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第1章   ~すべての始まり~

今も君の笑顔を忘れられないでいる。


君の笑顔でほっとする自分がいた。


君の差し伸べる手はいつも僕を助けてくれた。


君の存在が大きすぎて、運命にさえ逆らおうとした。


もしも願いが一つだけ叶うのなら、僕は君にもう一度会いたい。


今も僕は君の面影を探してる・・・・・・。

「おはよう」


「あ、おはよう」


いつもと変わらない会話。


いつもと変わらない風景、学校。


何も変わることなく当たり前のように朝がやってきて、1日がはじまる。


とある1人の青少年もいつもと変わらない生活をおくっていた。


彼の名は朝本拓也(あさもとたくや)


ごく普通の高校1年生である。


学ランを着こなし、さらさらとした癖毛の無い髪を金髪に染め、学ランの下から見える赤いTシャツは本人とよくマッチしていて似合っている。


そんな彼はいつも不愉快な顔をしていた。


彼には親しい友人もいなければ、尊敬する人物もいない。


ずっと今までにそう呼べる人は一人もいなかった。


小学生の頃も、中学生の頃もずっと一人ぼっちだった。


他人から話しかけられることもない。


それは現在進行形で今でもそうである。


それが彼を不愉快にさせる原因に過ぎなかった。


彼に友達ができないのはおそらく見た目のせいであろう。


彼は不良ではないが、いつもぱっと見そんな風に思われる。


そのため周囲の者は、よく拓也を不良と勘違し、彼と関わりをもとうとしないのだ。


拓也は、決して友達が欲しくないのではない。


むしろその逆で、ずっと友達が欲しかった。


しかし、作り方がわからないのだ。


それもまた一つ、余計に彼を不愉快させる原因であった。


楽しくない。


そう吐き捨てずにはいられないかった。


しかし今日からそうではない。


なぜかって?


それはひとつの出会いがあったから。


今、朝本拓也の物語が動き始める。








*****








―――放課後。


太陽が徐々に沈み、辺りが鮮やかなオレンジに染まる。


きれいな夕焼け空だ。


そんな中、一人ぽつんと校門を出てきた拓也は立ち止まった。


いつもの帰り道から帰ろうと思っていたのだが、今日はなぜか違う道を通って帰ることにした。


理由や意味なんて特にない。


彼のほんの少しの気まぐれである。


気分転換といったほうが正しいだろうか。


いつもと違う道の途中には公園がある。


特別広くはないが、休憩にはちょうどいい場所だ。


拓也が下校中にその公園を通りかかったその時ある。


一人の人影に気がついたのは。


(あれ?・・・・誰かいる)


拓也は公園内に目を留めた。


じっとその公園にいる人影を目を細めながら確認する。


人なんてめったに来そうにない公園だったので、拓也は不思議に思ったのだ。


少しばかり近づいたところで大体の格好は読み取れた。


見たところ男である。


まだ大人ではなく、高校生ほどの年齢に見える青少年だ。


拓也と同じように学ランを着こなしている。


交わることを知らない純粋な黒い髪と二枚目の顔。


だけど見たことのないやつだと拓也は思った。


どうやら他校の生徒の模様。


(もしかしたら俺より年上かもしれない)


身長と彼自身の雰囲気のせいか、青少年はとても大人びて見える。


そう思いながら公園を後にしようとした時、向こうにいた青少年が拓也に気がづいた。


そしてとたんに青少年は拓也にむかってにっこりと笑顔を見せ、手をささやかに振った。


(!?)


青少年に対し、拓也は驚いてそれに応じず走り出してしまった。


不自然に鳴り響く鼓動がうるさい。


どうすればいいかわからない。

   

そうするしか頭になかった。

   

こんなこと初めてだったから。


友達なんて一人もいなかった拓也にとって、こんなことありえなかったのである。


誰かから自分に手を振ってくれることなんて一度もなかった。


拓也はあまりにも突然なことにどうしたらいいのかわからなかったのだ。


もどかしい気持ちになってくる。


複雑な気持ちがこみ上げていった。


そんな気持ちになりながら彼はふと思う。


(それにしても何であんな場所に一人でいたんだろう・・・・)




 




        

*****









今日もあっという間に1日が終わりをつげようとしている。


母の事情により、拓也は今日の夕食をコンビニで買うことにした。


買ったものは肉まんとシーチキン味のおむすびをそれぞれ一個ずつ。


品一つ一つは定番であるのに対し、組み合わせは何とも奇妙である。


拓也はそれを帰りながら食べることにした。


そしてふと思いついた。


(昨日の公園で食べよう。そうすれば昨日の人にも会えるかもしれない。)


拓也はそう考えた。


拓也なりに昨日の行動からして、悪いことをしてしまったと自覚を持っているのだ。


そして昨日の出来事が忘れられなかった。


昨日からずっとそのことを気にしている。


日常は何もかわりはしないとずっと思い続けていたのにそれは違った。


むこうにとってはすごくささえなことだったかも知れないけが、拓也にとってはすごく驚くようなことである。


拓也は何より嬉しかったのだ。


すこしでも謝りたい彼は迷うことなく公園に向かうことにした。


 




 

       

*****








拓也は昨日通りかかった公園に到着した。


そしてきょろきょろと公園内を見渡す。


(あ、いたっ!)


昨日と同じ場所に青少年の座っている姿が拓也の視界にとびこんだ。


拓也の心が次第に弾みだす。


しかし、一瞬で体が硬直する。


昨日の出来事が頭をよぎった。


(そっか・・・・。俺、あいつのこと無視しちゃったんだよな・・・・・・)


初めて他人に微笑まれたことに対する喜びが支配していたはずの心は、一気に不安へと変わってしまった。


拓也は少し青少年に警戒しつつ近づいていき、彼の隣にそっと座った。


隣といっても彼との距離は1.5mほど離れている。


さすがにすぐそばに座るのはずうずうしいと思ったのだ。


それから拓也は先ほど買った肉まんを1口パクリ。


自分の口に肉まんを運だ。


そして数分後にのどが渇いた拓也は気づく。


飲み物を買うのを忘れていたことに。


あーあ、やっちまったと拓也は思いつつ、拓也は我慢した。


と、そのときだ。


拓也の右側から何かを差し伸べる手が見えた。


驚いた表情でゆっくりと拓也は右を向く。


差し伸べた手にはペットボトルに入った麦茶があった。


そして差し伸べる手の正体は隣にあった。


昨日手を振ったときのように微笑んでいる。


優しい笑顔。


「のど渇いてるんじゃない?麦茶でよかったらやるよ」


青少年はそう言って拓也に麦茶をすすめる。


戸惑った拓也だったが、こればかりは断れなかった。


断れなかったというか正直――――甘えたかった。


青少年のその優しさに甘えたかった。


「いいのか?もらっても・・・・・」


「別にかまわないよこれくらい」


拓也に優しく答える青少年。


このとき拓也は顔には出さなかったが、心の中ですごく喜んでいた。


こんなことが自分にあっていいのだろうかと、自分で自分を問う。


「ありがとう。助かる」


拓也も素直にそれを受け取り、お礼を言った。


すると青少年は、またにっこりと拓也に笑顔を見せる。


初めて他人に優しくされた拓也は嬉しさのあまり、正直泣き出しそうになった。


こんな展開になるなんて思ってもみなかったから。


ずっとあるはずもないことだと思い込んでいたから。


今の拓也には嬉しさでいっぱいだった。


「これお礼に嫌いじゃなかったらやるよ。シーチキンのお結び」


拓也は何か御礼をしようと思い、今度は青少年にお結びを差し出した。


「いいのか?もらっちゃって。お前のだろ?」


「いいっていいって。さっきのお礼」


拓也の表情は笑顔だ。


いつも不愉快な顔をしていた拓也が笑顔を浮かべたのだ。


「ありがとう」


手を差し出した拓也に少し照れた表情で青少年は拓也にお礼を言う。


「あの・・えっと・・・・昨日はごめん・・・」


今度は急に拓也が謝りだした。


「ん?どうした?なんで謝るんだ?」


青少年にはなぜ謝られたのか理解できていなかった。


そんな彼に拓也は理由を述べる。


「昨日さ、俺お前のこと無視して走りだしちゃっただろ?悪いことしたなぁって思って・・・・。謝りたくて・・・・・。ほんとにごめんな。本当はすごく嬉しかったんだ。ずっと俺友達いなくてこんなこと初めてで、びっくりしてどうしたらいいかわからなかった」


拓也が懸命に謝る姿を見て青少年は


「そんなことで謝んなくてもいいよ。全然気にしてない」


そういうと、また笑顔で拓也に言葉を伝え、そのまま手を伸ばした。


「?!っ」


青少年に頭をなでられた瞬間、拓也の顔が一気に真っ赤に染まった。


「俺、お前みたいな一生懸命なやつ、嫌いじゃないよ」


彼の優しい声と言葉に拓也の感情がこみ上げていった。


ずっと求めていた人。


その人が自分のすぐそばにいてくれている気がする。


そう思うと拓也は落ち着いた。


「俺の名前は『朝本拓也』っていうんだ。俺、お前の名前知りたい。教えてくれないか?」


「ん、俺か?俺は『空西輝(そらにしひかる)』だよ。」


―――空西。


拓也にはその名字に聞き覚えがあった。


少し気になったが、あんまり長く考え込んでいると悪いように思われてしまわれそうだったので、話題を変えることにした。


「なぁ、昨日もココに来てるってことはもしかして輝は毎日ココに来てるのか?」


気になった拓也は思い切って聞いてみる。


「そうだよ」


「なんでそんなにも毎日ココの公園にくるんだ?」


輝の返事のせいで、余計に気になってついつい拓也は深追いしてしまう。


「・・・・・約束したんだ。あの時ココで待ち合わせするって。だからずっと待ってるんだ。必ずココで会えるはずだから」


(待ち合わせ?だったらどうしてこんなに毎日待ってるのに相手は現れないんだ?)


疑問は次から次へと浮かび上がり、頭の中を飛び交う。


輝が言ってることはどこか変だった。


矛盾している。


「よし、そろそろ日が暮れて暗くなってきたし帰ろう」


そう言って輝は立ち上がる。


「あ、ああ。そうだな」


拓也はすこしと惑った表情を浮かべた。


(・・・・何かあったのか?)


一人で考えながらその場で輝と別れ、自分の家に向かった。










―――午後7時20分。


拓也は自宅に帰宅した。


予想通り家族はまだ家には帰っていなかった。


すぐ拓也は自分の部屋に向かう。


そしてゴロンッとベッドの上に横たわった。


『・・・・・約束したんだ』


あのときの輝の言葉が何度も拓也の中で交差していく。


輝は笑っていた。


しかしあの暖かな笑顔じゃない。


輝の別の笑顔。


それはどこか悲しいものに思える。


あのときの輝の表情を忘れることができなかったのだ。


(約束・・・・いったい誰と?いったいいつ?どうして?)


輝に聞きたいことがたくさんあったが、深く聞き込まないほうがいいのは拓也もわかっている。


何かあったのではないかと改めて思い返す。


自分には何もできないけれど、笑顔にしてくれた、たくさん優しくしてくれた輝の役に立ちたい。


そう拓也は強く思いをとどめる。


優しく接してくれた輝の悲しみを消し去ってあげたかった。


自分をどん底から救ってくれたように、自分も輝を助けてあげたい。


拓也にとって輝は、すでに大切な存在になっていたのかもしれない。


(こんなに他人と話したの、輝がはじめてだ・・・・・・!?)


拓也は思い出した。


「空西・・・・。そうか、思い出した。そうだったのか」











―――下校時刻。



天候は雨。外では時折雷が鳴り響ている。


「やだー!なんで雨なんか降っちゃうのよ」


「俺傘忘れた!ぬれて帰るしかねーのかよ」


高校生徒たちの非難の声が上がる。


そんな中、朝本拓也は校内にまだ残っていた。


彼はいつもいざという時のために、鞄に折りたたみ傘を一本入れていたので特別困ってはいない。


拓也は雨に濡れてもかまわなかった。


雨のことより違うことを考える。


空西輝のことである。


こんな雨の強い雷雨の中でも輝はあの公園にいるのだろうか。


拓也はただそれだけが心配でしょうがなかった。


輝は強い意志の持ち主。


それはよくわかっている。


一緒にいてすぐに確信した。


人を笑顔にすることのできる人。


だから―――――


(輝はあの公園にいる。)


意思が定まる。


傘を広げ、真っ先に走って公園へと向かった。










*****










「輝!・・・輝!!」


拓也は彼の名を呼び、公園の中へと入っていく。


拓也の予想はみごと的中していたらしい。


彼の姿はそこにあった。


しかし、どうも様子がおかしい。


輝はぐったりと顔を赤く染めた状態で横たわっている。


意識がない。


心配になって呼吸を確認すると、一応しているようだった。


「輝!大丈夫か?!輝!」


何度も叫び、彼の名を呼ぶが一向に反応する気配は見られない。


「こんなとこでくたばるんじゃねーぞ。輝、がんばれよ」


不安な気持ちに駆られながらも拓也は行動に移った。


自分の学ランを脱ぎ、それを輝の体を包むようにしてかぶせる。


(俺を暖かい気持ちにさせてくれたように俺も、俺も!)


何度も心の中で叫ぶ。


拓也は輝を信じている。


こんなことで負けないやつだと信じている。


こんなところで輝に倒れてもらってはどう恩を返せばいい。


どうやって輝の悲しみを癒せばいい。


(輝・・・・)












あれからどれぐらいたったのだろうか。


雨は嘘だったかのようにやみ、雲の隙間から青空と太陽の日差しが降り注ぐ。


「ん、拓・・・・也?」


気を失っていた輝は目をそっと開けた。


「よかったー。輝、大丈夫か?」


心配そうに拓也は尋ねる。


「俺は大丈夫。それより拓也・・・・びしょ濡れじゃねーか。ごめん・・・・・俺のせいだ。ほんとにごめん・・・・・」


「もうそれ以上何も言わなくていい。輝が俺に優しくしてくれたことに比べればこんなの大したことないよ。だから謝らないで」


拓也は怒ることなく輝に優しく伝えた。


「ありがとう・・・・・今日も来なかった・・・」


輝はぼそりと言う。


拓也はその言葉を聞き逃さなかった。


そしてこう言った。


「輝、ずっとお前が待ってる相手、来てくれることなんてないんだ・・・・・・・・会えるはずがないんだよ・・・・」


拓也が苦しそうな顔をする。


彼の言葉を聞いた輝の表情は一瞬でこわばった。


「なんで、そんなこと言うんだよ・・・・」


輝は顔をうつむかせて拓也に言った。


「だって輝が待ってる相手は3年前ぐらいに―――――――」


「違うっ!必ずココにきてくれる!たとえ何年かかっても必ずココに来る!必ず会える!」


拓也の言う途中で輝は怒鳴った。


想像を絶する輝の怒鳴り声。


見たことのない輝の姿だった。


「輝、お前の気持ちわからないわけじゃない。だけど、もうこんなことやめようよ。3年前ぐらいに、空西家の夫婦、妹はこの公園付近で交通事故で死んだ。その車に乗っていなかった長男だけは助かった。それがお前、空西輝なんだよな?3年前ぐらいに俺、ニュースで見たぞ。この事故をニュースで。輝の家族は3年ぐらい前に亡くなっている。だから・・・・だから・・・・ココにくることはない。輝に会いにくることはないんだよ。思い出したんだ、事件のこと・・・・。近くでおこった事件だからよく覚えてる。」


拓也は記憶力がよい。


その上、『空西』という名字が珍しかったため、余計に覚えていたのだろう。


心を痛めながらも拓也は輝に言い聞かせた。


この言葉はどれだけ輝を傷つけているか、どれほど輝を追いやっているか――――


嫌味や、傷つけるために言ったのでは決してない。


拓也はすべてわかっている。


しかし、言わない限りずっと輝はココで待ち続ける。


愛おしい家族を待ち続ける。


それが輝をぼろぼろにしそうですごく怖かった。


だから輝に告げたのだ。


(俺だって言うの・・・苦しいんだよ・・・・・)


拓也の言葉をまともに受けた輝は何も言うことができず、黙り込んでしまった。


しばらくの沈黙が続く。


それから最初に話しを振り出したのは輝のほうだった。


「拓也、ありがとう。もう拓也に全部話すよ」


覚悟を決め、輝はすべて拓也に打ち明けはじめた。


「ごめんな。つらい思いさせて」


「謝らないで。拓也は何にも悪くない」


二人の関係は崩れてはいなかった。


拓也は輝が自分に心を開いてくれたことにほっとした。


心の中で思う。


(こんなつらい助け方でごめんな・・・・)


そう思いながら拓也は輝の話しに耳をかたむける。


輝は語りはじめた。


「3年前の出来事だった。拓也の言うとおりだ―――――――」











輝は生まれつき体が弱く、病持ちだった。


小さい頃はなんども病院の入退院を繰り返し、そんな日々が中学1年生まで続いていた。


親は働くのだけでも大変であるのに、ずっと懸命に看病し、妹はそばでずっと見守ってくれていた。


そのおかげで輝は3年前の春、病状がよくなり、短期間だけ退院を許されたのだ。


ほんの少しだけの短い間だったが、輝にとってはかけがえのない幸せな時間だった。


しかしその幸せは神のいたずらだったのであろうか、悲しみの渦へとまきこまれる。


その短期間中に、一泊二日で家族全員始めての旅行をすることになった。


嬉しさのあまりに輝は飛び出し、待ち合わせのこの公園で家族の乗る車が来るのを待っていた。


しかし、ずっと待っても待っても――――車は来なかった。


次第に輝は心配になる。


そして近所の人から衝撃の事実をつげられた。






『輝君の家族がみんな事故で亡くなった』






あまりにも突然すぎて輝は受け入れることができなかった。


ついさっきまであんなに楽しく話していたのに。


どんなに短い間でも家族と笑顔でいられる時間ができて嬉しかったのに。


かけがえのない大切な人が一瞬で消えてしまった。


信じられなかった。


『すぐに迎えに行くからね』


最後に交わした母の言葉と笑顔。


まだはっきりと目の裏にやきついていた。



―――――――――ココにいれば家族に会えるんだ。



輝はどんなに時間がかかっても必ずココで待っていれば家族に会えると今でもそう信じている。


だからこの公園でいつも待っていた。


愛おしい家族に会うために。




そして気がつけばもう―――――3年の月日が経っていた。











全部言い終えると輝は大粒の涙を流し、声を上げて泣いた。


輝の味わった苦しみは自分にくらべてはるかに大きいものだった。


聞いているだけで苦しくなった。


そして拓也は初めて輝の泣き顔を知る。


どうして俺はこんなにも何もしてやれないんだろうか。


何でこんなにも無力なのか。


拓也はずっと自分を責め続けた。


こんなにも輝を癒してあげたいのにどうして何もできやしないんだ。


そう思うと悔しくて悔しくてたまらなかった。


輝の涙は止まらない。


こんなにも輝を助けてあげたいのに。


「!?」


輝は何かに自分が包まれたのを感じる。


暖かくて気持ちいい。


拓也が優しく輝を抱きしめたのだ。


突然のことに輝は泣き崩れた顔のまま脱力した。


「俺、輝に優しくしてもらったのに何もしてあげられなくてごめん。お前を助けてあげられなくてごめん。だけど聞いてほしいんだ。輝は絶対一人なんかじゃないよ。今日から俺がいる。これからもずっと輝のそばにいる。だからお願いだ。ずっと俺を輝のそばにいさせて」


正直な気持ち。


今それが、言葉と涙で輝に伝わっていく。


とうとう拓也も苦しくて泣き出してしまった。


輝に対する感謝の気持ちと自分の無力さに。


そして輝も拓也の背中に腕を回していった。


「ありがとう。拓也が俺のことをそんなに思ってくれてるなんて知らなかった。俺も拓也と一緒にいたい」


穏やかな表情で言われた拓也はさらに泣き崩れた。


これは現実なのだろうか。


夢じゃないのだろうか。


思いもしなかったことだった。


「俺、いつも入院してたから友達できなかったんだ。今でもずっと一人だった。だからそばにいたいだなんて言われたの初めてだよ。だから今すごく嬉しい。ありがとう拓也」


真心のこもった輝からの感謝の言葉。


それが拓也の心にぐっとくる。


拓也の瞳からは、嬉しさのあまりに涙がボロボロとこぼれ続けた。


孤独で冷たく冷めきってしまった自分を温めてくれる存在がすぐそばにあった。






――――――――君のぬくもりは、こんなにも暖かいんだね










人間はきっと、何かのきっかけで変わっていくのだろう。


彼らもその一人にすぎなかった。


まだ芽生えたばかりの若葉は、これから先どんな風に花を咲かせるのだろうか――――――







駄目元で書き始めた小説であり、これが人生初めて書いた小説でもあります。


もともと文才・国語力のない自分なので、間違った言葉を使っていたり、誤字脱字が多いかと思います。


大変読みずらくて申し訳ないです。



さて、記念すべき第一章はいかがでしたでしょうか?


この作品は"絆"と"泣ける"をテーマにしています。


とは言うものの、読者様の心に訴えかける・読者様に涙を流していただくという小説を書くのは難しいものですね。


次章からは、拓也と輝を中心に物語が発展していくと思いますので、もしよろしければ最後までお付き合いしていただければ幸いです。



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