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四十四話「フォーリングスター・神風アタック!」

 フォーリングスター・神風アタックの全容をアテナから聞き、私は早速それを実行することにした。

 どうやらその技は、かつて私の祖父である天乃神朧とアテナの父であるゼーレ・フリューゲルにより創られた合わせ技だという。

 彼等の技を孫娘たる私と一人娘であるアテナが今この展開で繰り出そうというのだ。ちょっと胸がドキドキしてくる。

 聞いてみるとハチャメチャな技だったけど前例はあるし、何より系譜の末裔が繰り出すのならきっと大丈夫だ。私達ならできる。


「それじゃ月詠さん、やり方はさっき説明した通りだからね」

「りょう~かい!」

「ブラッドムーンちゃんも余力は無いだろうし、失敗は許されないよ!」

「わかってるって。 それより早くやってみようよ! それこそブラッドムーンちゃんが心配だし」

「そうだね……よし!」


 カンテラも荷物も置いて身軽になったアテナは、燃え盛るファイアブランドスピアを握りながら私に視線を向ける。

 口を強く結んで意を決したアテナは、一度だけ大きく頷くと――駆け出した。


「じゃあいっくよー!」

「えぇ、良いわよ!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 アテナは獣が疾駆するように力強く地面を蹴って飛び出すと、足場の地面は大きく抉れて小石を散らす。

 同い年の女の子じゃなくとも、これ程までにワイルドな叫びは聞いたことがない。

 アテナのことだから気合を入れる掛け声を叫ぶとは思っていたが、正直こんなに咆哮じみた雄叫びだとは思わなかった。左右の耳を貫通するような力強い迫力にちょっと驚く。

 みるみるアテナが近付いてくると、私はチョコバナナをにわかだけ上に向けるてグローブを付けた手で弦に手をかけた。

 そして――アテナが飛び跳ねてチョコバナナの弦へと着地する。

 するとアテナの勢いは止まらずに、引かれた弦は一層強く引かれて弓幹は大きくしなった。


「ファイアアアアアアアアア! シャアアアアアアアイン!」


 アテナが向こう側を睨みつけながら大声で叫ぶと、ぶれのないコマのように勢い良く回転し始める。

 弦に体重はかかっているが、しかし大半は助走の勢いで後方に流れている為に弓はあまり重くない。どちらかと言うと、後方に下がらないよう踏み込みを強くした方が良い位だ。

 回転を続けると徐々に遠心力が増し、摩擦で煙が漂い始めると焦げ臭さも伝わってくる。

 やがてアテナ自身が巨大な火の玉のみたいになると、その先端からアテナは顔を覗かせて私に指示を出す。


「さあ行くよ! 月詠さん!」

「はいぃぃぃぃい!」

「フォーリング!」

「スター!」

「「神風! アタァァァァァック!!」」


 そしてついに、フォーリングスター・神風アタックは放たれた。

 まるでカタパルトから射出されたように、砲台から打たれた弾丸のように、ブラッドムーンがホームランされた先へアテナは周囲を照らしながら突き進む。

 それは途中でモンスターの波に追いつく。

 雑魚を弾き飛ばしながらも突き進む火の玉状態のアテナの姿は、流れ星フォーリングスターと言うよりは隕石ミーティアと記した方が適切かに思われた。

 流れ星と隕石、意味合いとしては大差ないかも知れないが、フレーバー的には大差ありありである。

 つまり私達が繰り出した合体技は申し分無い威力で大成功と言う訳だ。

 隕石アテナが通過した跡には屍が累々と転がっており、いずれもブスブスと燃え続けながら焼け焦げた匂いが立ち昇っている。

 

「いやっほぅ! アテナさん、かっこいい!」


 そして誰もいなくなった。

 私が万歳をして叫んだ頃には既に私しかいない。モンスターは言うに及ばず今や肝心のアテナすらも遥か遠くである。

 カンテラで向こう側を照らすまでもなく、点在するモンスター達の亡骸が火種となりアテナの行く先を照らしていた。

 よくよく考えるまでもなく、こうなることはわかっていた筈である。


「はぁ……」


 嘆息交じえてしゃがみアテナの荷台を背負い、立ち上がろうと腰を上げると――


 ――お、おもっ!


 思わず後ろに倒れこんでしまった。ちょっと情けない姿なので誰にも見られなかったのは幸いだろうか。

 そして重ねて溜め息を吐く。

 私はこれから、ホームランされたブラッドムーンを追いかけるべくカタパルトのように打ちだされたアテナを追いかけねばならない。

 この大荷物を背負いながら、それも徒歩でだ。

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