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真相編

 ええ、あれは事件があった翌日のことです。


 もともと、うちの妻と編集の彼が不倫関係にあったことは察していました。それでも、わざわざ事を荒立てるようなことはせず、黙認していたんです。


 それがあの日の朝、夜中に彼から電話が入っていたことに気がつきました。留守電を確認してみたところ、「彼女に殺される、助けてくれ!」……と。


 慌てて妻を問いただしました。すると、泣きながら白状しましたよ。前日の晩に彼と会い、口論になったはずみで殺してしまった、とね。


 ちょうどその時にテレビで、編集が何者かに殺害された、というニュースが流れていました。私はひとまず妻に遠くに逃げるように言いました。なぜそうしたのかは自分でも分かりません。不倫されてもなお、彼女に対する情がまだ残っていた、ということなのでしょうか。


 妻はすぐに家を出て、残った私は、証拠の隠滅を。妻が震える手で差し出した血まみれの包丁を袋に入れて、とりあえず猫用こたつの中に押し込みました。


 妻が淹れようとしてくれていた二人分の紅茶をどうするか考えていたところで、洗濯機が鳴りました。何事もないことを取り繕うために、急いで干しました。干すときに、Yシャツのしわを伸ばして干すなんて、普段やらない私は知りませんよ。刑事さんは知ってましたか?


 大慌てで洗濯物を干し終わったあと、スマホがどこにもないことに気がつきました。あれには、編集からの留守電が保存されています。失くしたとなれば、一大事です。


 私は必死になってスマホを探しました。今になってみれば何のことはない、右手にスマホを握り締めた状態で、ない、ない、と探していたのですから、お笑いですよね。


 結局スマホは見つからず、いや、そもそも失くしてはいなかったんですけど……玄関を探しているときに一枚のチラシが目に入りました。「なんでもやります、気軽にご依頼ください」。これだ、と思いました。


 すぐにその深謀探偵事務所とやらに電話をしました。今思えばこのタイミングで探偵を家に招くなど危険極まりない行為なのですが、その時はスマホを何としても見つけないとと思って必死だったんです。


 電話を切ると、そこで玄関が荒れていることに気がつきました。妻が急いで出て行ったからですね。靴箱から靴がこぼれ落ち、何か異常が起こっていることは誰が見ても明らかです。


 私は玄関を慌てて片づけました。とはいえ、もともと靴箱がどうなっていたかなんて知りません。適当に詰め込んだ結果、少々不格好になってしまいましたが仕方ありません。


 スマホを無意識に靴箱に置いてしまったのはその時でしょうね。慌てたばかりに、ホームズがやってきてスマホの上に座ったことすら気がつきませんでした。恥ずかしいことです。


 その後のことは、和戸村さんのご説明の通りです。私の知っていることは、これですべてです。


 妻に逃げるよう促したのは、この私です。結局、その足で自首しに行ったことまでは想定外でしたが……。それに、刑事さんもおっしゃっていましたが、編集の彼も相当な遊び人で、妻以外の相手もいたようですね。


 もちろんそんなことで罪が軽くなるとは思っていませんが、もし機会をいただけるのであれば、夫婦ともども深く反省し、罪をつぐなわせていただきたいです。


 今思えば、これでよかったんだと思います。本当は最初の時点で素直に届け出るべきだったのに、どうしても踏ん切りがつきませんでした。さらにひどい事態に発展する前に背中を押してくれた、深謀先生には感謝してもしきれません。


 もしよろしければ、芥川が礼を言っていたと伝えていただけないでしょうか。どうか、よろしくお願いいたします。


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