王立学園、入学!!
「やってきました王立学園!!!」
前世がデブだった私は、超絶美女でナイスバデーな伯爵令嬢として学園生活をエンジョイするために、護身術まで取得した。
楽しみにしていただけあって、その他の準備もバッチリよ!
しっかりと櫛を通してセットした豪華な金髪は、香油までつけられてキラキラしてるし、長い睫はピシリと生えそろい、深く澄んだ青い瞳を覆っている。
嫌味じゃない程度の彫刻みたいな高い鼻、サクランボみたいに色づいて美しく弧を描く唇。
期待で上気した頬は、美しいバラ色になっているに違いない。
臙脂色した素敵デザインの制服を身に纏い、制服の下には、十三歳とは思えないボンキュッボンな肢体が隠れている。
そんな私、ローザことロゼット・ソレイユ・エグランテリアは、白亜の石造りのでっかい建物の前に立っていた。
うーん、やっぱり学園の建物も、城にしか見えないな……。
本日は入学初日。
全寮制のこの学園で、五年間を過ごすことになる。
勿論、季節の節目なんかには休暇もあるけど、それでも確実にほとんどの時間を過ごす場所なのである。
新入生も在校生も次々とやってきては、白亜のお城、もとい王立学園の中へと吸い込まれていく。
端っこに立って流れていく人々を見ていたけど、やっぱり皆様貴族のご子息ご令嬢だけあって、高貴なオーラが出てるわ服はバッチリ着こなして髪型まで完璧! な方が多い。
うーん、流石は王族経営の貴族学園。
顔立ちが整った生徒も多々いて、『前世との差が激しすぎるから超絶美女だと思ってたけど、もしかしてこの中だとかなり平凡!?』とかちょっと心配してたんだけど、色々と観察を続けた結果、まだどちらかといえば美人寄りで安心した。
いや別に、美人じゃなくてもある程度自信を持って学園生活を送れれば、それで良いんだけど……。
なんだかんだ言って、美人な方が得なんじゃないかという意識が働いたらしい。
そりゃ、前世のコンプレックスは簡単には消えないわよね。
いやーしかし、どこを向いても目の保養になりますなぁ……。
そんなオヤジくさいことを考えていると、若干息を切らした女の子が目の前に現れた。
ようやくやってきた、私の待ち人である。
***
「ごめんなさいローザ、お待たせしちゃって……」
「あら、気にしなくていいわ。色々見れて楽しかったし、それよりリボンが曲がっちゃってるじゃない、ちょっと上向いて」
ちょいちょいと首元のリボンを真っ直ぐにしてやると、上目遣いにお礼を言われる。
うぅ、可愛いじゃない……。
ガヴォット伯爵家の令嬢アマリリスは、私の数少ない友達だ。
私はアリーと呼んでいる。
歳も一緒だし、家族ぐるみでお付き合いがあって、手紙も頻繁に交わす仲。
アリーもローザ同様、屋敷から滅多に出ない引きこもり気質だ。
……まあ、ご令嬢は大抵そうなんだけどね。
そうそう、引きこもりな私もアリーも、乗馬は出来るんだから。
馬車も良いけど、馬に乗るなんて、百キロ以上あった前世の私じゃ体験できなかったからね、記憶を取り戻してからは感無量だったわ。
場所によっては、乗馬センターの馬って体重制限あるんだよ……。
「ローザと一緒に学園に通えて、嬉しいですの」
「私もよ。楽しい学園生活にしましょうね」
パッと花が咲くように微笑むアリーに、頬が緩む。
アリーはどちらかというと可愛い系女子で、身長もそんなにない。
絶賛成長中の私でも、ギュッとすれば囲えてしまうのではないかと思うくらいだ。
引っ込み思案なところがあるけど、仲良くなってみれば意外とおしゃべり好きなアリーと一緒なら、学園生活も楽しくなるなぁと期待で一杯になる。
新入生歓迎式という、入学式的な式典がもうすぐ講堂で行われる。
学園生活に想いを馳せながら、二人並んで歩き出した。
***
……。
…………。
………………。
うっすら思っていたことなんだけど、やっぱり新入生歓迎式は……超つまんなかった。
それでも、これも学園生活エンジョイの一環と思えば、なんとか意識を集中できた。
そのおかげか、生徒会メンバーとして新入生からキャーキャー言われている一団の中に、お兄様が入っていたことに気付いたのだった。
――やっぱりウチのおにーちゃん、凄い人だったわ……。
こうして、私の学園生活は幕を開けた。
お付き合いいただきましてありがとうございます。
調子に乗って本日二投目になりました。
読んで下さった方、ブックマークして下さった方に感謝感謝です。
2015/10/10 誤字なんかをちょこっと直しました。
2022/03/15、24 ちょこちょこと追記&修正しています。