つきのひかり
10年くらい前に自サイトに載せたもの(今はない)の再掲載です。
「ドンドン、ドンドン」
けたたましいノックが空き教室内に響く。
「ゆりかさん、隠れて。」
二人は机の下に潜り込む。
2年前、ゆりかが1年生のある冬の日の放課後だった。
担任の池上千早先生に頼まれて、資料作成の手伝いをしていた。
最初は教室内で行っていたのだったが、中途半端な時期に入校した新人男性教師
(仮にA氏としよう)に千早先生は狙われていた。
千早先生は瑠璃杏学園卒、女盛りの30代。夫はいるけど子どもはいない。
1年林檎組の担任で、専門教科は国語。
笑顔が素敵でかわらしく、綺麗な人。やさしくてきめ細かい指導は、人気がある反面
余計なおせっかいだと嫌う生徒と別れた。
白梅ゆりかは、瑠璃杏に出戻り入学し、独特の校風や知り合いも少なく心細い所に
千早先生に声を掛けてもらったのがきっかけで、すっかり好きになってしまっていた。
千早先生は、外見とは裏腹に気に入った生徒をこき使う面がある。
ゆりかはそれでもよいと、先生の仕事を手伝っていた。
最初は二人で平和に話しながら、作業をしていたのだが。
A氏が教室に入ってきて、
「千早先生、この書類の書き方を教えてください。」
同じ国語教師という理由か知らないが、千早先生に何かと話しかける。
最初は優しく教えていたが、下心みえみえで、最近は適当にあしらうことも増えた。
土曜日の放課後、今日は何故だか人気が少ない。
A氏はそんな日を狙っていたかのようだった。
「ねえ、千早先生。今度さー遊びに行きません?」
なに、そのなれなれしい態度?ゆりかは凍りついた。
「この本さー、いいと思わない?」
関係ないことまで話しかけてくる。
「ごめんなさい、忙しいから又後にしてくださる?」
と千早先生はやんわりと、A氏を避ける。
しかし、A氏はめげない。
しかも、二人の仕事を手伝うわけでもなく、邪魔をしてくるといってもいい。
「えと、ホチキスは・・・・。」
千早先生は道具を探す振りして、立ち上がる。そしてゆりかに、付いてくるよう
目で合図する。
「良かった。たまたま鍵を持っていたのよね。」
1年林檎組教室の隣の、隣。資料が保管されていて物置のような空き教室。
普段は鍵が掛かっていて、生徒は入ることは出来ない。目立たない場所にある為、
関心もないのだが。
千早先生とゆりかは空き教室に入り込む。
しかしA氏は執拗に追ってくる。
「ドンドン、ドンドン。」
「千早せんせーい。あそぼーよー。」
こども?
けたたましいノック音が教室内に響く。
机の下に潜り込む。
鍵を掛けているのだから、そこまでする必要はない。
どこか楽しんでいる様子もある。
特に、ゆりかはいつまでもそうしていたかった。
気づくともう外は暗くなっていた。
つきのひかりが、さしこんできてふたりを てらした。
もう追っても諦めたようだ。
(ところで仕事はどうなったの?)
そんな思いを掠めたが、なんだかどうでもよくなった。
空き教室に隠れて、ふたりはつきのひかりにつつまれていた。
ただ それだけのこと。
A氏は、気づいたら瑠璃杏学園を去っていた。
2度と現れることはなかった。
事実を基にとても想像を膨らませた話です。
意味不明だと思いますが、ご覧くださいましてありがとうございました。




