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お肌のトラブル




「うぉぉぉぉ!! ニキビできてもうたぁぁぁぁーーー!!!」




 ポテチを思う存分食べて大満足した翌日、朝。


 私の心は一気に天国から地獄へ。




 なんかさー、起き上がる前から気づいてたんだけど……ちょっと浮腫んでる。

 手と足の指がぷくっとしてる。




 寝起きで枕に顔を埋めたときに、なんか違和感を感じたんだよね。

 擦れてるだけじゃなくて、ちょっと内側から痛かったというか。



 慌てて飛び起きて鏡を覗くと……顔面におっきなニキビが!!!!




「ひぃぃぃぃーーー、やってもうたぁぁぁあごめん私ぃぃぃぃ」




 こうして冒頭へと移るのである。




***




 何たるザマか。


 前世の記憶からなる欲求によって、今の私の美しい陶器のようにつるんとしていたおでこにィ! おでこにぽつんと赤いニキビがぁぁぁぁ!!


 もうね、orzって感じよ、まさに。



 ポテチによる、塩分と油の過剰摂取が原因なのは間違いない。


 デブかったときは吹き出物とか数えられないくらいにいっぱいできてたし、むしろ潰しにいってたダメ人間だったんだけど、転生しても尚同じことを繰り返しちゃうとか……ないわ。



 出来ちゃったものはいくら嘆いてもすぐには消えない。



 ならばせめて、綺麗に消えるようなケアをしなくちゃいけないわね。

 とりあえず、触るのは厳禁!



 あとは……洗顔?


 この世界には勿論、プロでアクティブな某肌ケア用品なんて無いわけで。

 せめて、石鹸で丁寧に洗顔しておこう。



「はぁぁぁぁ」



 花の香りのする石鹸をしっかり泡立てて、丁寧に顔を洗って大きなため息を一つ。



 ここまで騒いでも、エリーは昨日のような反応はしない。

 普通にタオルを渡してくれるし、何故かニコニコと笑って立っているではないか。



「何で今日は普通なの? こんなに騒いでるのに」

「いえ……昨日はお嬢様のお悩みの原因がわかりませんでしたので。ですが本日はその、額の出来物の所為と分かっていますもの」

「そ、そう……」



 こういう見た目系の方が「まあまあお嬢様!? お顔に出来物が!」なーんて心配されそうなものだけど、違ったらしい。



「お嬢様くらいの年齢では誰もが通る道でございますから。薬をお塗りしましょうね」

「あら、ありがとう」



 導かれるまま座ると、棚から美しい絵柄が蓋に描かれた容器を取り出してきた。


 ふーん、それっぽい薬はあるみたいね。


 香りは薬草っぽいけど、嫌な匂いではない。

 うん、良さそう。



 優しく丁寧に塗ってもらうと、なんだかすぐにでも治りそうな錯覚がする。



「はい、できました。あまり弄りませんように」

「ええ、分かっているわ。どうもありがとう」



 つい触りたくなるけど……我慢、我慢。



「今日から授業だなんて、ツイてないわね」



 そりゃ休日にポテチ作ったら、そうなるか。


 あーあ、マジで授業行きたくない……っていうか部屋から出たくない。



 前世の日本人顔と違って、西洋風な顔立ちだから、デコも広いのよね。

 前髪で隠れる場所じゃないし、単純に物凄く目立つ。



 他の人に見られたくないなぁ。



「大丈夫です。目立ちますが、ローザお嬢様はお美しいままですよ」

「うぅ……」



 まあ、この程度で休んでちゃあキリがないわよね。

 覚悟を決めますか。


 鼻とか口元じゃなかっただけ、マシってもんよね。



 自分に言い聞かせながら、トボトボとクローゼットへ向かったのだった。




***




 そして迎えた休憩時間。


 アイツが爆弾発言しやがった。




「なあローザ、そのデコどうしたんだよ? ぷぷっ」



 若干小馬鹿にしたような顔をするヒューイ。


 くっそ、これだから来たくなかったんだ。




「ちょっと、女の子にそういうことは言っちゃダメだよ」



 おっとりとした顔立ちに『何言ってんだコイツ』という表情を載せて、エル君がたしなめる。


 エル君は、ヒューイの前の席の優しい少年だ。



 うんうん、ありがとう。

 優しいキミは、きっといつか穏やかで幸せな家庭を築くに違いないよ。


 だがヒューイ、貴様はダメだ。



 エル君の言葉に便乗して、私も反撃に出る。



「ホントですわ。女性に向かっての言葉ではありませんわよ」



 ツンと顔を逸らして『怒ってます』オーラを出してみるも、デリカシーの無い男には通じないらしい。




「なんでだよ。事実なんだから、別に良いだろ? なあなあ、それって触ると痛いのか? 押したらどうなるんだ?」

「はァぁあ!?」



 貴様はSか!


 コイツはきっと、カサブタなら自分以外の人間のものでも剥がそうとするに違いない。




「ダメだし痛いに決まってるでしょ! 絶対に止めてよね」

「ちょっとだけ、ちょこっとツンってするだけだから」



 普段は楽しい友達だけど、流石に今回は悪ノリが過ぎるわ。


 ニマニマが止まらないこの男を殺気を込めて睨んで、顔を寄せる。



「このやりとりを続けるようならテメーがそばかすだの吹き出物だらけになったら全力で笑い飛ばしてトラウマ植えつけてやろーか? アァン!?」



 と囁く。


 勿論、ドスの効いた声で。



 学生時代は誰だって、男女関係なくお肌トラブルに悩ませられるんだからな!



 エル君には聞こえたのか、私の背後から吹き荒れるブリザードを察知したのか、顔を背けてる。心なしか顔が青い。



 ヒューイはというと……おぉ、おとなしくなった。


 口調が変わるほどキレてるのが、流石に解ったらしい。




「ごめん。そんなに嫌がるとは思わなくて……」



 しょぼんとしとる。


 まあ……この年頃の男子がこういうノリになっちゃうのもわかるから、謝るなら許すか。



「もう、このような事を言わないのであれば許しますわ。勿論他の方にもしてはいけませんわよ? 騎士になりたいのでしょう? 人の心を傷付けるような言動は慎んでくださいませ」

「わかった。申し訳なかった」



 ふむ。素直でよろしい。


 是非とも長期休暇には、サーシャに甥っ子の再教育をお願いしたい。

 やればできるのに、たまにこうして紳士らしさを失うことがあるみたいだから。



 勿論、ヒューイに吹き出物が出来た暁には、同じ台詞を浴びせるつもりだけど。



 やられたらやり返すわよ?


 勿論、一回だけね。

 「これでおあいこよ」つって。



 その後は仲直りして、普段通り会話を楽しんだ。



 アリー? 今日もポーッとヒューイに見惚れてたわ。


 今日くらいフォローが欲しかったわね。

 最近は、ちょっとずつ会話も出来るようになってきてはいるんだけど。

 まだヒューイに対する顔面耐性は付いていないみたい。


 もっとみんなでワイワイしたいな。


 ヒューイ達は、アリーが口数の少ない子だと思っている。

 おとなしい子ではあるけど、実は結構しゃべるんだけどなー。


 まだ仕方ないか、人見知りだもんね。


 私もアリー以外に親しく話せるのは、まだヒューイやエルくらいだから、人のこと言えないし。



 ヒューイを黙らせると、他には特におでこのニキビについて何か言われたりはしなかった。


 あぁ、女の子たちは心配してくれたわよ。

 心配と、いつ自分にも出来るかわからんっていう恐怖と半々だったかな。




 その日から食事に気をつけて、生野菜やフルーツ中心にしていたら、ニキビは数日後には綺麗になくなっていてホッとした。


 むしろニキビが出来る前よりも、心なしかスベスベになった。



 ふぅ、良かった良かった。



 やっぱり食生活って大切なんだな~。




 ポテチを食べるときは、量に気をつけようと心に誓ったのだった。




ポテチその後の話でした。

ヒューイがついローザに意地悪しちゃうのは思春期のアレです。悪気はないんです。

そしてポテチ封印する勇気のないローザです。


2015/11/01 エリーの名前間違いを直しました。

2022/03/28 ちょこちょこと追記&修正しています。

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