~プロローグ~
どこまでもどこまでも続く暗闇。
その中に一つだけあるわずかな光を求めて「私」は走っていた。
けれど、走っても走っても追いつくどころか離されて、永遠にも感じられるような永い時をずっと、
ずっと走っていた。
(あの光はきっと、外から、出口からもれている光。)
ただ、そう信じて。
(いつになったら着くんだろう・・・・・・。)
「私」はもう諦めかけていた。錯覚か、幻覚か前よりも強くなっている気がする。
だんだん、だんだん、目を凝らさなければ分からないほど少しずつ。
(あれ・・・?もしかして距離縮まってる・・・?)
違う。気のせいではない。現実にあの光は前のものよりも、強くなっている。
(このまま、このまま走り続けていればきっと・・・!)
__この暗闇から抜けられる・・・!
ガシッ ドタッ
「私」は盛大にすっ転んで「いたぁ・・・」と、うめいた。
この暗闇なので見えたわけでわないが足に何かが絡まっているらしい。
急いで外そうとするがなかなか外れない。そうこうしているういに暗闇に目が慣れてきた。
足に絡まっているものの輪郭がはっきりと見えるようになる。
「・・・・・っ・・・!」
その見えたものに対し、「私」は息を呑む。
驚きではなく、・・・恐怖で。
足に絡まっているものは、正しくは絡まっているのでは、なかった。
・・・しがみ付いて、掴んで、いるのだ。
その・・・骸骨の、骨の、手で。
逃げたいと思うのに体が動かない。
その隙にまだいたらしい骸骨達が「私」の両手足を拘束していく。
本来なら「私」はこの骸骨達に・・・「私」せいで死んでしまった人たちからの報復を甘んじて受け入れなければならない。
けれど。
「私」は今まで溜めていた魔力を一気に爆散させ、骸骨達を振り払いまた、走り始めた。
「私」はあの光の元へ行かなければならない。
__もう、失うのは、嫌だから。
諦めず捕まえに来る骸骨達を先ほどと同じく魔力を爆散させることで蹴散らしながら、「私」は
「白銀の髪」を振り乱し走りつづける。
内心で必死に謝りながら。
走りながら、考える。
違和感を感じてはいなかったがいつの間にやら目的が「この暗闇から脱出すること」から「あの
光のもとへ向かうこと」にすり替わっている。
否。すり替わったわけでわない。最初から目的は後者だった。
馬鹿な「私」はただ、あの骸骨達と遭遇して自分の失敗を思い知りたくなかっただけだ。
この暗闇から脱出すれば骸骨達はおそらくもう来ない。そして、この暗闇から脱出することは
同時にあの光のもとへ辿り着く事を意味する。
だからこそ、あんなにも必死に走っていた。
けれど、もう、いい。
失った人は還らない。
兄や両親にいくら謝っても、もうどうしようも無いのと同じように。
ならば、生きている人間を「私」の大切な人を、あの日の、誓いを。
己の全てを懸けててでも絶対・・・
__守ってみせる・・・!
あの光はもう、すぐそこだ。
(間に合って・・・っ!!)
光に向かって最後の一歩を踏み出す。
瞬間。変わる、世界。
目に入る色は先ほどまでの漆黒の闇ではない。
・・・鮮血と紅蓮の劫火の、赤。
その光景を見、「私」は自分が間に合わなかったことを、悟った。