「時の狭間で」
時計の針が静かに進む音が、凛の心臓の鼓動と重なって響いていた。
「運命の分岐点……」
怜の言葉が頭の中でこだまする。
「私は……何を選ぶべきなの?」
その瞬間、時計の針が激しく震えた。次の瞬間、凛の目の前に異世界のような光景が広がった。
広がる夜空、輝く星々、そしてどこか遠くで聞こえる鐘の音——。
気づけば、彼女は見知らぬ場所に立っていた。
「ここは……どこ?」
目を開けると、凛は黎の前に立っていた。
「君はもう選択を始めている」
「……どういうこと?」
「この時計が示す未来がある。でも、それは必ずしも君にとって良いものとは限らない」
「私は何をすればいいの?」
「真実を知ること。そして、自分で答えを出すんだ」
黎は手を差し伸べる。
「信じる道を選びなさい。そのために——」
彼の言葉が終わる前に、凛の視界が歪み始めた。次の瞬間、彼女の体は吸い込まれるようにして、現実へと戻っていった。
凛が再び目を覚ますと、怜がじっとこちらを見つめていた。
「時間がない。君が探している答えは、この町にいる老人が知っている」
「その人は……?」
「過去と未来を行き来する者——彼なら真実を語るだろう」
凛は迷わず立ち上がった。
「今すぐ、その人に会いに行きます!」
怜は頷きながら、小さなメモを手渡した。
「この住所に行けば会えるはずだ。ただし、彼が全てを話すとは限らない。君が試されるかもしれない」
「試される……?」
「運命の選択をする者には、それなりの覚悟が求められる」
凛は時計を握りしめ、深く息を吸い込んだ。これは自分自身の物語なのだと、彼女は再認識する。
時計の針が、一秒一秒と進み続けていた。
水瀬 凛(19)
大学1年生。好奇心旺盛だが、自分の過去に関しては意外と無頓着。銀時計を拾ったことで運命が狂い始める。
黎(???)
夢の中で現れる謎の青年。凛に「一度愛した」と語るが、その真意は不明。彼の正体とは?
朝霧 怜(22)
アンティークショップの店主。端正な顔立ちと冷静な物腰だが、時折寂しげな表情を見せる。黎にそっくりな容姿を持つ。
時守(???)
銀時計に関わる存在。彼の言葉には、凛の記憶を取り戻すヒントが隠されている。