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02話 新たに勇者が召喚された件

「確実に俺、召喚ミスだろ……」


「何か仰りましたか?勇者様」


「いいえー、何も〜?」


という事で、新たに召喚された勇者様がいるっつー場所まで馬車に揺られながら向かっている。


偶然か必然か、元々俺が召喚された場所、つまり同じ魔法陣から召喚されたらしい。


……っつーか、コレあれだよな?今流行りのアプリゲームのガチャ引いたら、ザコ当たっちゃった!っていうザコキャラの立場にいるのが俺で、新たに召喚された勇者様が、チートキャラな立場なんだろ?

とにかく、確実に俺は召喚ミスだ、分かってる。この一般傭兵並みのステータスなのが、何よりの証拠だ。


「それにしても、勇者様が所持しているフラグ・エンペラーという特殊スキル…非常に気になります。こちらの世界では存在しないスキルですので」


気になると言ってる割には、冷淡な声に、眉ひとつ動かさない程の真顔やんけ!!ってツッコんだら負けなのかな。


「……今ここで発動しろと?」


「いえ、結構です。未知数な能力ですので、危険な能力の場合、私では対処しきれない可能性がありますので」


危険な能力……ねぇ?この世界の住人には分からないかも知れないが、名前から推測するに、フラグに関する能力だと思いますよ〜?


せめて、もう少し使える能力だったら魔王討伐も夢じゃなかったんだが、フラグ・エンペラーだぜ?名前からして俺TUEEE! 所か、そこらの魔物にすら勝てる気がしないんですけど……っ!


「おっと!」


ヒヒーン!という馬の遠吠えと共に、馬車が急停止した。

周りを見渡してみると、先程の雄大なガーデンが広がっていた。

どうやら着いたみたいだな。


「黒死蝶様、勇者様! 着きましたよ!そこの木でリンゴをもぎ取っている人です!」


「リンゴをもぎ取るって、随分順応するのが早い勇者様だな」


軽く苦笑いを浮かべながら、視線を勇者と思わしき人に向けてみる。


そこには、金髪金眼で高身長なイケメンがいた。

先程もぎ取ったリンゴを、樹木に背を持たれながらかじっている。


キューティクルが一切剥がれていないような、金髪ストレート!思わず二度見してしまうのような甘いフェイス!そして乱れの無い、お手本のように着こなすウチの高校の制服!

……って、ちょっと待て!!!

淡々と勇者の特徴を説明しちゃってるけど、アイツはまさか……。


「初めまして、勇者様。突如異世界に召喚してしまい、誠に申し訳ございません。

詳しい説明を致しますので、ご同行願います」


「ご丁寧にありがとう!初めまして、美しいお嬢さん!そんなに堅苦しい口調じゃなくても大丈夫だよ?」


そう、間違いない。あのムカつく程のイケメンフェイス、そしてキザ臭いセリフを吐くアイツは同じ高校に通う同級生の……


如月聖人(キサラギセイト)か?」


「き、君はまさか……上条君かぃ!?」


俺の呼びかけに反応し、驚嘆の表情でこちらを見ているのは、同じ高校に通う同級生の如月聖人。

聞いて貰えば分かる通り、かなりウザい口調だ。なんだよ、「かぃ!?」って、今時そんな口調の奴いねぇよ……。


しかし、このキザ男。天から授かったイケメンフェイスのおかげで、学園ハーレムラブコメのような生活を日々送っている。俺とは正反対の人種だ。

……つーか、驚き過ぎて口からリンゴのこぼれカス落としてるじゃねぇか、残念なイケメン過ぎるだろ。


「お知り合いなのですか?勇者様方は」


そして相変わらず、無感情の黒ローブ。

何の驚きも疑問も感じないような声で問いかけてくる。


「あぁ、まぁな。実は同じ世界にいた友人なんだよ。つーか、さっき黒死蝶さんに聞いた話だと、異世界召喚魔法は、一人しか召喚されないはずじゃないのか?」


「えぇ、異世界召喚魔法は、召喚士を複数犠牲にしないと発動出来ない大魔法です。異世界から召喚出来る人数は最大1人…魔法発動中は、自動的に全ての国に伝達が届くようになっています。しかし、伝達が届いたのは上条様を召喚した時のみ…したがって他の者が国の許可を取らず、無断で異世界召喚魔法を発動した線も消えます。それに……」


「あぁーー! もう、わかったよ! とにかく原因不明って事だな!」


「……そういう事になります」


丁寧に説明してくれるのは有り難いが、要点を分かりやすくまとめて話す事が苦手なんだな…使えるか分からないけど、黒ローブの弱点(?)ゲットだぜ!!

安定の淡々とした説明が終えた後、感情を顔に出さない黒ローブが、少しだけ顔を引きつった様に感じた。俺の見間違いの可能性が高いが……


「えぇーと…ごめんね? まだこの状況を全く理解出来てないんだ…可憐なお嬢さん? 詳しく説明して貰えるかな」


嫌な顔を全くせず、数々の女を落としてきたウザやかスマイルを浮かべながら黒ローブたんに話しかける如月聖人君。


……目の錯覚のせいか、いつ見ても聖人の周りからは、キラキラした何かが複数浮かんでいるように見える。


「失礼致しました。では、詳しい説明を行いますので、私にご同行願います。

上条様は、不服かも知れませんがそこの傭兵の指示に従って下さい。それでは如月様、行きましょう」


……そういえば、傭兵もこの場に来てたな。存在感なさ過ぎて忘れかけていた。これがモブキャラの宿命という奴かもな。


「それでは勇者様!!これよりこの国の王とご対面して頂きます!準備はいいですか!?オーケーですね!では!参りましょう!!」


この世の汚れを知らないような明るい笑顔を浮かべるテンションアゲアゲボーイ

本来、人差し指を頭の前部に当てて行う敬礼のはずが、喉仏に人差し指を当てて敬礼している。


これネタなの?ツッコむべきなの?それとも天然なの?

この世界キャラ濃い人が多過ぎるんだよ……。

「りょーかいした、さっさと行こう」

とりあえず、敬礼の事については触れない事にした。


ーー国王の間ーー


俺は先程の傭兵の「5分ぐらいで着きますよ!ダッシュ!ダッシュ!」という言葉を馬鹿正直に信じ込み、鵜呑みにしていたが、実質20分は歩かされた。あの傭兵だけは許さねぇ。

やっとの思いで着いた、この国王の間

……国王と名の付く部屋なのだから、もっと金のシャンデリアや王だけが座るのを許される、装飾品が多数施された椅子や、レッドカーペットがひかれているなどと、思い込んでいたが、実際は、両壁に外灯が幾つか付いて、奥に石で出来たと思われる玉座が、段差のついた床の上にあるだけに過ぎなかった。


しかも、国王いねぇし! メイドが二人だけ玉座の両端に立っているだけって!俺勇者だぜ!少しはやる気出して歓迎しよう!?


「すまないな。国王様は現在、別件の仕事があり、貴殿と対面する事が不可能な状況だ」


突如、玉座の左端にある階段の方から圧のある低い声が聞こえた。

階段を上がりきると、漆黒の鎧を纏い、頭をアーメットヘルムに覆われている騎士が俺の前に姿を現した。


素性は分からないが、雰囲気だけでかなりの凄腕騎士だと一目見ただけで実感した……怒らせないようにしないと


「対面が出来ないだぁ?遥々異世界からやってきたってのに、なんだか扱いが雑じゃねぇか?」


正直、この騎士から発せられるオーラで、恐怖心から寿命が縮むかと思ったが、俺は昔から嫌な事は口に出さないと収まらないタイプだ。


「本当に申し訳ない。黒死蝶から話を聞いているかも知れないが、我が国……いや、人類は最大の危機に遭遇している。皆、切羽詰まっているのだ。かくいう私も時間に余裕がない。貴殿にはこちらの武器とゴールドを捧げる。ご武運を……」


そう言い放ち、俺の前に錆びた剣と500マネー

俺が居た世界では500円相当の金額だけを置いて、そそくさとその場から立ち去った……。


いや、分かるよ?某RPGゲームでもそうだよね?初めはガラクタに等しい武器と、雀の涙程のお金だけ寄越して、「勇者よぉ! 旅立てー!」って言うもんね?

けどさ、コレ現実だよ?憎き魔王を倒す為に召喚された勇者様だよ?待遇コレだけなの?嘘でしょ?


「それでは勇者様? 明日の午前10時に、こちらの地図に示された場所まで来てください。勇者様方の式典式を行いますので

……あ、今日はこちらのお屋敷にある宿をお使いになり、お休みくださいませ」


それだけを言い残すと、メイド達も何処かへと去って行った……。


「ふ…っ!!ふ!ざ!け!る!なぁぁぁああ!!!!」


俺の怒号が、国王の間全域に響いた……。

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