余談:入部面接
『あなたの描いた絵を見させていただきました。すばらしいかったです。』
狭い美術準備室で、美術部顧問の司馬 寿男と三沢 小梅は向き合っている。
『そんな。わたし、きちんとデッサンを習ったことがなくて自己流なんです。』
小梅は恥ずかしそうに俯いた。
『いや、技術なんていいんですよ。あなたの絵は河野君という人の作品によく似ている。いや、絵柄がというわけじゃありませんよ。二人の作品に共通温かさがあって・・・。いや、わたしは何を言っているんでしょうね。』
今度は司馬の頬が、恥ずかしそうに頬をぽりぽりと掻いた。
『先生すごいですね。わたしと河野君は幼馴染なんですよ。見て育ったものがほとんど同じだから、雰囲気も似るんじゃないでしょうか。』
温ちゃんの作品があたしのに似てる?
小梅は緩んだ頬を必死で引き締めようとした。
『そうか、通りで。ま、しかし表現力や作品の深みは数段あなたの方が上です。人間を描くのがお好きですか?』
『はい。小学校に入る頃にはもう人物画ばっかり描いてました。』
『自分の才能にあった選択だと思いますよ。あなたの描く人間は実に現実味があります。』
『現実味ですか?』
『はい。きっと美術部はあなたにとって有意義な場所になると思いますよ。』
『!じゃあ。』
小梅の声が弾んだ。
『美術部へようこそ。三沢 小梅さん。』
老教師の顔に優しい笑みが広がった。
いつ入れようか悩みましたが、早めに入れました。