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リトルプラム  作者: aoneko
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第二話:志野

『はっくしゅん!』


河野 あつしは体を震わせた。


足元に散乱した絵の具が行く手を阻む。


『何でこんなに寒いんだ。もう四月に入るっていうのに。』


温はブツブツ文句をいいながら、部屋の真ん中に置かれている大きなストーブのスイッチを入れた。


数十秒後、ストーブはブーンとうなりながら、暖かい空気をはきだし始めた。


温はストーブの前に立って手を温めていたが、やがて机の上に置かれた筆とパレットを手に取ると、書きかけの絵の前に座った。


朝の静寂の中、温は絵の世界にのめり込んでいった。

 





一時間ほど続いた温の静寂は、突然の派手な音によって破られた。


背後で、どしんと大きな音がしたかと思うと、かすれたうめき声が聞こえた。


驚いて振り向くと、積み重ねられた椅子の奥に、赤いものが見える。 


さらに、目を凝らすと小麦色の長い手足が床にだらしなくのびている。


赤いものは彼の髪の毛だ。


『志野?いたの?』


『いちゃ悪い?』


志野と呼ばれた少年は、不機嫌そうに体を起こした。横には、いくつかの椅子を組んだ簡易ベットが崩れている。


『いや、そうゆうわけじゃなくて・・。お前いつからいたの?』


志野の寝起きの悪さには慣れている温は、刺々しい言葉も気にしないせず、受け流した。


『一昨日位。』


志野はめんどくさいそうに口を開いた。


『一昨日?』


温はあきれてため息をついた。


よくみれば、志野の着ているブルーの半袖のTシャツには、ひどく汚れているし、トレードマークの赤毛はくしゃくしゃだ。


それに・・・Tシャツ??志野着ているのは半袖のTシャツだ。長い手足が剥き出しになっている。


まったく、見るだけで寒い。


温は顔をしかめた。それに、もう一つ心配なことがある。


『志野、もしかして一昨日から何にも食べてない?』


案の定、赤毛の少年は首を縦に振った。志野は放っておくと、食べるのを忘れる癖がある。


『俺、朝ごはん買ってくるから。』


そう言って、温が上着をつかむもうとした瞬間、志野が窓の方に顔を向けた。


『新入部員だ。』


志野は呟くと、窓を大きく開いて外を見下ろした。


『へ?何?』


温も窓の外を見下ろした。


澄んだ冷たい風が部屋に吹き込んだ。


窓の下を小さな影が駆け抜けていく。栗色の髪が風になびく。


『小梅?』

 

その色は温のよく知っているものに似ていた。















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