもなりたいのだろうか。
「「「「お待ちしておりました!勇者様!!」」」」
先程までブリッジオナ○ーの素晴らしさを語っていた傭兵4人全員が、最敬礼のお辞儀をしていた。溜まってるんだろうな……。
「そんなかしこまらなくても良いさ!それより、もう間もなく表彰式だ。時間もないし行ってくるよ」
ウザやかスマイルを浮かべながら、傭兵や黒ローブ、そして俺にも軽く手を振りながら、奥へと歩き出した。今だに傭兵達は最敬礼のお辞儀をしている。別にキャラは作ってないんだろうけど、とりあえず顔を一発殴りたい。
「そろそろ、表彰式が始まるわね」
「諸君!おはよう!今日は素晴らしい日となった!我らが夢にまで見た、勇者が召喚されたのだ!!」
ファーフェル国王が話始めたな。ここからでは国王や民衆の姿は確認できないが、歓声が凄い事はここからでも伝わる。
「早速だが!紹介しよう。異世界の勇者、如月聖人君だ!!」
「やぁ、異世界の美しいお嬢さん達!僕が勇者!如月聖人さ!」
先程の数倍以上の黄色い歓声が聞こえた。良くこんなキザイケメンウザやかスマイル野郎に歓声なんて上げれるものだ。
「彼が来たからには!必ず世界に平和が訪れるであろう!しかし、一人では壁にぶつかる事もある…そこで!彼に相応しい仲間を紹介しよう!」
「我が国の最上級【魔導師】!マリー・マーキュリー!」
民衆の歓声や拍手音は聞こえるが、ここからじゃ何も見えないっての!どんな姿してるのか、かなり気になるな。テンプレだと、絶対に美少女だ。
「そして!我が国の最上級【戦士】!ロン・スミスン!」
「最後に!我が国の最上級【アサシン】!エムロス・エルリック!」
「以上の3名が!誇るべき、勇者の仲間だ!!世界に平穏をもたらしてくれ!」
こうして、聖人の輝かしい勇者式典式の幕が閉じた。終わるの早くね?
スグに終わるとしても、これだけの大歓声の後に出るのはかなり気がひけるんだが……。
しかし、そうも言ってられない!等々俺の式典式が始まる時間だ。俺は重い足取りで奥へと歩き出した。多くの民衆が見守る中での式典式は、心臓が破裂するんじゃないかと思うぐらい鼓動が早まり、極度の緊張をしていた。この緊張をモノともせず、堂々と民衆の前に姿を現した聖人は、確かに勇者かも知れないな。
『上条様、頑張って下さいね!!』
「あぁ、いってくる!って、お前も一緒なんだがな」
奥に進み切ると、そこには数え切れない程の民衆が、俺一人に焦点を当てていた。まるで新種の生物を見るような眼差しで俺の事を見ており、中にはカメラらしきもので撮影している人もいた。なぜこの世界にカメラがある。
「ん?あぁ〜忘れてた。この子、サブ勇者の上条正人君。まぁ、皆んな応援してあげて」
第一印象に殺意を持った人間は君が初めてだよ、ファーフェル国王君。国王だけならともかく、民衆も拍手程度しかしてなかった。
……そろそろ泣くよ?
「じゃ、仲間を紹介しよっか。我が国の中級 【魔導師】シヴァ・アグネス」
国王が話し終わるとの同時に、俺の左側に、淡い紫色の魔方陣が展開された。
魔方陣から闇に包まれた人型のモノが現れ、数秒間のインターバルの後、闇が蒸発したように消え去り一人の幼女が姿を現した。黒くしっとりたした質感の、肩口まで届くか届かないかと長さの髪、黒色の羽衣を身に纏った12〜14歳程度の幼女だ。
……ちょっと待て?あれ、一緒に戦う仲間を紹介されているんですよね?出てきたの子供なんですけども。
「シヴァ・アグネスと申す!以後お見知りおきを……!」
紫色の瞳を潤ませながら、こちらを見つめる幼女は、俺の胸元ぐらいの身長しかなく、ビンタで倒れそうなぐらい華奢な身体をしている。
いや?可愛いよ?可愛いけどさ、俺この子を守れる自信ないっすよ?一般傭兵並みの勇者には荷が重いっすよ?
「次は〜えっと、あぁ、そうだ。我が国の中級【拳闘士】レレーナ・レヴァイン・レミリア」
どんだけ「レ」使うんねん。
先程と同じく、国王が話し終わるのと同時に、俺の右側に淡いオレンジ色の魔方陣が展開された。
魔方陣から光に包まれた人型のモノが現れ、数秒間のインターバルの後、光がガラス状に破裂したように消え去り一人少女が姿を現した。
鮮やかなオレンジ色の質感の、肩甲骨まで届く髪、そして……頭から猫耳が生えていた。
「れ!レレーナ・レヴァイン・レミリアです!よ、宜しく!お願いしましゅ!!」
深々とお辞儀をしながら、最後に噛んだ事に気づき顔を赤らめているこの少女。
見た感じは16〜18ぐらいだろうか?先程の幼女と良い、戦える見込みのある子がいないんだが……。
期待してないからさっさとクタバレって遠回しから言われてる感が凄いんですけども、
「以上を持って、サブ勇者表彰式終わり。解散」
国王の世界一適当であろう式典式を終え、国王や民衆がゾロゾロと去って行った。特に盛り上がる事は一切なかったせいで、場違い感が凄い。
ねぇ、これって国が僕の事イジメてますよね?いじめ、ダメ、絶対。
「勇者!私頑張る……!」
「あ!改めて!宜しくお願いちましゅ!!」
本当に、この微妙なメンツで魔王を倒せるのだろうか……。
ーーボロ宿ーー
不快でしか無かった勇者式典式を終えた俺は、まだ午前中にも関わらず古びた宿に宿泊していた。
理由は、サブ勇者の俺には目もくれず、聖人の周りに民衆が集約していたからだ。虚無感と嫌悪感が混ざり合い、人目のつかないように古びた宿を借りたって訳。
決して金が足りないせいで、他の宿を借りれなかったって事じゃないから。金が足りないせいで、さっき仲間になった人達と相部屋になってる訳じゃないから! 人目のつかない所を選んだだけだから!!
「勇者、そろそろ自己紹介をしたい」
先程仲間になった幼女が、眉間にシワ寄せながら不安そうな顔をしてコチラを見つめている。テンプレ王道ファンタジー的にはこの子は強いのだろう。そう信じたい。
「あ〜そういや、俺たちお互いの事何も知らないもんな。分かった!じゃあ俺から自己紹介させて貰う!上条正人だ!ステータスはまぁ、うん……それと、俺の事は上条か正人って呼んでくれ。
二人称が勇者なのは色々と面倒だ。後、これから俺達は仲間なんだし、敬語を使うのは厳禁な!」
世間では聖人が勇者って事になってるからな。もし二人称が勇者のまま街に繰り出したら、軽い騒ぎになるだろうしな。
「分かった、じゃあ、正人って呼ぶね!改めて自己紹介させて貰うけど、レレーナ・レヴァイン・レミリアって言います!ちょっと長いからレミリアって呼んでね!」
ベットに腰掛けながら、満面の笑みで話しかけてくる。先程の緊張が解けたせいか、別人のように見えるな。
いやー、それにしても随分とタワワなお胸をしてらっしゃる……っ!だが、できるだけ胸は見ないようにしよう。清楚系なのに胸が大きい子は、大きい事にコンプレックスを持っている子が多い。下心を隠して接した方が攻略しやすいはずだ。あくまでギャルゲーの知識だけど。
「 よろしくな、レミリア!後、気になっていたんだが、頭に生えてる猫耳は一体なんだ?」
どう見ても作り物ではない、先程から何度か耳が動いているのが何よりの証拠だ。
まさか最先端技術により生み出されたコスプレ用の猫耳ではあるまい。
「あぁ、これ?僕はビースト族と人間のハーフなんだ〜僕は人間の血が強くて、8割型は人間なんだけど、耳だけはビースト族の耳になっちゃってるの」
「えーと……ビースト族ってなんぞ?」
「ビースト族は、山奥に住み着く亜人の一種!生まれながらにして、ビースト族は土魔法しか使えない!ってハンデを背負ってるけどその分、身体能力が人間の数倍はあるんだ!」
得意気に話しながら、座ってシャドーボクシングをし始めた。
まぁ、とんでもない速度なんだろぅ、シャドーボクシングの風圧だけで、レミリアの前方にある目覚まし時計が粉々に粉砕した。おい、まさかあの目覚まし時計を弁償させられるなんて事は無いよな……。
『じゃあ、次は私の番ですね!』
いつ間にか俺達の目の前に、淡い青色の光を放出しながら、フラエンが宙を浮いていた。マジでいつの間に現れたんだよ。
さっきまで部屋の隅にあるベットの上に置いてたはずだぞ。
「剣が喋った!」
「えぇぇぇ!?なんで剣が宙に浮いてるの!?」
どうやら、精霊が剣と融合するのはコチラの世界でも珍しいらしいな。
『ふふん♪驚きましたか〜?私は上条様と共に戦い、共に笑い合い、共に涙する相棒の精霊!上条様が保有する特殊スキルの【フラグ・エンペラー!】略してフラエンです!』
「フラグ・エンペラーなんてスキル、聞いた事ない」
「あ〜、それは後で説明するから、先に自己紹介どうぞ?」
正直言って、フラグ・エンペラーをスキルについて説明するのは骨がいるんだよな〜。
こちらの世界にはフラグなんて認識がないんだから。
「分かった」
先程までベットに腰掛けてた幼女が、ゆっくりと立ち上がった。そう言えば、この子の名前なんだっけ。
「シヴァ・アグネスと申す。魔法属性は闇。得意魔法は、私が狙いを定めた対象物の魔法、スキル、容姿などの情報を全てコピーする魔法と、5秒後の出来事を未来予知する魔法。呼び名はアグネスと呼んで欲しい」
……少し待たんかぃ。眉ひとつ動かさずに淡々と自分の事について説明してる割に、ずいぶん物騒な名前と魔法じゃあないの!幼女だと思って甘く見ていた。
俺TUEEE!ならぬ、仲間TUEEE!ですか……そうですか。
「ちょっと待て!なんでそんなに強い魔法を持っているのに、中級魔導士なの?」
先程までベットに腰掛けてたレミリアが、驚嘆の表情で立ち上がった。
シャドーボクシングの風圧だけで、目覚まし時計を粉砕するレミリアも、なんで中級止まりなんだよ!ってツッコミたいけど、話がややこしくなるからやめておこう。
「最上級クラスは、アグネス以上の魔法を使えるって事か?」
「ううん、実力的には最上級クラスの魔導師より私の方が上。中級止まりなのは普段は力を抑えているから」
『何故、普段は力を抑えているんですか?』
「力を抑えないと、私の魔力に反応して魔物の集団が押し寄せて来て、色んな人に迷惑けけちゃうから……」
そう答えたアグネスの表情は、意外にも真顔であったが、声は悲しみに包まれていた。
俺達はお互いにアイコンタクトを交わし、これ以上は探りを入れない事になった。
「あ、言い忘れてた。私、元魔王」
……Brain freeze
アグネスよ、先程の悲しみの空気から何を言い出すんだ。私、トイレ!みたいな軽いノリで爆弾発言を投下するんじゃありません!
「なぁ、アグネス?変な冗談はやめような?」
「冗談なんかじゃないよ。本当に元魔王」
この場に静寂が訪れた……。
『「「えぇぇぇええぇぇえ!?」」』
数秒間のインターバル後、一斉に騒ぎ始めた。
『え!?元魔王!?なに!敵なんですか!?』
「なんで元魔王が人間の国で魔導師なんてやってるの!?」
「Brain freeze……」
各々が順番という概念すら忘れ、アグネスに質問攻めをする。俺たちが驚きまくってるのに対し、アグネスは眉ひとつ動かさずに、真顔で俺達の事を見つめるだけだった。どんだけ冷静なんだよ。お前は黒ローブか。
「少し落ち着いて……ちゃんと説明するから」
そう言いながら、一直線に俺の元へと向かってくる。え、なに?さっき騒ぎ過ぎたから怒ってるの?俺、消されちゃうの?
俺の元まで辿り着き、息を整えてこう告げた。
「一緒に人間と魔王を滅ぼそう」