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【コミカライズ・書籍化】聖女様をお探しでしたら妹で間違いありません。さあどうぞお連れください、今すぐ。【連載版】  作者: 伊賀海栗
③タルカークにて

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3-51 彼はピュアなのだそうです


 一時はどうなることかと思いましたが、セレスタン様たちが助けに来てくれてからは五分とたたずに解決しました。

 その代わり、ブノワさんはギャフンと言わされたみたいだけど。


 魔術の効果を癒しの御業でどうにかしようとも思ったのですけど、セレスタン様にもイドリース殿下にも反対されました。これ以上、治癒について知ってる人を増やすなって。


 なので、お庭で怪我の手当てをします。


 ブノワさんはセレスタン様から剣の柄で強かに殴られた頭を手でさすり、深くため息をつきました。


「ナウファル殿下に魔術を使われたのは、さっきお会いしたときで間違いないッス。変な声が聞こえて……。そのあと地下に行ってから、こう、言葉が頭に響き渡るっつうか」

「聖女を守れって?」

「違います。えっと、その、誰も見てないならやりたいようにやればいい、みたいなそういう」


 ブノワさんの訴えに、セレスタン様とイドリース殿下が顔を見合わせます。

 ね、なんか不思議ですよね。


「だから私が見てるって言ったんですけど、ブノワさんは『そうじゃない』って言うから」

「そうじゃないんすよ。だって俺がやりたいことって……その……ジゼル様の笑顔が見たいとかなんで」

「えがお」

「でも騎士である俺にできることって守るくらいしか思いつかなくて」


 再びセレスタン様とイドリース殿下が顔を見合わせました。


 それからセレスタン様はクククと笑い出し、イドリース殿下は可愛い女の子みたいに口元を手で覆います。しかも腰をちょっとくねらせて。


「いや~ん! ピュア~!」

「なんですかその気持ち悪い口調」

「気持ち悪いとか言うな、傷つく。ってかジゼル、お前なぁ、コイツがピュアッピュアのピュアだったことに感謝しろよ」

「や、俺は別にそこまでピュアってわけじゃなくて。ただ理性が働いたというか、声の言いなりにならずに済んだってのが正しいです。そうじゃなかったら、傷つけてたかも」


 私にはよくわからないけど、男性たちは順番に握手していました。

 わかり合えたのならよかったと思います。


「えっと、ナウファル殿下の魔術に抵抗できたって理解で合ってますか? 確かにさっきのブノワさん、すごく苦しそうでしたけど」

「はい。きっと聖女パワーで……」

「お前らなんでもかんでも『聖女パワー』って。流行ってんの?」


 そういえばソニアを治癒したときにそんなことを言ったような気がします。私は治癒魔法の存在を隠したくて咄嗟にそう言っちゃっただけですけど。


 しばらく思考を巡らせていたらしいセレスタン様が、腕組みをしながら「うーん」と唸りました。


「水が綺麗になって、薬の影響が減少していたんだろう」

「そうッスね、そうだと思います。それで俺、そろそろジゼル様の護衛に戻りたいんすけど、こんなことしでかしたら無理……ですかね」

「いや、ブノワならもう戻ってもいいか。人手は足りないし、それにもしもの時さえジゼルを守ることが証明されたしな」


 それにはイドリース殿下も同意見だったようです。首肯しつつ、「これからもっと薬の影響も抜けるだろう」って。セレスタン様たちの負担が減るのなら、私も大賛成です!


「ところで水が綺麗にってのは……つまり『聖女パワー』ってことか?」

「にゅっ!」

「うわっ」


 腕の中から飛び出したシマネコがイドリース殿下の頭にべったりと貼りついてしまいました。先っぽが平べったい尻尾でお顔をビタンビタン叩いています。


「猫! やめろ! 痛っ」

「水を綺麗にしたのはシマネコだとシマネコ様がおっしゃってます」

「お、おう。そうだった、そうだったな! 悪かったよ、ごめんて!」


 シマネコは回収できたし、結婚の儀が終わるまで貯水槽は親衛隊に警備させることになったし、ブノワさんは護衛に復帰したし。

 雨降って地固まるって感じで、よかったんじゃないでしょうか!


 見上げた空はいつの間にかオレンジ色に染まり、どこかから私を呼ぶ声も聞こえてきます。


「お姉ちゃーん!」

「ソニア? こっちだよー」


 私が手を振るとソニアは一目散にこちらへ駆けてきました。


「行方不明って聞いて心配したんだから!」

「えぇ……? 何がどうなったらそんな話になるのかな。その噂はまるっきり嘘だから大丈夫」

「よかった! ね、一緒にお風呂入ろう」

「一緒に?」

「アミルおじさんは忙しくて、今日は神殿に泊まるんだって。だからアタシもそうしようと思って」


 ハラーク公爵と父を重ねているのか、ソニアはハラーク公爵が大好きみたいです。


 私がいるからではなくてハラーク公爵がいるから神殿に泊まるって、なんだかちょっぴり寂しい気持ち。でも、一緒にお風呂に入るなんていつぶりでしょうか。ちょっと楽しそうだわ。


「俺は離宮に戻るわ。親衛隊は何人か置いてくから、こっちの警備はセレスタンに任せる」

「了解した」


 イドリース殿下は部下を集め、いくつか指示を出すとすぐに神殿を立ち去ってしまいました。


 ソニアはそんなイドリース殿下の背中をしばらく見つめていたようですが、パっと振り返って私の手をとります。


「ほら、お風呂。行こ!」

「う、うん。そうだね」


 私を引っ張る手が少し乱暴です。ソニアのご機嫌はあんまり良くないみたい。




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