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山本タクミ(20)/配信者③

「でさ、目の前でテレビ壊してニコニコしながらわけわかんない話ずーーーっとされてさ、困っちゃったよ」


『そこ、バグが出るポイントだからしっかり』


『頭のおかしい人で確定w』


『わけわかんないってどんな話?』


『今日はちゃんとゲームしとるやん』


「えーっと、古いものには悪霊が宿るとかなんとか。それを壊すのがおじさんの仕事なんだってさ。結構武骨な感じっていうか、真面目そうで、でも人当たりイイ感じのふつーのおじさんだったからさ、余計に不気味でヤバさ全開って感じだった」


『デムパなひと』


『一人で寂しくて構ってほしい人なのかも』


『ゴミ屋敷の住民も寂しがりっていいますもんね』


『そういうおっさんにはなりたかねえな』


「で、そのおじさんがバーッて喋ってたら、どこからともなくもう一人男が出て来て、なんだろ、年齢不詳な感じのつり目のフチなし眼鏡かけた人なんだけど、その人エセ関西弁みたいな、芝居がかったうっさんくさい話し方の人でさ。こっちはこっちで怪しさぷんぷんで、俺もうおなかいっぱいだったわ」


『じゃあまんじゅう食うな』


『エセ関西弁とか恥ずかしい』


『どっちにしろアブナイ人達』


「ちなみに、この饅頭はそのエセ関西弁のお兄さんからもらった饅頭」


『毒でも入ってるんじゃ』


『いいな、うまそう』


『知らない人からもらったもの、怖くて食べれないです』


『よく食えるな』


『田舎あるある、知らん人から食い物もらう』


「そうだよ、饅頭に罪はないだろ。それに賞味期限だって大丈夫だったし、味もまあ、ふつーの茶饅頭って感じ」


『饅頭はいいからはよゲームしろw』


『賞味期限なんてどうとでも詐称できる』


『パッケージだってどうにでもなるもんな』


「そんな面倒なことしないっしょ。だいたいそんなことして嫌がらせする意味がわかんねーだろ」


『隣が空き家だと思ったのに人が住んでてふざけんなゴラァの腹いせ』


『好き勝手やりたいからはよ出てけってことじゃない?』


『ここのリスナーには他人を信じれる人間がいない』


「ま、この饅頭は大丈夫だろ。けどなぁ、外に出る度、あのおじさんに話しかけられるのかと思うとなんかちょっと憂鬱だわ。いちいち面倒じゃんか、世間話とか。あっちは人間に飢えてるのかもしんないけど、こっちは配信で足りてるっつーの」


『お主も寂しいやつよのう』


『え!?』


『顔、顔』


『コミュ障の主にはリスナーくらいがちょうどいい』


『ちょっと今顔映りませんでした?』


『俺も見た』


『女の顔っぽかった』


『は? 見間違いだろ?』


『違うだろ、鏡の主の後ろに人通っただろ』


『何々? 何があったの?』


『顔だよ顔』


『人が映った』


「ちょ、何? 怖いんだけど。コメも気になるけど待って、これ、何? バグ?」


『ゲーム画面もおかしい』


『恨みを持った女が部屋に居ます』


『このゲームってこんなバグあった?』


『アクションゲームでホラー演出ってどうなの?』


『新手のバグ?』


『俺の知ってるバグはここじゃないんだけどな』


「え、もしかして俺、新しいバグ発見しちゃった? まじ!? ちょ、すごくね? こんなやりつくされてきたゲームでバグ見つけるとか、俺、天才」


『調子に乗るな』


『再現したいからアーカイブよろ』


『さっきの顔もきっと映ってる』


『そんなの見間違いだろ』


「どっちにしろオイシイわ。まだ発見してないバグにしろ、謎の顔が映ってても、どっちにしろ撮れ高に違いないからな。それにしてもこのバグ、怖いんだが」


『操作できるの?』


『ゲーム本編となんの関係もなさそう』


「ただの女の顔だもんな。操作は……。んー、ちょっと無理かも。色々やってるけど」


『特殊バグの特殊コマンドがあるんかも』


『怖いので落ちます』


『不気味だな~』


『背後も確認しろよ』


『部屋、ほんとに一人だよね?』


「うーん、わからんな。みんな、ちょっと調べてみてくれ。ここから復旧するやり方。その間、俺は一服するから」


『お前も調べろ』


『人使い荒い』


『怠慢』


『早く部屋から出た方がいいと思います』


『クソ配信者』


『呪われろ』


「俺はもしかしたら未発見のバグを発見したかもしれないっていう功労者なんだから、一服するくらい許されるだろ。……それにしても、このバグが発生したタイミングで、コメント流れて、えーっと、どれだ……。これか。……女の顔を見たってやつと、俺の後ろを人が通ったって二種類あるな。えー、怖いこと言うなよー」


『家に曰くでもある?』


『どっちも嘘松』


『俺は女の顔見たよ』


「俺んち、前も言ったけど親父の実家で、古いっちゃ古いけど、なんていうの、ふつーの住宅だよ? でかい田舎の屋敷みたいなの想像しているやついたら、それは間違いで、平屋のちょっとでかいふつーの一軒家。見た目も古いけど、古めかしいとかお化け出そうって感じじゃないし」


『一族にまつわる呪いとか』


『女絡みでなんかした?』


『恨めしいそうです』


『後ろ確認しろよ』


「ないない。親父もじいちゃんもふつーのサラリーマンだし、浮気したりとか、そういう話も聞いたことないし。俺だって彼女なんていたらこんなことしてないわけだし。この部屋だって、俺の後ろにはコンセントの抜けた年代物のブラウン管テレビと、多分ばあちゃんが使ってた古い箪笥と、棚の上の日本人形ぐらいしかないぞ? この部屋の雰囲気もさ、俺の背景として配信に乗せたかったんだけど、上手く画角に入らなくて断念したんだよね。そこはちょっと悔しいとこ」


『急に寂しい話』


『戸締りは?』


『日本人形は微妙に見える』


『ほんとに一人?』


『かわいそうな配信者の末路』


「だから、この家にはなんもないと思うんだよね。俺だってずっと子供の頃から来てるけど、変なこととか一度も起こったことないし。じいちゃんもばあちゃんも死んでるし、両親はこっち来てないから俺一人しかこの家に居ないし。まあ、なんかの見間違いだろ? とりあえず、アーカイブ確認して、もしほんとになんか映ってたら切り抜いて上げとくわ。もちろんバグの方もな。ところで誰か復旧方法わかった?」

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