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体重3ケタ越えのデブ子が超絶美女に転生したので好き勝手生きてみることにした  作者: 汐乃 渚


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16/28

冬期休暇、終了!










 暗闇の中に一人きり。






 ここはどこ?







「……っ」








 息が出来ない。







「……っ、……!」









 喉が焼けるように熱い。








「~~、っ、ぐっ」








 苦しい、くるしい、クルシイ!!!








「っっ、ぐっ……っ!!」










 誰かっ……!!









 どうして、誰も……。










***





 カレー研究に精を出したり、聖夜を家族とお祝いしたり、お休みだからアリーのおうちに遊びに行ったり。



 つつがなく冬期休暇を過ごしていた私だったけれど、年を跨いだその日から謎の悪夢にうなされていた。




 謎の悪夢っていうか……アレが死の記憶、ってやつ?



 散々、散々苦しんだ挙げ句に意識が途切れたところでぱちりと目が覚める。




 そうして飛び起きては、鏡に見事な金髪が写り深い青の瞳と目を合わせて心からホッとする。




 という事が数日続いたのよね。



 それからぱったりと、その仄暗い悪夢は止んだのだけど。




 そんな感じで、気持ち的にはどんよりとしてしまった年明け。


 まぁでも、悪夢から目覚めてダイニングに降りてみれば優しいお父様に美しいお母様、そして妹の心を掴みっぱなしのお兄様と過ごす素敵な時間……。




 ここが天国か!!

 って思っちゃったわよ。



 さてさて、そんな感じで家族に癒されつつ時はあっとゆーまに流れて新学期。



 2日に渡って超至近距離からお兄様との会話を楽しみつつの道中も特に問題はなく。




 ああ、荷物だけはかーなーり! 増えちゃったんだけどね。


 テンションMAXのお母様とエリーにしこたま試着させられたドレスやら何やら持たせてもらったものだから……。



 休み中も1着と被ることなく着続けたんだけど、まーだまだそんな量じゃない。


 あんまり多いんで気後れしたけど、学園に到着してみれば男女問わず似たような感じで少し納得。



 何にって?


 そりゃ~、部屋とクローゼットがあんなに広すぎる理由にね!



 子供と離れた親たちが服やら何やら色々と持たせたり送ってきたりするから荷物が……ね。




 大きな荷物を抱えた使用人さんたちが右往左往していていくら仕事とはいえ若干の申し訳なさすら感じてしまうくらい。




 パタパタという軽やかな音がしたのでそちらを振り返ると同時。




「ローザ!! お久しぶりですわ」



「まあこないだもお邪魔したけど……久しぶり? ねアリー」




 忙しなく行き来を繰り返す人々を眺めていたら、すぐとなりにアリーがいた。


 休み中も手紙のやり取りやら実際に会ったりしてたから、あまり久しぶり感も無いんだけど。




 寒さで紅潮した頬にもこもこ毛皮の防寒着という装いの彼女は今日も守ってあげたくなる可愛さ。


 微笑まれただけで、ほっこりとした気持ちにさせてくれる。




「やあアリー、久しぶりだね」




 私のあとからお兄様も馬車を降りてやって来る。


 お兄様は私ほどアリーの家にはお邪魔しないから、会うのは確かに久しぶり、かも?



 クラスメイトにはない、ただならぬ色香を纏った微笑みを浮かべる兄にやっぱりアリーはぽんっ! と音のするほど真っ赤になってあわあわと何とか挨拶の言葉を口にする。




 アリーって、やっぱり可愛いな……!




 ぷるぷるしながら、それでも楽しそうに兄と会話する友人を眺めつつ、そんなことを思ったのだった。




***




「き、緊張しました~。アンソニー様、しばらく見ないうちにあんなに大人っぽく……」



「お兄様と会うのはそんなに久しぶりだったかしら?」



「ええ、アンソニー様が学園に入られてからはお会いしていなかったから、本当に数年ぶりくらいじゃないかしら」



「えっ、そんなに!?」




 そりゃあ可愛らしい少年から色っぽいおにーさんに成長してたらああいう反応になるわなー。




 そういえば、生徒会挨拶のときに見なかったっけ? と尋ねれば



「だって今期の生徒会は皆様錚々たるメンバーで、前面にいた第二王子達を見るので精一杯だったんですもの!」



 おまけに新入生側には第三王子もいらしてどこを向いたら良いのか脳内フル回転でしたわ!

 とのこと。




 他の生徒会メンバーの影に隠れていたお兄様には目を向ける余裕がなかったらしい。



 私がお兄様に気付いたのは、兄妹だからか。




 へー、お兄様以外の生徒会メンバーはもっと凄い方達なのね~。


 第二王子とか。





 ……



 …………



 ………………ん?





「んぇぇぇぇぇえ!? 生徒会に王子!? 第二!? どゆこと!?」



「ろっ、ローザ、しっ、声が大きいですわ……」




 慌ててキョロキョロとするアリーだけど、てくてくと話ながら歩いていたので既に女子寮の廊下で幸いにして人気はなかったし厚いドアに挟まれているので部屋にいる人にも聞こえてはいないはず。



 誰かに聞かれでもしたら不敬罪も良いとこなので私もホッとした。




「全く、ローザったらお勉強は出来るのに周りのことに案外無頓着と言いますか……」


「うっ!」




 中々に刺さる言葉だ。




 おかしいなぁ~、全力で学園生活をエンジョイするって決めてたのに……。



 自分の事に没頭しすぎたみたい。

 そうよね、見目麗しい生徒会なんて完全に対象じゃない!!



 まだまだ全然エンジョイしきれていないわ!


 そんな素晴らしいメンツなら徹底的に追っかけするくらいじゃなきゃね!!




 ふんす! と一人気合いを入れて……肩を落とす。




 いや、別に追っかける必要はないか。

 メンバーの一人は身内なワケだし。

 それじゃただのブラコンだわよ……。




 私のおかしな挙動は、幸いにもアリーには気づかれていなかった。



 というのも、彼女は彼女で可愛らしくぷりぷりと頬を染めて、如何に日頃私が色々と気付かずに過ごしているのかを一つずつ列挙していたから。




「お隣のクラスの男の子が私達のクラスの○○さんにお花を渡したこととか、××さん達が空き教室でこっそり手を繋いでいらしたとか……キャッ」




 自分で言いながらも照れている様も可愛らしい……じゃなくて!




「どっちも色恋じゃないの……それに私、そのお話はちゃんと知っているわよ」



 そうそう、アリーが物凄いテンションで盛り上がっていたのよね。

 なんか読書の合間に相槌打ってたけど、ああ学生だなぁ~~って思ったわ。




「先生が休暇直前から、新しいブローチを着けていることは? 上級生の間で水色のリボンが流行っていることは?」




 細かい! というか良く知ってるね!?




「ゴシップはまぁ……あんまり知らないかもね」


「興味本位のゴシップでなくとも、流石に生徒会メンバーをアンソニー様しかご存じないというのは些か問題かと思いますの」




 うっ……。




「一緒に色々と盛り上がりたくても、ローザったら他の事に夢中で中々反応して下さいませんし……」





グッサー!!






 刺さった……今のは刺さったよ……。



 自分の事でいっぱいで友達の言葉を流すとか、我ながら酷い。




 なぁーにが学園生活エンジョイよ。


 友達と楽しく会話出来なくてどーすんのよ。


 ダメだ、こんなんじゃ、全然ダメ。




 ぐるりと身体ごとアリーに向き合って素早く手を取ると、キョトンとした瞳と視線がぶつかる。




「ごめんなさいアリー。私、心を入れ替えるわ!!」




 今までちゃんとお相手していなかった分、周りに興味を持っていろんな話で盛り上がるんだ!!

 と決意を新たにしたのだった。




 早速色々お話ししましょう! と鼻息も荒く、到着早々アリーとティータイムを楽しむことになったのだった。





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