「運命の選択」
凛は怜の言葉を反芻していた。
「記憶こそが、私の運命を決める……?」
何かを思い出すことで、自分の未来が変わる。だが、その「何か」がわからない。
「怜さん……私は何を忘れているんでしょうか?」
怜は静かに首を振る。
「それは、君自身が探すものだよ」
その言葉が、彼女の胸に深く突き刺さった。
帰宅後、凛は銀時計をじっと見つめた。時計の表面には見慣れない文字が刻まれている。まるで暗号のように、彼女には読めなかった。
「もしかして……これが鍵?」
それを解読すれば、何かがわかるのかもしれない。
その夜、凛は再び夢の中にいた。
黎が彼女を待っていた。
「君が知るべき真実に、もうすぐ辿り着くよ」
「私が……知るべきこと?」
黎は優しく微笑んだ。
「でも、君はそれを受け入れる覚悟があるのかな?」
凛の心にざわめきが広がる。何か大きなことが待っている——そんな予感がした。
黎は手を差し出した。
「この扉を開けば、君の記憶の一部が戻る」
扉?
気づけば、彼の後ろに大きな黒い扉があった。
「この扉を……?」
凛が手を伸ばそうとした——
目を覚ますと、凛の手にはまたしても銀時計が握られていた。
「……これは、何を意味しているの?」
もう一度、怜のもとを訪れた。
「怜さん……私はこれからどうすれば?」
怜は少し考え込んだ後、微笑んだ。
「選ぶんだ。自分の道を」
「自分の道……」
その言葉が胸に響く。
だが、その選択とは一体何を意味しているのか。
「この時計が示すものは、単なる記憶じゃない。未来への道筋でもあるんだ」
「未来……?」
怜はゆっくりと頷く。
「この時計は、過去と未来を繋ぐもの。君が思い出すことができれば、選ぶことができる。そして——」
彼は静かに時計を指差した。
「運命の分岐点が訪れる」
その言葉の意味を理解したとき、時計の針が再び動き出した——。
水瀬 凛(19)
大学1年生。好奇心旺盛だが、自分の過去に関しては意外と無頓着。銀時計を拾ったことで運命が狂い始める。
黎(???)
夢の中で現れる謎の青年。凛に「一度愛した」と語るが、その真意は不明。彼の正体とは?
朝霧 怜(22)
アンティークショップの店主。端正な顔立ちと冷静な物腰だが、時折寂しげな表情を見せる。黎にそっくりな容姿を持つ。
時守(???)
銀時計に関わる存在。彼の言葉には、凛の記憶を取り戻すヒントが隠されている。