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寒葵と薔薇  作者: 大雪
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無理矢理婚の犠牲者達

略奪婚というのがある。

これは俗に結婚の相手としての女性を他部族から略奪してくる結婚形態である。


辻取り婚というのがある。

これは俗に沢山人が見てるところで盗まれたら諦めなければならないという考えのもとに、言ったもん勝ちの結婚形態である。


ちなみに、凪国の王妃様はこのどちらにも入らない。


なぜなら、王妃様は無理矢理婚。


無理矢理婚――その名の通り、無理矢理の結婚だ。

相手の意思なんてなんのその。

奪ったもん勝ちだぜ、イエイ!!と、力ずくで強引に自分の花嫁にしてしまうのである。


いわゆる、究極の最悪な結婚形態であるのは間違いないだろう。


どうして素直に花嫁になったんですか、王妃様。

当時王妃様は十二才。

誰か止めてくれる方は居なかったのか、法律でもいい。

しかし当時は法などあって無きに等しいもの。


あの最強かつ最恐の陛下を止める事は出来なかったのだろう。


しかし……


「どうして世界が安定した今、無理矢理婚が横行してるんですかぁぁぁっ」

「してないわよ、そんな危険なもの」


そう言い切る茨戯様に私は涙目で睨み付けた。


どの口がそう言う?


「将来は働き者の優しくて素敵な人と結婚して平凡だけど幸せな家庭を築くつもりだったのにぃぃぃいっ」

「あ~ら?アタシも働きものだからいいじゃない」

「良くないですっ!!」


世の中には分不相応という言葉があると言えば、茨戯様が鼻で笑う。


「アタシには関係ないわ」

「この人横暴です!!鬼です、悪魔ですっ」

「だから本当に良い度胸してるわね」

「家に帰してえぇぇぇぇっ」


とにかく家に帰りたかった。

そしてこれは全て悪夢だと決めつけていつもの日常に戻りたかった。

きっと家に帰って自分の布団で眠って起きれば、そこにはいつも通りの日常が広がっているだろう。


「広がってるわけないでしょう」


ばっさりと切り捨てられた。


鬼が居る、此処に悪魔がいる。

絶世の美女(男だけど)の皮を被った悪魔だ。


「実家への援助だってしてるんだから、寧ろ感謝して欲しいわね」

「買収ですそれっ」

「健全なる取引と言って欲しいわね」


取引って言ってる時点で確実に買収だ。


「それより、とっとと起きて顔を洗いなさいな。時間ないんだから」


そうして私は寝台から引きずり出された――裸のまま。


え?さっきまで何していたかって?


そんなの勿論言うまでもない


喰われてたんですよ!!


「ってか、このアタシがこれだけ愛でてあげてるのに色気も出なければ体つきも変わらないわね」


離婚する


絶対に離婚してやる


とりあえず近場の裁判所に駆け込もうかと考えた私だが、すぐにそれを却下した。


この方の事だ。

裁判所に手を回す事なんて朝飯前だろう。


慰謝料はいらないと言ったって離婚など出来るわけがない。


「うぅ……何も知らなかった頃に戻りたい」

「人は沢山の事を知って大人になっていくのよ」

「人じゃないです、神です私達」


とはいえ、はっきりいって人間とやってる事はそうたいして変わらないだろう。

しかし――人間の場合はもっと違うだろう。

普通こうやって無理矢理婚の犠牲になるのはいつだって絶世の美女達だ。


私のような地味で平凡な容姿の女はお呼びではない。


「朝食はしっかり食べなさいよ」


強引に食卓につかされると、茨戯様が私に次々と料理を差し出してくる。

その見た目とあいまって、なんだかお母さんみたい――って、こんな美人すぎるお母さんはいないか。しかも、茨戯様は男だ。


「こんなに食べられないです」


みるみるうちに、取り皿に山盛りとなった料理。

どれもこれも美味しそうな匂いがしているが、朝からこんなに食べられる筈がない。


「はぁ?こんなのあっという間じゃない」

「無理です!!私の朝食なんていつもカップラーメンなんですから」


一つ八十五円の大特価。

チキン味、シーフード味の二種類しかないが、なかなかの美味であるオリジナルブランドのカップラーメンは私の原動力だ。


安い、上手い、お手軽と三拍子揃っている庶民の味方。


「……カップラーメンが食べたい」


ここの料理は美味しい。

見た目も味も抜群だ。

だが、時々ジャンクフードが食べたくなるのが庶民の常である。


その時、カチャリと茨戯様が箸を置いた。


「あんた……つまり、カップラーメンの方が上だといいたいのね?」

「上っていうか、好きなのは」

「アタシが作ったこの料理よりも上だと言いたいのね?」


あ、地雷ふんだ。

ってか、この料理って茨戯様が作られたんですか――お嫁さんいらないじゃないですか、絶対。


「良い度胸してるわね、本当に」


ああ、その言葉を言われるのはこれで何度目だろう?


「この……凪国でも名高い料理上手の称号を得ているこのアタシの料理より、カップラーメン」

「ち、ちちちちちが、そうじゃなくって」


否定するも遅かった。


「じゃあ、食べた後は運動しましょうね~」

「いやあぁぁぁぁぁぁぁっ」


急ににこやかになった茨戯様にホッとするなんて馬鹿な事はしない。

だが、逃げ切る前に私は捕獲され、そのまま寝室へと引きずられていった。



それから三日間、私は寝室どころか寝台から降りることすら出来なかった。



ちなみに、他に無理矢理婚の犠牲者としては、蒼麗と蒼花の母親とかがいます♪

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