「時の誓い」
試練の間を抜けた先には、広大な空間が広がっていた。天空には無数の歯車が回転し、時を刻む音が響いている。その中心に、銀色の扉が静かに佇んでいた。
「これが……最後の扉?」
凛は、隣にいる青年と視線を交わす。彼の瞳には決意が宿っていた。
「この扉の向こうに、時間の核心がある。でも、その前に最後の試練が待っているはずだ」
青年の言葉が終わると同時に、扉の前に黒い霧が渦巻き始めた。その霧の中から、黒い鎖をまとった影が現れる。
「これは……」
影の中心には、凛自身の姿が映っていた。幼い頃の凛、孤独に耐え続けた少女の姿。
「私……?」
黒い凛は冷たく笑った。
「お前は何も変わっていない。誰かに支えられなければ前に進めない弱い存在のままだ」
鋭い言葉が胸を突く。だが、その時、青年がそっと凛の手を握った。
「君はもう一人じゃない。僕がいる」
彼の言葉と手の温もりが、凛の心を震わせる。
「私は……変わる。時間に縛られるのではなく、自分で未来を選ぶ!」
凛がそう叫ぶと、黒い影が光に包まれ、消えていった。
試練を乗り越えた二人は、銀色の扉の前に立つ。
「いよいよ……」
凛はふと青年の顔を見つめた。彼の存在が、これほどまでに自分を支えていたことに気づく。
「……ありがとう。あなたがいなかったら、私はここまで来られなかった」
青年は優しく微笑む。
「君が強くなったんだ。僕はただ、君のそばにいたかっただけだよ」
彼の言葉に、凛の胸が高鳴る。彼の存在が、自分にとってどれほど大きいものなのかが、はっきりと分かる。
「……ねえ」
凛は勇気を振り絞り、青年の手をぎゅっと握る。
「もしこの扉の先で、すべてが終わったとしても……私たちは一緒にいられるの?」
青年は驚いたように目を見開いたが、次の瞬間、優しく微笑んだ。そして、彼はそっと凛を抱きしめた。
「どんな未来になっても、僕は君のそばにいるよ」
その言葉に、凛は涙をこらえきれず、彼の胸に顔を埋めた。
二人はゆっくりと扉を押し開けた。
そこには、時の核心が待っている。
だが、それと同時に、新たな選択が二人を待ち受けていた——。