「巡る運命の歯車」
眩い光が収束し、凛は静かに目を開けた。新しい世界の風がそっと彼女の頬を撫でる。どこか懐かしいようで、しかし全く違う時の流れを感じた。
「ここは……?」
辺りを見回すと、今までいた世界とは異なる街並みが広がっていた。建物の形、空に漂う時計塔の歯車、そのすべてが異質でありながら、不思議と心が落ち着いた。
「君は、もう新しい時間にいるんだよ」
背後から響いた青年の声に、凛は振り返った。彼の微笑みは以前と変わらないが、その瞳には深い決意が宿っていた。
ゆっくりと歩き出しながら、青年は凛に語りかける。
「この世界は、君が選んだ未来の一つ。けれど、それはまだ完全なものではないんだ」
「……どういうこと?」
青年は遠くの空を見上げた。そこには巨大な時計盤が浮かび、ゆっくりと回転していた。しかし、その一部がひび割れている。
「時間の歯車は常に動いている。でも、この世界には欠けたピースがあるんだ。君がここにいる理由は、それを見つけること」
凛は静かに頷いた。彼女の胸には、何か使命感のようなものが生まれつつあった。
青年と共に街を歩いていると、ふとした瞬間に彼の指が凛の手に触れた。その温もりに、彼女の心が少しざわつく。
「……!」
「寒い? こっちへおいで」
青年は優しく微笑みながら、凛の手をそっと引いた。その瞬間、彼女の鼓動が早まる。どうしてこんなに彼の存在が近く感じるのだろう。
「私は……」
言葉に詰まる彼女の心情を察したのか、青年は少しだけ照れくさそうに笑った。
「大丈夫。焦らなくていいさ。僕たちは、これから一緒に時間を紡いでいくんだから」
彼の言葉が、心に優しく響く。凛は頷き、彼の手をそっと握り返した。
二人が向かったのは、この世界の中心にそびえる巨大な時計塔だった。そこには、何か秘密が隠されている。
「この扉の先に、時間の歯車の核心がある。けれど、簡単には入れない」
扉の前に立ち、青年は真剣な表情になった。扉には不思議な紋様が刻まれており、そこに手をかざすと青白い光が溢れた。
「……この紋様は?」
「時間を司る者だけが開くことができる扉。けれど、僕一人では力が足りないんだ」
凛は戸惑いながらも、自分の手を扉に重ねた。その瞬間、扉が大きく震え、ゆっくりと開き始める。