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体重3ケタ越えのデブ子が超絶美女に転生したので好き勝手生きてみることにした  作者: 汐乃 渚


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お嬢様、運動をする



「うーん、困ったわ……」


「ローザお嬢様?」


「あ、うぅん。秋になったら美味しいものだらけで困っちゃうわぁ~って、ね」


「最近の食堂のメニューは秋の味覚尽くしになっているそうですね」


「そうなのよ。栗にキノコにカボチャに果物も! お肉だって狩猟解禁で色々と鹿だの猪だの野鳥だのと……量を控えめにしているとはいえ、全部試してると食べ過ぎちゃうのよ!!!」



 ただでさえ、試験終わりの解放感で美味しいケーキとかを堪能してるっていうのに!

 モンブランでしょ、ガトーショコラでしょ、季節のフルーツのパイにタルトに……あぁ、なんて罪な季節なのぉぉぉっ!



「秋の味覚を食べ尽くせないことにお困りなので?」



 わかってるくせに、あえてそんなことを言うエリーに「違うわ!」と鋭く返す。



「堪能しすぎて、最近ちょっと制服がピッタリしてきてるの!」



 少しばかり余裕があるくらいでちょうどいいデザインなのに、ぴっちりしてたら肉が増えたのがすぐにわかってしまうわ。



「まだまだ充分にローザお嬢様は細いと思いますが……」



 私の葛藤に、エリーがポツリと漏らす。



「それに、身体に合わなくなってくるのは当然ですわ。お嬢様は成長期の真っ只中なのですから。どうせ制服を新調する必要も出てきますので、お気にするほどのことでわありませんよ」



「気にするわよ!」



 胸がキツいなら嬉しいけど、腹回りは別問題に決まってるじゃない!



「そうでこざいますか」



 静かに微笑むエリーは、お嬢様も思春期だなぁという顔を隠しきれていない。




 この国の女性は、ダイエットに鈍感だ。


 ありのままが美しいという素晴らしい価値観で生きているわけなんだけど、素直にそれを享受したら前世の二の舞である。


 それだけは絶対に避けなければ!


 体型キープだのウエストのサイズダウンに躍起になるのだって、立派な青春の一ページよね。


 若いだけで充分に素晴らしいと思うけど、制服が似合うのも素敵でしょ?

 まぁこの学園の制服はデザインが良いからどんな体型でもよく見えるけど……。



 せっかく手に入れたこの身体、最低限の現状維持は必要として、もっともっとナイスバディーに磨きをかけたいところだ。



 でも美味しいものも食べたいなぁ……。


 毎日料理人が腕によりをかけて作ってくれてるんだもの。毎日じゃ飽きるかもと思うけど、全然そんなことないの。

 凝った料理からシンプルながら素材の味を存分に引き出した料理まであるんだから!



 必要以上に食事を控えるのはよろしくない。

 身体にも良くないし肌だって荒れるだろうしストレスも溜まるし。



 それはダメだ。



 細い身体が目的なんじゃなく、健康で美しくなくちゃ。



「となると……運動、しかないか」



ポツリと漏らせば、「それは良いお考えですね」とエリーも頷く。




スポーツの秋とも言うし、ちょっくら身体を動かしてみようか。




「それじゃあ早速、始めますか」




***




「ローザお嬢様、持ってきました」


「ありがとうエリー。そしたらそこのとこにひいてくれる?」



 エリーに寮の物置から取ってきてもらったのは、古いカーペット。


 比較的綺麗そうなのを持ってきてとは言ったけど流石お貴族様用の学園。

 古いって言っても全然普通というかなんでこれ交換した!? って感じのもので申し分ない。



 それを部屋の空いたスペースにひいてもらって……準備完了!




「あの、お嬢様? その格好は一体……?」


「いや、スカートじゃないのがこれしかなかったから。とりあえず今日はこれで良いかな~って」


「はあ……」



 変かな? 乗馬用の服に着替えただけなんだけど。


 この世界には当然、ジャージなんてものはない。


 広いクローゼットなのに、動きやすそうなシャツもズボンも無かった。

 あったのは何着も用意された制服に寝間着、簡易ドレスに完全武装タイプのドレスなどなど。


 簡易ドレスも動きやすいっちゃー動きやすいけど……まあ運動向きでは無いわよね。



 護身術習ってたときはスカート履いてる前提だったから、あえて運動着を用意する必要もなかったし。


 辛うじて用意しておいた服の中に乗馬用のものがあったから、とりあえずそれを着たというだけのこと。



 形から入りたいタイプだから、なんか動きやすそうな服欲しいな~。


 下働き用のシャツとズボンで良いんだけど……なんか却下されそうな予感。



 後でお願いだけしてみよっと




 さてさて、それじゃー始めてみますか!




 ラ○オ体操第一~~♪


 ちゃーちゃーらちゃちゃちゃちゃ、ちゃーちゃーらちゃちゃちゃちゃ、ちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃっ、はいっ!



「いーち、にーい、さーん、しっ、ごー、ろっく、しち、はち……」



 流石にちゃちゃちゃちゃちゃは一人で口に出すと恥ずかしいから、カウントだけね。


 それでもエリーの『何やってんだ、このお嬢様は?』という視線が突き刺さってるわけなんだけど!



 これは前世ではかの有名な、小学生が夏休みに毎日集まって集団で一糸乱れぬ隊列を作り出す例の体操だというのにっ!!!



 ……って、そこまでじゃないか。



 でもこれ、本気でやると結構いい運動になるのよね~。




「すーはー、すーはー」




 深呼吸までを一通り終えると、この身体は代謝が良いのか既に額からは汗が流れていた。


 準備運動のつもりだったけど、案外これだけでもかなり運動になるのかも?



 エリーに差し出されたタオルで汗を拭きつつ、そんなことを考える。




 いやいや、今日はとりあえず予定してた分まではやろう。



 次に移る前に喉を潤すのは冷たいレモン水……ではなく、少し冷ましたけどまだ温かいハーブティー。


 温めて代謝を促進しようという考え。

 前世のどっかで聞きかじった記憶である。


 まあ、出来ることはとりあえず守ってみようかなーと。




「ふぅ……じゃあ、次に行きますか」



 カップとタオルをエリーに渡すと、再び絨毯の上へ。


 あ、ちなみに裸足ね。

 バタバタするのもアレだし。それになんか『運動してる~』って感じる。


 元日本人だからかしら?


 まあいっか。




 例の体操の後には、某芸能人が産後ダイエットに成功したというので人気になった腰をグリグリ動かす……何だろ、ダンス? 運動? みたいなやつ。


 腰をメインで全身を動かすから、ウエストに効くはず。



 前世では長続きしなかったけど、今度こそ!



 ノリノリの音楽もなければかなりのうろ覚えながらもちょっと激しめに動いたり、ちょっと跳ねたりしながら一通りやってみたのだった。




「っはー、はー、汗スゲー……ははっ」




 滝のようにダバダバと流れてくる汗に思わず笑った。


 エリーはといえば、私の珍妙すぎる動きに目を回す寸前だった。




「お嬢様は……一体どこでそのようなことを……いえ、責めているのではございません。ただあまりにも、その、大胆な動きをなさっておりましたので」




 そりゃそーだ。


 足を見せるのははしたないって、基本的にドレスはくるぶしまであるし、制服やら丈の短いドレスだって絶対にタイツを穿かなきゃ許されないし。


 そんなお貴族様の世界で働いてるエリーだもの。


 私がグリグリと腰を前後だの左右だのに振ってるのは、こう言ったらアレだけどかなり下品な動きに見えてたんだろうなぁ。



 彼女が想像していた『運動』とはかけ離れたものだったに違いない。



 とはいえ、一人で出来る運動ってなぁ……。


 ランニングとか筋トレしか思い浮かばないし、走ったら胸が減るしそれぞれ変な所に筋肉が付きそうでちょっと、ねぇ。


 私みたいなご令嬢が乗馬服で一人で走ってたら変な目で見られそうだし。


 走るの好きじゃないし。




 でも例の体操もどきはともかくとして、後半エリーをドン引きさせてしまったのは揺るぎない事実なので、ちょっとこっちは考えなきゃ、よねぇ……。



 香油入りの風呂で汗を流しながら、次なる作戦に頭を悩ませるのだった。




***




 そうそう、運動着なんだけど、乗馬服はちょっとなぁ……とぼやく私を見かねたエリーが汗をよく吸ってくれるけど眩しい白に金糸で刺繍の入ったお嬢様仕様の運動着を特注で用意してくれたのだった。


 私の案を受けて、布を織る職人さんが伸縮性があって動きやすい布を開発するのはまだ少し先の話。




 この時の私は思いもしなかった。



 学園の生徒たちがこのジャージっぽい姿で例の体操もどきに真剣に取り組む日が来ることを……。





秋です。食欲と運動の秋、ですね。

もっぱら食欲ばかりになりますが……。


伏字にしましたが、例の体操のとことかもしご指摘があれば変えます。

お付き合い頂きましてありがとうございます。

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